飛ばなかったゴールキックと動けなかったハーランド ノルウェーの快進撃を止めた不運と誤算【準々決勝・ノルウェーvs.イングランド】
「バイキング・ロー」に背中を押されるように
そんな予感は大いにあった。少なくとも、前半のアディショナルタイムを迎えるまでは――。
世界最高峰プレミアリーグのスタープレーヤーが集結したノルウェー対イングランドの準々決勝は、互いに相手の出方をうかがう、にらみ合いのような立ち上がりとなった。ボールを握ったのはイングランドだが、高地アステカでのメキシコとの激闘から中5日で、スタートから無理はしない。一方のノルウェーも守備時は4-5-1で構えて縦のパスコースを消しながら、静かにカウンターのチャンスを狙った。
試合が動き始めるのは、前半のハイドレーションブレイク明けだ。すっかりおなじみとなった「バイキング・ロー」の掛け声に背中を押されるように、ノルウェーが徐々に前からの圧力を強めていく。
ノルウェーに先制点が生まれるのは、機動力のある“黒子”パトリック・ベルグがフォアプレスを仕掛け、イングランドのセンターバック、ジョン・ストーンズを慌てさせた直後の36分だった。
ウーデゴールからのパスを受けた右SBのユリアン・リエルションがクロスを送り込むと、これにハーランドが得意のヘディングで合わせる。このシュートはGKの正面をつくが、ここから素早くカウンターに出ようとジョーダン・ピックフォードがケインにつないだボールを、プレスバックしたベルグが再び奪い返す。
そこからウーデゴールが左に展開。決めたのは、ブラジル戦でハーランドの2つのゴールをアシストし、この日は3試合ぶりに左ウイングのスタメンに抜擢されたアンドレアス・シェルデルップだった。エリア内に進入して角度のない位置から左足で放ったシュートは、一度右のポストを叩いてからゴールに吸い込まれた。
ハーフウェイライン手前で急失速したゴールキック
仮に1-0のリードを保ったままハーフタイムを迎えていれば、おそらくノルウェーの勝機は広がっていただろう。
アディショナルタイムの45+2分の失点には、おそらく小さくない不運も重なっている。
GKエルヤン・ニーランが蹴ったゴールキックが、ハーフウェイラインの手前で急失速。天井のテレビカメラのケーブルに当たったとの説は、試合後にFIFA(国際サッカー連盟)が即座に否定したが、それが事実だと考えてもおかしくないほど不自然な軌道に映った。
落下したボールをイングランドのエリオット・アンダーソンが余裕をもって拾い、左のアンソニー・ゴードンへ。グラウンダーのラストパスを中央で受けたのは、ジュード・ベリンガム。今大会を通じて、フィニッシャーとしての感覚が一段と研ぎ澄まされた印象を与えるナンバー10は、ボールを突くようにして運んで相手ディフェンダーを剥がすと、左足で同点弾をねじ込んだ。
追いついたスリーライオンズはさらに45+4分、ライスが縦に差し込んだパスをベリンガムが小さく弾き、これに抜け出したケインがGKニーランの頭上を破る華麗なチップキックでネットを揺らす。これはオフサイドの判定でノーゴールとなったが、流れは確実にイングランドへと傾いていた。