「丁寧に打ちやすく」石川真佑が託した1本 “全員で戦う”を体現し、引き寄せたポーランド戦の大逆転劇

田中夕子

「追い込まれていた」大阪ラウンドで見せた“よかった”1点

激闘を制し石川(中央)は声にならない声を上げた 【写真は共同】

 なんと叫んだかは覚えていない。でも間違いなく言えるのは、その1本は会心の1本で、石川真佑にとって「よかった1点」だった。

 7月12日、ネーションズリーグ予選ラウンド最終戦、対ポーランド。0-2から2セットを取り返し、2-2で迎えた最終セット、7-7の場面での石川が決めたブロックポイントだ。

「本当に高い相手で、ブロック本数が出ていなかったので何とか止めたかった。自分もなかなかスパイクで乗り切れていない部分もあったので、ブロックでもディフェンスでも、何か他のプレーで貢献したいという意識はあったので、あの1点は自分がとった点数の中でも“よかった”1点でした」

 19歳で日本代表入りしてから今季で8シーズン目、日本代表の主将としても2シーズン目を迎えた。攻守の要として欠かせぬ存在であり、日本国内のみならず海外でも実力を評価される選手であるにもかかわらず、石川はとにかく自己評価が低い。

 そんな彼女が「よかった」と自ら言葉にした1点。負ければ決勝ラウンド進出が潰えるだけでなく、石川自身も「追い込まれていた」と何度も口にした大阪ラウンドの最後で、ようやく光明が差した。

ストレスよりもポジティブを……

苦しんだ日本。うまくいかないことを言葉にして伝え合うことで結束力を高めた 【写真は共同】

 同じアジアのタイには勝利したものの、ブラジル、トルコに敗れた。7勝4敗という数字以上に、チームに漂う空気は重い。そんな停滞感を払拭すべく、最終日のポーランド戦を前にフェルハト・アクバシュ監督は選手たちにミーティングで訴えかけた。

「ストレスよりもポジティブを常に上にして、全員で戦っていきましょう」

 監督だけでなく全員にスピーチさせ、今何がうまくいかないと感じているのか。解消するために何ができるのかを一人ひとり、自分の言葉で語らせた。試合が重なる中で攻撃面や守備の面、チームとして戦う姿勢など小さなズレがほころびとなり悪循環を招いていたからこそ、言葉にして発する。そうやって口にした以上、全員に責任が生じる。アクバシュ監督の言う「全員で戦う」はまさにその状態を求めていた。

 そして、大阪ラウンドが始まる前からトスとのコンビが合わず、主に攻撃面でストレスを抱えていた石川にもその言葉と意味が響いた。

「それぞれにいろんな思いがあって、私自身もうまくいかないことが多かった。切り替えないといけない、と思う中でもなかなかうまくいかなくて、実際ストレスも感じていました。でもそこで“ポジティブに”と言われて、本当に大事だと思ったし、たとえ自分がうまくいかなくても周りを助けることはできる。特にポーランド戦は和田(由紀子)選手がよかったので、自分が得点を取ることばかりじゃなく、ゆっこを助けることや、相手を崩すことにフォーカスしよう、と考えながらプレーしていました」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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