コンバインで評価上昇!佐々木麟太郎のリアルな現在地 MLBドラフトで狙う球団と「初日指名」の可能性は?

丹羽政善

2026年のドラフトコンバインで、ハロルド・レイノルズに挨拶する佐々木麟太郎 【Photo by Jill Weisleder/MLB Photos via Getty Images】

飛距離458フィート弾で評価は上昇

 MLB入りを目指す高校生は、毎年8月にカリフォルニア州ロングビーチで開催される「エリアコードゲーム」と呼ばれるイベントに招待され、そこをステップとして10月にフロリダ州ジュピターで行われる「ショーケース」というイベントに参加することを目指す。集結するMLBのスカウトの前でプレーすることが、ドラフトでの指名に直結するからだ。

 ブリュワーズのクリスチャン・イエリチが振り返る。

「州大会で勝つとかよりも、とにかくショーケースに出られるかどうかをみんなが目標としていた」

 ただ、イエリチは、ショーケースには参加していない。

「エリアコードゲームに出た後、マーリンズから、『指名するから、出ないでくれ』と言われたんだ」

 ショーケースに出れば、イエリチの株が上がって、獲得競争が激しくなるかもしれない。つまり、マーリンズは“隠した”のである。翌年6月、マーリンズは無事1巡目、全体23位でイエリチを指名することに成功した。両親は大学へ進学してほしいと考えていたようだが、マーリンズはこんな条件も出して説得した。

「引退した後、大学へ行って学ぶつもりなら、その学費をすべて負担する」

 先月行われたMLBのドラフトコンバインは、大学生も参加する「ショーケース」という位置付けだが、招待された全選手が参加するわけではない。イエリチのように裏で話がまとまっている場合、チームとしては隠したい。ケガも怖い。

 一方で参加する選手らにとっては、スカウトの前で技量を披露する機会を与えられ、面接を通して、チームの評価などを直接聞くこともできる貴重な場だ。この段階に来ると、もちろん、チームは各選手の評価を終え、最終確認程度だが、このドラフトコンバインで強烈な印象を残し、指名順位を上げる選手も少なくない。

 今年の場合、さまざまな報道を総合すると、各チームが評価の見直しを迫られたとされるのは、打撃練習で最長飛距離(465.6フィート)をマークし、打球初速100マイル以上の打球を21本も放ったジャック・ベック(高校生)、元メジャーリーガー(ホセ・ベラス)の息子で、461.6フィート弾を放ったゲンソン・べラス(高校生)、慣れない木製バットで458フィートを飛ばし、最高打球初速115.4マイル、90パーセンタイル打球初速112.2マイルをマークした佐々木麟太郎(スタンフォード大)ではないか。

 90パーセンタイルとは、打球初速を速い順に並べたとき、上位10%に入るための境界となる打球初速で、例えば、100球打ったとしたら、10番目に打球初速が速い打球を指す。これは安定したパワーを示す指標として、スカウトらが重視。112.2マイルという数値は、参加した選手(335人が参加し、野手は170人)の中では6位だった。

 結果として、MLB.COM、米ヤフー・スポーツ、アマチュア選手の評価に定評のあるベースボール・アメリカなどが、「ドラフトコンバインで評価を上げた選手」として、佐々木の名を挙げたのである。

 では、具体的にどのくらいの評価なのか?

 MLBドラフトの場合、入団後にいくらでもポジションが変わるので、あまりポジション別評価には意味がないが、佐々木はほぼ一塁専任であり、対象が少ない方がわかりやすいので、米メディアの評価をもとに整理してみると、こんな感じか。

1.ギャビン・グラホバック(テキサスA&M)
大学生ナンバーワン一塁手。SEC(最強カンファレンス)での実績あり。パワーと実戦力を兼ね備え、三塁も守れる守備面の評価も高い。1〜2巡目候補。

2.ムリヴァイ・レブ(UCLA)
コンタクト能力と完成度が高く、打撃技術は大学生の一塁手ではトップクラス。2〜3巡目候補。

3.マイルズ・ベイリー(フロリダ州立大)
左の長距離砲。屈指のパワーを持つが、三振の多さと故障歴が課題。3〜4巡目(4月のケガがなければ2巡目?)。

4.佐々木麟太郎(スタンフォード大)
パワーはトップクラス。MLBドラフトコンバインで評価上昇。一塁専任がどう順位に影響するか。

5.ライアン・ヨーマーク(イリノイ大)
コンタクト力と出塁能力が武器。安定感はあるが、長打力では上位4人に及ばない。8〜12巡目。

 佐々木はどんな順位予想かだが、ランキングの前後から考えても、5巡目から7巡目というのが、現実的なところか。打撃だけならもっと上位だが、一塁専任という点が足を引っ張っている。もっとも順位は、フィットする球団との兼ね合いで、前後2〜3巡は変動すると言われる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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