ライバルが2連続イーグル、5打差に開いたビハインド…それでも岩井明愛が首位に並べた理由とは エビアン選手権レビュー

塩畑大輔

【Photo by Stuart Franklin /Getty Images】

 今季海外女子メジャー第4戦『アムンディ エビアン選手権』が7月12日、フランスのエビアンリゾートGCで最終ラウンドが行われ、韓国のユ・ヘランがプレーオフの末に優勝した。

 日本勢は岩井明愛が3位。最終18番パー5まで通算18アンダーで首位に並んでいたが、バーディーパットが決まらず、ユ・ヘラン、ブルック・ヘンダーソンとのプレーオフに進めなかった。山下美夢有、西郷真央は4位に続いた。

 優勝こそならなかったが、上位6選手中3選手を日本勢が占めた。U-NEXTの『日本勢徹底マークLIVE』で4日間解説を務めた米山みどりプロが大会を総括する。

序盤のダボ、相手が2連続イーグル…それでも揺るがぬ理由

 優勝争いも大詰めを迎える最終日最終組のラウンド。3打差の首位を追う中で、序盤にいきなりダブルボギーが来てしまう。

 普通なら、心が折れてしまうところだと思います。ここまで苦しい状況をはねのけて優勝争いに絡んでくる選手を、私はあまりみたことがない。岩井明愛選手の戦いぶりは、本当に素晴らしかったと思います。

3番パー4、岩井明愛はアイアンでの第1打を右に大きく曲げ、アンプレアブル処置の罰打が加わってのダブルボギーに 【Photo by Stuart Franklin /Getty Images】

 3番パー4のダボで、ユ・ヘランと5打差がついてしまっただけではありません。同組のもうひとりの選手、ブルック・ヘンダーソンが7番パー5でイーグル、8番パー3でホールインワンと、2ホールで4つもスコアを伸ばしてきた。

 メジャー大会の最終日のスコアボードに、2つも二重丸が並ぶ。めったにないことが、よりによって自分の目の前で起きたわけです。今日は私の日じゃない、とネガティブになってしまってもおかしくない。でも、岩井明愛選手は違った。直後の9番でひとりだけバーディーを挙げて、自分も伸ばしていくわけです。

ブルック・ヘンダーソンは7番パー5のイーグルに続き、8番パー3でホールインワンを達成。2ホールで4つもスコアを伸ばし、首位独走のユ・ヘランに迫った 【Photo by Romain Doucelin/NurPhoto via Getty Images】

 5メートル以上あったと思いますが、強めのタッチでど真ん中から入れた。特別に強気で打ったパットというわけでも、追いつくためにリスクを取ったというわけでもない。打つ前から「私はこれを決める」という意志、自然な自信がみてとれて、その通りに決めた。

 そうした精神的な強さの片鱗は、第3ラウンドが終わった直後のコメントにもあらわれていました。同組のユ・ヘランが、この日だけで11個もスコアを伸ばす神がかり的なプレーをした。それに対して岩井明愛選手は「おかげで自分も引っ張ってもらえた」と語っていました。

最終ラウンド、グリーン上でラインを読む岩井明愛 【Photo by Stuart Franklin /Getty Images】

優勝争いの中でも揺るがない「理想」

 普通のアスリートなら「自分も何とかついていかなければ」と考えたり、もしかしたら「もうこれ以上伸ばさないでほしい」と願ってしまったりするかもしれない。でも彼女は、相手のスコアの動きに一喜一憂するよりも、心から相手のプレーの素晴らしさをたたえ、相乗効果で自分もいいプレーができると考えている。

 言葉にしてしまうと、理想論のようにもみえてしまいます。加えて、優勝争いが大詰めになれば、どうしても相手のプレーが目に入ってくるものです。それでも岩井明愛選手からは、相手の好プレーを歓迎するスタンスが一貫してみてとれました。

最終18番では、第3打がほかの選手が打ってできた「ディボッド跡」におちる不運もあったが、嘆く様子もなくうまく打ってバーディーチャンスにつけた 【Photo by Stuart Franklin /Getty Images】

 海外メジャーの優勝争いの中でも、あの境地に行けているということが、彼女の強さ。だからこそ、最終ラウンドも一見すると流れに見離されてしまったような立場から、5打差を追いついて首位に立つところまで巻き返せたのではないかと。スコアだけをみれば「あきらめない粘り強さ」というような表現になるかもしれませんが、こう考えていくとおそらく違いますよね。

 優勝に手が届かず、涙ながらになったインタビューの中でも、彼女は「この時間帯でも見てくれる視聴者の方に楽しんでもらえていたら」と語っていました。苦しい状況の中でも、そんなことを考えていたのか、と胸を打たれました。

ホールアウト後のインタビューで涙をみせる岩井明愛 【U-NEXT】

 あのパリ五輪金メダリストのリディア・コが、インタビューが終わるのをわざわざ待って直接ねぎらいの言葉をかけていましたが、それも納得できました。

 岩井明愛選手はゴルフ界にとって宝物のようなアスリートだと、今回あらためて感じました。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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