取材者の心をとらえた堂安の覚悟、彩艶のスーパーセーブ、冨安の影響力……識者3人の北中米W杯・検証座談会【中編】

構成:YOJI-GEN

「優勝」という目標を公言してチームを引っ張った堂安。ゴールはなかったものの、献身的な守備にリーダーとしての責任感が滲み出ていた 【 Photo by Alex Slitz/Getty Images】

 北中米ワールドカップ(W杯)を現地で取材し、日本代表に密着した3人のジャーナリスト、佐藤景氏、竹内達也氏、舩木渉氏による森保ジャパンの検証座談会。中編では、プレーヤーにスポットを当てる。日々取材をするなかで、特に印象に残ったパフォーマンス、心をとらえた言葉とは――。画面を通してでは分からない、選手たちの知られざる一面が見えてくる。

エゴを捨てチームのために身を捧げた堂安

――ここからは選手にスポットを当てたいと思います。皆さんが現地で日本代表を取材されていて、特に評価したい選手や、この選手のこんなコメントにグッときたといったことがあれば聞かせてください。

佐藤 ブラジルに敗れた後に堂安律が「今の日本代表でブラジル代表に入れる選手はいるのか?」という話を、他の選手としたらしいんです。それを聞いて、堂安という選手はしっかりと現実を見ているんだなと思いましたね。ゲームキャプテンを務めるような主力中の主力が、「負けるべくして負けた」とか、そういうことを言えるのは、すごくポジティブなことですよ。

 日本代表がW杯でいい試合をして負けると、どうしても「感動をありがとう」的な空気になるじゃないですか。だけど選手自身がリアルにブラジルとの力の差を感じていて、それを発信してくれたのは、ここからまた足元を見て戦っていこうという前向きな想いも感じられて、率直に良かったと思いましたね。

舩木 今大会の堂安は攻撃面よりも守備のタスクでチームに貢献していた印象が強かったのではないかなと。チュニジア戦後に彼は「みんなが理想としている10番像ではないかもしれないですけど、僕としては勝たせる選手が10番だと思う。もちろんゴールが理想ですけど、そうではなかったとしても守備で貢献できるようにやっていきたい」と話していました。チームのために身を捧げる覚悟の強さは半端ではなかった。

 ゲームキャプテンも務め、リーダーの1人として常にチーム第一で行動していたのも、日々の練習から見えていました。「この大会はエゴを出す場ではない。エゴを出したい奴は大会が終わってからにしてくれ」という発言にもチームに対する責任感の強さが表れていましたし、「優勝」という目標を公言して引っ張ってきたのも堂安でした。

 カタールW杯以前から先輩たちの懐にガッツリ入り込んでいたのもあり、吉田麻也や南野拓実、長友佑都ら年長者たちと若手の間をつなぎ、触媒として彼らの影響力を拡大させる重要な役割も担っていました。堂安に関してはサッカー選手としての進化はもちろん、それ以上に人間的な成長ぶりが頼もしかったですね。

竹内 彼のパーソナリティは誰もが知るところですよね。点を取りたいことも、そうしなければならない責任感を持っていることもチームの誰もが分かっている。ただ、そんな彼があれだけ守備で戦っているんだから……というのは紛れもなく今大会の日本の戦い方を象徴するものでした。その意味で、今の日本の立ち位置というのを誰よりも引き受け、背負った選手なのではないかと思っています。結果はもちろん求めていたものではないと思いますが、4年前に言った「今まではエースになりたいと言っていたけど、これからはリーダーになりたい」という姿勢をまさに体現していたなと。

彩艶のコメントが面白くない理由とは?

ビニシウスの一撃を弾き出したこのスーパーセーブをはじめ、彩艶は全4試合でハイパフォーマンスを披露。チームに与えた安心感は絶大だった 【Photo by Grzegorz Wajda/Eurasia Sport Images/Getty Images】

――そうした背景があるからこそ、スウェーデン戦で前田大然のゴールを演出したスルーパスは、カタール大会での2ゴールとはまた違った感動というか嬉しさが、見ている側にもありましたね。

竹内 あと、これは3人共通の意見だと思いますが、初めてのW杯でこんなにも安定感があって、スーパーセーブを連発するゴールキーパー(GK)が日本に生まれたことに、ただただ驚いています。鈴木彩艶のことです。本当にヒヤリとする瞬間すら一度もありませんでした。ファーにクロスが上がっときに彩艶のユニホームが見えただけで、「ああ、良かった」と思うようになりましたからね。24年1月のアジアカップで味わった悔しさも糧に、本当に高い基準でずっと準備をしてきた成果が、この大舞台で現れたと思っています。

 その彩艶だけでなく、佐野海舟や中村敬斗、森保監督がこの第2次政権下で抜擢し、地道に使い続けてきた選手たちが、今回のW杯でことごとく飛躍を遂げましたよね。ここまできれいに全員が戦力になったケースは、他の国でもなかなかないんじゃないかと思います。逆に、これも森保さんあるあるなんですが、後藤啓介や塩貝健人ら最終段階で組み込んだ選手は、チーム内での序列を上げられず、戦力になりきれませんでしたね。

舩木 彩艶は囲み取材のコメントが面白くないんですよね。これは決して悪い意味ではなくて、彼の中での基準がすさまじく高い上に、言動にふさわしいプレーの質も伴っていてどこにも文句のつけようがなく、自分のこともチームのことも冷静に客観視できているがゆえに、こちらとしては彼の発する言葉に頷くしかないという……。誰からも信頼されるだけの安心感と納得感があって、まさしく守護神という肩書きにふさわしい選手になりました。僕は「苦しいときは彩艶を信じよ」と唱え続けていきたいと思っているくらいです。

佐藤 彩艶自身が今大会の取材の中で何度も言っていましたけど、24年のアジアカップで非常に苦い経験をして、そこからチームを助けたいという想いで努力してきたと。その意味では「少なからず、自分の成長を感じる大会だった」と振り返ってしました。

 本当に大きな成長を感じさせてくれて、先ほどの堂安の話で言えば、彩艶はブラジル代表のGKの1人に選ばれておかしくない実力者だと思います。前日会見でアンチェロッティ監督がその名前を挙げ、試合前と試合後にワールドクラスのGKであるアリソンに声をかけられた事実もそうですが、彩艶はこの大会を機にさらに大きく飛躍すると思います。

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