このままだと今とほぼ同じメンバーで、4年後のW杯を戦うことになりかねない 識者3人の北中米W杯・検証座談会【後編】

構成:YOJI-GEN

タレントプールの拡充は必須。今大会で悔しさを味わった塩貝(左)、落選組の佐野航大(中)、高井(右)ら若手の奮起に期待だ 【Photo by Getty Images】

 北中米ワールドカップ(W杯)でのラウンド32敗退という結果を受けて、これから日本サッカー界はどんな取り組みをしていくべきなのか。現地で日本代表に密着した3人のジャーナリスト、佐藤景氏、竹内達也氏、舩木渉氏による森保ジャパンの検証座談会。ラストの後編では近未来に目を向ける。今後台頭してほしい若手タレントの名前を挙げながら、人材育成のポイントを提示するとともに、代表監督人事にも踏み込んだ。

各ポジションに3人ずつレギュラークラスを

――ここからは未来に向けての話をしましょう。今後、日本代表がW杯でノックアウトステージの1回戦を突破、さらにはベスト8以上に勝ち上がるためには何が必要だと思いますか?

竹内 世界で通用するフィジカルスペックを持った若手の育成、そして代表候補となり得るタレントプールの拡大でしょうね。

 たとえば中村敬斗みたいにドリブルもシュートもうまくて、さらに時速15キロ以上のランがあれだけの割合である選手って、世界を見渡してもそう多くない。そうした選手を育ててきたのは本当にすごいなと思う半面、彼みたいなタイプは見逃されがちでもあるんです。やっぱり「守備ができない」など短所を指摘され、排除されてきた才能もたくさんいるんじゃないかと思います。

 中村自身はメンタルが強かったから、オーストリアの2部リーグに行ってもそこから這い上がってきましたけど、日本には仮に年代別代表に選ばれずとも、いい選手がたくさんいる。それをここでもう一度、育成年代から考えていきたいです。今大会ではサイドの裏に蹴り込まれるロングボールへの対応があらためて日本の永遠の課題として浮かび上がりましたが、センターバックと純粋なサイドバックの育成にも時間をかけて向き合うべきだと思いますね。

――佐藤さんはどうですか?

佐藤 結局、カタールW杯以降、「ボールを保持する」ところにフォーカスして磨いてきたわけだけれど、ブラジル相手にはできなかったじゃないですか。強い相手と戦うには、「ボールを持つ時間をもっと長くしなきゃいけない」とみんな言っていたと。でも、それが実際どこまで進んだかというと、進んだようでいて結果を見る限りはほとんど進んでないようにも見えるんですよね。だとしたら、山本昌邦技術委員長や森保さんが言う「W杯優勝基準」になるためには、今のチーム作りの方向性やスピード感のままではダメだと思うんですよ。3年半かけても間に合わなかったと1つの結論が出たわけだから。

 そこをいったん認識した上で、じゃあどうやって4年後に向けてチームを作っていくかを考えていかなきゃいけない。「何十年後かのために一歩一歩進んでいます」という話ではないし、「優勝」という言葉を口にした以上は、時間が足りなかったじゃもう済まされない。今後、優勝から目標を下げることは難しいでしょうから。森保さんは大会後に、「ちょっとずつ進歩していると感じたし、世界との差は縮まった」とコメントしていて、確かにその通りではあると思いますけど、本当にW杯で世界の強豪国に勝つためには、どこを、どうやって伸ばすべきか、今回の成果と課題をしっかり踏まえた上で日本サッカー界の英知を結集し、本気で考えてほしいですね。

――舩木さんは?

舩木 サポートメンバーの吉田麻也が総括として語っていたのは、たとえば守備の局面に切り替わったら、全員がスプリントして戻るとか、そうした世界と戦う上での基盤はできていたし、そのレベルはすごく高かったということ。そして、これからはその土台の上に、上物(うわもの)を建てていかなきゃいけない段階だと。

 彼が指摘していた1つは、シャドーの選手層。結局、三笘薫、南野拓実、そして最終的には久保建英も使えなくなって、かなり選手層が薄くなってしまった。誰が出てもチームとして機能するサッカーは、大枠として確かにできるようになったかもしれませんが、細部で違いを生み出せる選手が1人、2人と欠けたときに、総合力がかなり落ちましたよね。本当に各ポジションに3人ずつくらいレギュラークラスをそろえられるようにならなきゃいけないし、選手層の厚みという点で、やっぱりフランスやアルゼンチン、ブラジルとは大きな差があるんだなと、痛感させられましたね。

世代交代を急ぎたいCBで期待するのは?

谷口や板倉が4年後は年齢的にも厳しくなるCB。昨年のU-20W杯でベスト16入りを支えた喜多(左)と市原(右)も今後が楽しみなタレントだ 【Photo by Buda Mendes - FIFA via Getty Images】

――では、世界の強豪国と同様のタレントプールを作るためには、何が必要でしょう?

舩木 まず前提として忘れてはいけないのが、現代表がチームとしてすごく特殊であるということ。(森保監督が兼任で指揮を執った)21年の東京五輪も含めて、もう10年近く森保さんと一緒にやってきたメンバーがチームの中心にいて、だからこそできていた側面があったということを認識し、そこに危機感を覚えないといけないと思います。

 それこそ現代表に東京五輪世代はたくさんいますけど、31~33歳という年齢的にもボリューム層になっていてもおかしくないはずのリオ五輪世代はほとんど生き残っていないんですよね。今大会に出場したリオ五輪世代は、伊東純也と鎌田大地の2人だけですが、彼らはそもそもリオ五輪のメンバーに選ばれていない。リオ五輪に出場した南野と遠藤航は怪我で今大会を戦えなかった。この世代はU-20W杯出場こそ逃しましたが、2011年のU-17W杯ではベスト8と結果も残していて、現在のJリーグで主力を張っている選手も少なくないんです。それでも東京五輪世代と比べると、代表レベルで踏んだ場数はかなり少ないと思います。

 実は日本の敗退後に山根視来(LAギャラクシー)と話す機会があって、彼は「前回のW杯の時、自分は国際経験が少なすぎたと痛感した」という主旨の話をしていたんです。山根は確かに世代別代表の経験がなくW杯に出場した稀有な例ですが、今後はU-17やU-19の段階から、より長い目で見て将来性を評価しながら国際舞台で輝けるタレントをすくい上げ、地道に経験を積ませるような育成をしていく必要があるのではないかと思います。とても難しい話ではありますが。

竹内 吉武博文監督が率いた当時のU-17日本代表が、フィジカルよりもとにかく技術重視だったことも、リオ五輪世代のその後に影響を与えたかもしれません。さらに現在のU-17代表もボール保持を大前提にチーム作りをしていますが、僕はこの状況にとても危機感を覚えていて。前線は軒並み170センチ台前半の選手が並んでいますが、あれだけの技術がある久保建英ですらフィジカル的に苦戦している時代に、世界で戦える小柄なアタッカーを育てていくのは相当な茨の道なんじゃないかと思うんです。

 ボールを握ろうという志は正しいんでしょうけど、やはりもう一度、東京五輪世代の原点に立ち返るべきなんです。板倉滉を見つけ、冨安健洋を育て、小川航基に託したように、本当に良い素材を持った選手を見捨てず、未来につながる世代別代表を作ってほしいというのが、今の願いです。久保も危機感を持って話していたように、このままだと本当に、今とほぼ同じメンバーで4年後のW杯を戦うことになりかねません。

――今とほぼ同じメンバーで次回大会も戦うというのは、ある意味、退化ですからね。今のメンバーを押し退ける若い世代の台頭が望まれますが、4年後に向けて、これから出てきてほしい選手をそれぞれ挙げてください。

佐藤 センターバックは特に世代交代を急ぎたいポジションですよね。谷口彰悟(34歳)はもちろん、板倉(29歳)も4年後は年齢的に厳しいかもしれない。負傷がちの冨安(27歳)も4年後の保証はない。となると、高井幸大(トッテナム/21歳)、市原吏音(AZ/21歳)、喜多壱也(R・ソシエダB/20歳)あたりに期待したいところです。喜多は昨シーズン、ソシエダBでシーズンを通して素晴らしいプレーをしていたと、W杯中にたびたび一緒になったスペイン在住のカメラマンが絶賛していました。貴重な左利きですし、189センチと身長もある。それこそ早い段階で招集して代表の基準を知ってもらいたい1人ですね。

舩木 センターバックでは、チェイス・アンリ(RBザルツブルク/22歳)にも出てきてもらいたいですよね。高卒で即海外に出て行ったけど怪我に悩まされていて、ここ2年くらいはまともにプレーできているのかも分からないくらい、話を聞かなくなってしまった。ただ、ポテンシャルは間違いないですからね。アンリに限らず、日本国内でも、ああいったフィジカルのしっかりした選手を、ちゃんと育てなきゃいけないんだろうなとは思います。

 最近、Jリーグのある監督と話していて感じたのは、日本の監督は若手にとても厳しいということ。本当に日本代表を強くしようという思いが日本サッカー界全体にあるのであれば、もっと若い選手を使う勇気を持つべきですよ。「俺の基準に満たないやつは一切使わない」なんてことがまかり通っているようでは、育つものも育たない。10代とか20歳前後の選手は本当に試合で起用しないと育ちませんから、「コイツはモノになるかもしれない」と少しでも感じるのであれば、チャンスを与えるべきだと思うんです。先日閉幕した百年構想リーグは昇降格がなかったので、若手がもっと抜擢されるのかと思いきや、特にイーストはどこも意外と勝ちにこだわって、あんまり使われなかったんです。

竹内 確かに、ウエストでは清水エスパルスの嶋本悠大(MF/19歳)とか、ヴィッセル神戸の濱﨑健斗(MF/19歳)とか、もう少し上ですがセレッソ大阪の石渡ネルソン(MF/21歳)とか若い選手がけっこう使われていたんだけど、イーストはあまりなかったよね。ジェフユナイテッド市原・千葉の姫野誠(MF/17歳)くらいでしょうか。

舩木 横浜F・マリノスで言ったら、浅田大翔(FW/18歳)がちょっと出たぐらいでしたから。新シーズンからU-21リーグも始まりますが、10代後半~20代前半の選手をしっかり育てていくという意識をもっとJクラブが持ってほしいです。

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