勝てなくても絶対に諦めない アントネッリに見えたF1王者の資質
「1ポイントでも欲しいんだ!」
先週末のF1イギリスGP決勝レース。首位はフェラーリのシャルル・ルクレール。しかしメルセデスのキミ・アントネッリが背後に迫る。今にも勝負を仕掛けようとしていた、その矢先だった。左前輪付近に深刻なダメージを負ってしまう。その後は高速コーナーでは曲がらず、フロントタイヤはグリップがなく、「宙に浮いているようだ」と訴えるほどの状態に。何度もコースから飛び出し、後続車に次々に抜かれていった。
アントネッリ:何位まで落ちた?
ピーター・ボニントン(担当エンジニア):10位だ。
アントネッリ:根本的な問題が起きてる。
ボニントン:じゃあピットに戻ってこい。
アントネッリ:いや、このまま走り続けて、ポイントが取りたい。1ポイントでも取りたい。
F1では10位までが入賞圏内。このまま走り切れば、1ポイント獲得できる。毎レース平均20ポイント以上稼いできたアントネッリにしてみれば、とるに足らないポイントだ。それでもアントネッリは、1ポイントにこだわった。しかしほとんどコントロール不能のマシンで走り続けた結果、何度もコース外に飛び出したことで5秒ペナルティを科され、15位完走に終わった。
デビュー年とはまるで別人に
しかし今回のレースで、ひとつ見えたことがある。それは、「たとえ1ポイントでも、取れるときに取る」というアントネッリの強い気持ちだ。F1デビューした去年は、そこまで貪欲ではなかった。むしろ、「F1ドライバーにふさわしい速さ」を周囲に認めさせることに一生懸命だったように見える。
もちろんそれは、無理もない。18歳でトップチームのメルセデスに抜擢されF1デビュー。チームメイトのラッセルは自分より10歳近く年長で、次代のチャンピオン候補と評価される逸材だ。そのラッセルと遜色のない速さで走れることを証明する。新人アントネッリにとって、それは最重要事項だった。
しかし初年度のアントネッリは、ラッセルにまったく敵わなかった。全24戦中、予選でアントネッリの方が速かったのは3戦のみ。レースでの獲得ポイントも、319:150と2倍以上の差をつけられた。まさに完敗だった。しかし今季は、以前のコラム(「アントネッリ首位独走! 「本命」ラッセルはなぜ勝てないのか」)でも述べたような理由から、アントネッリは急成長を果たし、選手権トップに躍り出た。
こうなると、レースへの向き合い方も必然的に変わって行く。