“メッシの奇跡”再び 弱気の虫が疼いたサッカーの母国を撃破した王者、W杯連覇に王手【準決勝・イングランドvs.アルゼンチン】
序盤からピッチの至る所で激しいバトルが
伏兵カーボベルデに苦しめられたノックアウトステージの初戦以降、地獄の入り口に何度も足を踏み入れながら、そのたびに土壇場で息を吹き返してきた王者は、このイングランドとのセミファイナルで、またしても劇的な勝利を手にするのだ。
「神の手ゴール」と「5人抜き」でディエゴ・マラドーナが伝説となった1986年大会、デイビッド・ベッカムが報復行為で退場となった98年大会、そのベッカムが決勝ゴールを奪い、リベンジを果たした2002年大会……。因縁には事欠かない両雄の24年ぶりとなるW杯での対戦は、立ち上がりから意地とプライドがぶつかり合う激闘となった。
キックオフ直後から後先を考えずにプレッシャーをかけるイングランドに対し、アルゼンチンもレアンドロ・パレデスがジュード・ベリンガムを、エンソ・フェルナンデスがエリオット・アンダーソンを激しく削り、得意のラフファイトに引きずり込んでいく。開始3分には早くも両者がエキサイトしてもみ合うシーンが見られるなど、ピッチの至る所でバトルが繰り広げられた。
息をのむような中盤の主導権争いを経て、最初にペースを掴んだのはイングランドだった。今大会絶好調のベリンガムが抜群のキープ力と突破力で相手のファウルを誘い、セットプレーからチャンスを作っていく。
一方のアルゼンチンはこの日、右サイドにかつてベッカムを退場に追い込んだディエゴ・シメオネの息子、ジュリアーノ・シメオネを抜てき。下がり目のポジションを取ったメッシがボールを持てば果敢に裏抜けを狙い、持ち前の豊富な運動量と父親譲りの旺盛なファイティングスピリットで前線をかき回そうとするが、イングランドもアンダーソンがタイトな守備で起点となるメッシに自由を与えない。
それでも、最初の決定機はアルゼンチンに訪れる。後半立ち上がりの47分、GKからのロングキックをジュリアーノが頭で落とし、これを拾ったフリアン・アルバレスが寄せてきたジェド・スペンスに体を預けながら右足でシュート。イングランドGKジョーダン・ピックフォードのセーブに阻まれるが、イングランドのプレッシングに慣れてきたアルゼンチンが、巧みにかわしながらリズムを生み出していった。
運もイングランドに味方しているように思われた
流れを変えたのはハリー・ケイン。55分、それまでも引いた位置からの正確な配球でチャンスを作っていたキャプテンが、前線にロングフィードを送り込む。これをニコラス・タグリアフィコがオーバーヘッドでクリアしきれず、ルーズボールをデグラン・ライスが拾って右に展開。直後、グループステージのパナマ戦以来の先発となったモーガン・ロジャーズが放ったクロスが、逆サイドから走り込んだアンソニー・ゴードンにピタリと届いた。
ゴードンのW杯初ゴールで均衡を破ったイングランドは、そのわずか2分後、E・フェルナンデスのスルーパスに抜け出したジュリア―ノにGKと1対1の場面を作られるが、これをスペンスが渾身のスライディングタックルでカバー。拳を突き上げ、吠えるスペンス。60年ぶりの優勝へ執念を見せるイングランドが勢いづく。
69分、メッシの右からのピンポイントクロスに、途中出場のニコ・ゴンサレスが頭で合わせる。75分、同じく途中から右サイドに入っていたロドリゴ・デ・パウルのクロスを、今度はアレクシス・マカリステルがダイビングヘッド。この2つの決定機も、ピックフォードの右手一本と左のポストによって弾き出す。
ラウンド16で、10人になりながらメキシコの猛攻を耐えしのいだイングランド守備陣は、ここでもセンターバックのマーク・ゲイを中心に高い集中力を保って再三のピンチをはね返し、さらに運も彼らに味方しているように思われた。