試合を決めるサービスエースはなぜ生まれたのか? 佐藤淑乃を蘇らせた仲間たちの判断とプレー

大島和人

試合を終えた佐藤淑乃の目には安堵の涙が浮かんでいた 【写真は共同】

 FIVBバレーボール・ネーションズリーグ(VNL)女子の大阪ラウンドが、7月12日に終了している。大阪ラウンドは予選の最終週で、12日の日本vs.ポーランドは7位と8位の「直接対決」だった。決勝ラウンドへの進出は開催国・中国も含めて8チームで、通算7位以上が予選ラウンド突破の条件。日本にとってポーランド戦は「勝てば突破」「負けたら敗退」という瀬戸際の戦いだった。

 ポーランドは直近の世界ランキングが5位で、6位の日本とほぼ五分。ホームの利があるとはいえ、楽な戦いになるはずはなかった。日本は第1セットを20-25、第2セットを14-25で落とし、敗退の瀬戸際に追い込まれた。しかしここから25-19、25−21、15-13と3セットを連取し、フルセットの逆転勝利を飾った。

 決勝ラウンドは7月22日から中国で開催される。準々決勝の相手はブラジル(世界ランキング3位)に決まった。

佐藤淑乃のエースで試合が決着

 試合の幕切れは劇的だった。日本は13-11とリードしつつポーランドに2点を連取され、13-13と追いつかれる。次のラリーでも佐藤淑乃のレセプションが乱れ、日本はさらに追い込まれたかに見えた。しかし佐藤は石川真佑の二段トスを鮮やかに叩き込み、日本はマッチポイントを握る。ただし1点を返されればデュースだ。

 重圧のかかる状況でサーブの順番が回ってきたのも佐藤だった。彼女のサーブはネットをかすめて相手コートの方向に沈み、試合を決めるエースとなった。

 佐藤は膝からコートに崩れ落ち、彼女を包むように選手たちの大きな輪ができた。第4セット、第5セットと「熱」が急上昇していたAsueアリーナ大阪の7千人を超す大観衆も、総立ちで歓喜を共にした。

 もっとも試合の直後も、報道陣に向き合っている瞬間も、佐藤の表情は少しこわばって見えた。佐藤は試合が決まった瞬間の気持ちをこう言葉にする。

「始まったときから本当にずっとしんどいゲームでした。個人としてもなかなかスパイクが決まらなかったし、常にプレッシャーがかかった試合でした。それが解けたというか、安心したというのが一番大きいかもしれないです」

 相手のブロックや戦術との兼ね合いがあるとはいえ、この試合で佐藤が記録したスパイク決定率は27%と低調だった。第3セット以降はチームとともに決定率は上がってきていたが、試合後の佐藤は反省の言葉が多かった。

「自分の中であまりいいイメージはありません。大事なところでミスが出てしまったりしました。ただその中でもゆっこ(和田由紀子)も(石川)真佑さんもずっと決め続けてくれていたので、それが本当に勝てた要因だなと思っています。自分自身は最後まであまりよくなかったです」

 第5セットの土壇場で、ビッグプレーを連発した佐藤の勝負強さは称えていい。一方で佐藤がチームメイトに「救われた」試合だったことも間違いない。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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