新フリーは「自分史上一番きついプログラム」 ルール改正の新シーズン、友野一希が目指す新たな表現【単独インタビュー後編】

沢田聡子

新フリー『It's A Beautiful Day』を披露した友野一希。新ルールへの適応は試行錯誤中だ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 オフに多数のアイスショーに出演し、さまざまな魅力を見せた友野一希。「ドリーム・オン・アイス」(6月26~28日、KOSE新横浜スケートセンター)ではフリーの新プログラムを披露し、視線は新シーズンを見据えている。競技とアイスショーに全力で臨んできたからこそ感じるフィギュアスケートの可能性と、普及活動についても話を聞いた。(取材日:2026年6月29日)

新ルールの鍵はコンビネーションジャンプ

――メディアに公開された「ドリーム・オン・アイス」の初演(6月26日)では、演技終了後に息が上がっている様子でしたが、テレビ放送で拝見した翌日の公演では落ち着いていましたね。

 最後の2公演はちょっとずつジャンプもよくなってきました。正直、いつもこの時期はあまり4回転ジャンプの感覚はよくないんですけど、今年は「アイスショーでここまで4回転が入ったのは初めてかな」というぐらい調子がいいです。構成もちょっと変えて4回転サルコウを最初に入れたのですが、けっこう感覚がいい。オリンピックシーズンが終わったからこそ、今まで取り組んでなかったことに思い切って挑戦して、いろいろ変えてみた構成がやりやすいと感じています。

 前半の曲調ではちょっと間延びしてしまいそうな不安も正直あって、その分中盤のスピンやつなぎをしっかり練習していかないといけない。最後に曲調が激しくなってから動きをすごく詰め込んだプログラムになるので、どちらかというとジャンプが終わってからがしんどい。ここに来て自分史上一番きついプログラムだなとは思っているんですけど、多分今季からの新ルールの特性上、そうなるのかなと。

 今季のフリーはジャンプが(7つから6つに)減ったのですが、そうなると前半が難しいんですよ。ジャンプが1つ減ったから、(ジャンプの基礎点が上がる)後半までの間に動きを入れないといけない。体力的にはジャンプを跳ぶより滑る方が意外としんどかったりするんですよね。前半でスピンを2つ回ったり、コレオシークエンスを入れたりする選手もいると思うんですけど、それも案外きつかったりするので、みんなどういうふうに組み立てていくんだろうなと。

 今季は、前半のつなぎの部分をどれだけ詰めていけるかということが、最後まで体力をもたせるキーポイントになってきそうだと思っています。僕自身、最後は丁寧にダイナミックに自分の良さを活かしていけたらいいなと思うので、特に前半から中盤の部分がキーポイントになってくると思っていました。

――公演初日では、トリプルアクセル-オイラー-3回転サルコウ-ダブルアクセルのコンビネーションジャンプ(今季からオイラーはジャンプとしてカウントされなくなったため、3連続ジャンプとみなされる)に挑んでいましたね。

「練習あるのみ」ではあるんですけど、無理矢理3連続ジャンプを入れた方がいいのか、普通にサルコウで綺麗に終わって加点を得た方がいいのか、ちょっとまだ正直つかみきれていません。3連続ジャンプが入ったらもちろんいいんですけど、今季はとにかくコンビネーションジャンプを含め全部クリーンな演技をやっていくことを一番の目標にしていきたいので。

 選手によってやり方がいろいろありますが、コンビネーションジャンプは個性が出て面白いんじゃないかなと思いますね。でもかなり体力が削られるので、今季は3連続ジャンプをどうするかが大事になってくると思います。4(回転)-3-3や4-4-3などロマンのあるジャンプを跳んでくる選手はいると思うんですけど、多分その1つで体力がなくなっちゃうこともあり得るので、みんなそこの戦い方を考えているんじゃないかなって。日本のスケーターと話す中でも、やはりコンビネーションジャンプとの向き合い方はかなり大事になってくると感じています。

――単純に、ジャンプが減れば楽になるというものでもないんですね。

 その逆で、密度が濃くなって、すごくしんどくなりました。ジャンプと表現・滑りとのバランスが難しくなったんです。しかもジャンプが6つに減ったから、ジャンプ一つひとつの強度も上がったと思いますね。前半の構成をジャンプ4つから3つに変えることになると、昨季までは入れられた負担の軽い3回転ジャンプがなくなってくる。プログラム全体では、僕の場合だと6つのジャンプのうち4回転3本とトリプルアクセル2本で5つ、1つだけ3回転という形になって、その中で3連続コンビネーションジャンプをやらないといけない。みんなに聞いてもやっぱり「きつい」と言っているし、しんどいと思います。

ジャンプが減ったことで表現の幅が広がる

「スピンはその人がどれだけ向き合ってきたか、練習量がすごく出る要素」だという 【Photo by Emmanuel Wong - International Skating Union via Getty Images】

――今季からの新ルールについては、プラスにとらえているのでしょうか。

 ジャンプが減ったことによって、表現の幅が広がると思います。ステップやコレオシークエンスを長くすることで、よりクリエイティブさが出てくるかなと。みんなにそれぞれ「違うものをやろう」という意識が生まれることで、フィギュアスケートの良さや新しい可能性をどんどん広げていくような、そんなルールかなと思います。やっぱり自由度はすごく大事で、そこのバランスがすごく絶妙だなと思っていて。ジャンプも大切ですが、そこに余白もあって、見せ方が問われる気がしています。

 新しい要素であるコレオスピンについては探り探りではありますが、選手の実力が出ると思います。明確な「こうしたら点がとれますよ」という定義がないのですが、曖昧さは表現として一番大事な部分というか、決まっていないからこそ生まれる美しさがあると思うので。「みんな、どういうふうに表現するんだろう」とすごく楽しみですし、自分も探っていく時間がすごくあるので、終わりがないですね。

 今までのスピンは「これをしたらレベル4がとれるよ」という形が決まっていて、どんどんやることが狭まっていました。でもコレオスピンが生まれることにより決まった形がなくなって、初めて基礎の大切さに気づく選手が多いんじゃないかと僕は思っています。コレオスピンはスピンそのものを評価します。だから、たとえば超高速で綺麗に回るだけのシットスピンでも音楽に合っていればとても美しくなるので、多分そういうスピンを見せる選手も現れてくるのではないでしょうか。

 スピンはその人がどれだけ向き合ってきたか、練習量がすごく出る要素です。ヨーロッパの選手はスピンをたくさん練習している印象があるので、強そうだなと思います。前の世代、旧採点時代のスピンを再評価する流れがきそうだなという予感があって、昔の良さもうまいこと融合させられそうなルールだと思います。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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