常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意

大阪桐蔭相手に2打席連続満塁弾 冬に力をつけたラッキーボーイ出現でセンバツVに

東哲平

2015年春のセンバツ大会で初優勝を飾った敦賀気比の選手たち 【写真は共同】

年間甲子園出場率、驚異の110%超!
監督就任15年目で甲子園出場16回。そのうち優勝1回、四強2回、八強1回。恵まれない環境下に置かれながらも、いま高校球界で最も勝ち切れる指揮官が語る、日本一の采配論!敦賀気比高校野球部・東哲平監督の著書「常勝軍団・敦賀気比 勝利を引き寄せる采配 56の極意」から一部を抜粋して掲載します。

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2013年のセンバツベスト4

――甲子園で勝ち上がることの難しさと、采配を振る責任の重さを強く感じた大会

 監督に就任して2年目となる2013年のセンバツで、私たちはベスト4に進出することができた。敦賀気比にとっても大きな成果だったが、私自身にとっても、甲子園で勝ち上がることの難しさと、そこで采配を振る責任の重さを強く感じた大会でもあった。

 この大会で軸となったのは、エースの岸本淳希である。岸本には初戦から先発を任せ、2回戦の京都翔英戦では完投勝利、3回戦の盛岡大付戦では完封勝利を挙げた。力のあるピッチャーであることは間違いなかったが、短期間で試合が続くセンバツでは、どんなにいいピッチャーでも疲労は避けられない。だから準々決勝の聖光学院戦では、岸本ひとりを最後まで投げ切らせるのではなく、
最初から継投を考えていた。

 この試合では、岸本、三染真利、巻下昇大、玉村祐典の4人をマウンドに送った。私の采配の中で、公式戦の1試合に4人ものピッチャーを注ぎ込むことは、そう多くない。点差が大きく開いた試合であれば、選手に経験を積ませるため複数のピッチャーを登板させることはある。でも、甲子園の準々決勝という舞台で、最初からそこまでの継投を組むのは、やはり特別な判断だった。

 三染は、非常にいいものを持ったピッチャーだった。前年にケガをして秋の大会では登板機会を得られず、センバツにもギリギリで間に合った状態である。万全とは言えなかったが、それでも甲子園のマウンドに立たせたいと思わせるだけの力があった。巻下、玉村についても、その気持ちは同じだった。とくに玉村は、のちにプロの世界へと進んでいくことになる(埼玉西武ライオンズ)。あのときの投手陣は、岸本淳希ひとりに頼るだけではなく、それぞれが甲子園で勝負できる可能性を持っていた。

 私は甲子園に出るたびに、「ベンチに入っている選手をできるだけ試合に出してやりたい」と思っている。ただし、勝負を捨てるわけにはいかない。甲子園は思い出作りの場ではない。ただ、ベンチに入った選手たちは、そこに至るまでの苦しい練習を一緒に乗り越えてきた仲間だ。出場機会があるなら、聖地と呼ばれるグラウンドに立たせてやりたい。ピッチャーであれば、甲子園のマウンドを経験させてやりたい。その気持ちは、監督として常に持っている。

 しかし、温情による采配はできない。何かあったときの保険も、必ず残しておかなければならない。聖光学院戦では、岸本を一旦マウンドから下ろしたあと、ベンチには下げずにファーストへ回した。最後にもう一度締めてもらう可能性を残しておくためである。実際、最終回には岸本を再びマウンドに戻した。複数の投手にマウンドを経験させたい気持ちと、試合を勝ち切るための備え。その両方を考えたうえでの継投で、私たちは勝利を手にすることができた。

 近年は球数制限や夏の暑さの問題もあって、以前より継投を考える場面が増えている。ひとりのエースにすべてを背負わせる時代ではなくなってきた。ピッチャーの将来を守るためにも、複数のピッチャーで試合を作る考え方は必要になっている。ただ、継投は人数を増やせばよいというものではない。誰を、どの場面で、どこまで投げさせるのか。次に誰を準備させるのか。エースを下げるなら、マウンドに戻す可能性を残すのか。判断をひとつ間違えれば、試合の流れは大きく変わってしまう。

 2013年のセンバツ準決勝では、浦和学院に1-5で敗れた。この試合は岸本が完投した。結果として決勝には届かなかったが、あの大会で得たものは大きかった。ベンチにいる選手をどう生かし、どこで勝負をかけるのか。選手に経験を積ませながら、同時に試合を勝ち切る道を探る。采配とは、目の前の勝利だけを見るものではない。選手の状態や経験、将来、そしてチームが勝つための道筋を重ね合わせながら、そのときの最善を選ぶことなのだ。

極意 其の三

 継投は人数を増やせばよいというものではない。誰を、どの場面で、どこまで投げさせるのか。次に誰を準備させるのか。エースを下げるなら、マウンドに戻す可能性を残すのか。判断をひとつ間違えれば、試合の流れは大きく変わってしまう。

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