「国立に導かれた男」水沼貴史が語る “聖地”の魅力と「MUFG THE国立DAY」の見どころ
各クラブのサポーターも、それぞれのクラブに帰ってくる。今までサッカーに興味はなかったが、W杯をきっかけにスタジアムに足を運ぶファンもいるはずだ。
サポーターにとってはちょっとした“お祭り気分”を味わえる。Jリーグに興味を持ち始めたファンにとっては絶好の入口になる――。そんなイベントが「MUFG THE国立DAY」だ。8月は開幕戦の「横浜F・マリノス−鹿島アントラーズ戦」を皮切りにJ1・4試合、J2・1試合の計5試合が組まれている。
今回は元日本代表でサッカー解説者の水沼貴史さんに国立の魅力、5試合の見どころを語ってもらった。
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国立、開幕戦、金Jの「特別感」
水沼 僕の中で聖地だし、「運のいい場所」というか、すごく導いてもらった場所です。ピッチに出てスタンドを見上げたときの高揚感は、他では味わえないくらいのものだと思います。
横浜マリノスとヴェルディ川崎の戦ったJリーグ開幕戦(1993年5月15日)は国立で、そこに(マリノスの選手として)出場させてもらいました。高校サッカーが首都圏開催になって初めての決勝(1978年1月8日/水沼さんは浦和南の1年生ながら主力で、静岡学園を下して優勝を経験している)は国立開催で、それにも出させてもらっています。1979年のワールドユースも国立で、メキシコからゴールを決めています。
実はFIFA主催のゲームの日本人第1号ゴールは僕ですかね(笑)。日本は3試合で僕しか点を取れていないので、僕が1号なんですよ。A代表でも結構ゴールは多く取っています。
――8月7日(金)の横浜F・マリノス−鹿島戦から順に、5試合の見どころをお聞きしていきます。
水沼 オリジナル10の中で、過去に降格がないチーム同士の対戦ですね。マリノスは対戦相手よりまず自チームでしょう。スティーブ・コリカ監督が新たに就任して、最初の公式戦ですから、まだ完成形にはなっていないと思います。その中で鹿島相手にやれることをやって、結果が出ればいいですよね。
鹿島も「対マリノス」というより、自分たちがチャンピオンになるために、開幕は落とせません。百年構想リーグは最後にヴィッセル神戸に敗れてタイトルを落としたので、26/27シーズンのタイトルは絶対に取らなければいけない。だから気持ちを切り替えてくるのは容易に想像できます。しかも、その舞台はシーズン移行があった開幕戦で、金Jの国立ですから、お互いに「特別感」はあるはずです。
マリノスは「危機感を持ってやった方がいい状況」
水沼 新監督といっても、マリノスは監督の交代が繰り返されているので……。新しくしたからよくなると安易に言えないし、読めない部分はありますね。
渡辺皓太(→神戸)や加藤蓮(→京都)が出ていって、FWの谷村(海那)にどうボールを集めるか、天野(純)は百年構想がよかったからそのまま引っ張れるか、といった部分がポイントでしょう。ただすごくポジティブかと言ったら僕はあまりそう言えないし、危機感を持ってやった方がいい状況だと思います。
ここ数年は「今年こそ」みたいな感じでやっていたはずですが、今季は社長が交代して、クラブの体制も変わります(※シティ・フットボール・グループが6月25日に所有していた株式を日産自動車に譲渡)。そういう意味で、クラブとしての転機になってほしいですね。
――鹿島についてはいかがですか?
水沼 僕のイメージですけど、鹿島はもちろん鈴木優磨やレオ・セアラのような能力の高いアタッカーがいますけど、「ボランチのチーム」だと思うんです。清水からマテウスブエノを獲得したのは結構大きいですよね。知念(慶)はマリノスに移籍しましたが、柴崎岳の状態が戻ってきて、三竿(健斗)もしっかりできます。ボランチがしっかり機能していくと、前の選手たちが躍動しだすと思います。
「選手たちのメンタルを刺激しながらやっている」城福監督
水沼 城福監督は「クラブの資金力」について普通にコメントで触れたりしますが、あれだけのチームを作り上げているのはやはり素晴らしいことですし、選手たちのメンタルを刺激しながらやっている監督ですね。百年構想の9位決定戦でガンバ大阪とやった2試合目(東京V 2●4 G大阪)を僕は解説して、ガンバの若手に結構やられたんです。スタッフたちと少し喋ったとき、相当悔しい思いをしていたし、「これではダメだ」みたいなことも言っていました。このオフはトレーニングより質も量も上げてくる可能性があるし、逆に怖いですよね、すごく変わってきそうな気がします。
カードだけ見るとレイソルに回されるイメージはあるだろうけど、システムが合致するから、そこも見どころにはなるかなと思います。
――柏は百年構想リーグでEAST8位、全体15位にとどまり、苦しい半年を経験しました。
水沼 百年構想リーグは確かに上手くいかなかったけど、徐々に自分たちのスタイルを取り戻していました。自分たちの「芯」があるので、そこに戻れる、戻せるチームですよね。「こういったことが起きた」という現象は分析するでしょうし、巻き返して来ると思います。
遠藤渓太、満田誠といい選手も取りました。百年構想リーグはサイドで仕掛けられる、中にも入れる小屋松(知哉)が移籍した影響が出ていました。両ワイドの能力、選手層も元のレベルに戻ります。あとは通年で細谷真大が活躍できるようになっていければいいですね。しかしシーズンが進むと、ACLEが絡んできて、それが影響するのかな?というところはあります。
水沼さんと横浜FC・横山暁之の「縁」
水沼 百年構想リーグの順位はよくなかったですよね。須藤大輔監督は攻撃的なスタイルなので、このハーフシーズンに相当「試したのかな?」という気はしています。
選手はまず細井響に注目しています。新人なのにキャプテンを任されて、もっともっと上に行ける選手だと思います。一つの武器としてロングスローがあって、ライナー性のすごい球を投げるので、そういうのをみるのも楽しみですよね。
――左利きでいいロングキックもありますし、守備的なポジションはどこでもできるタイプです
水沼 僕が好きな選手に横山暁之がいます。テクニックとアイデアのある面白いアタッカー選手です。東京ヴェルディユースから北陸大に行って、そこからプロになった選手ですけど、実は大学のときに見ているんです。僕は福井の北陸高校を外部コーチとして見ていた時期があって、北陸大に関わっていた越田(剛史)は日産の同期という縁でした。そのときトレーニングマッチによく行っていたんです。「北陸大学から頑張ったよね。応援している」と伝えたら、彼も喜んでくれたり、そういう関係です。
――横山と須藤監督は藤枝時代の縁があります。
水沼 須藤監督というエネルギッシュな指導者のもとで、横浜FCがどう変わっていくには注目しています。J1のときは守備で我慢しながら勝ち点を拾っていましたけど、J2に落ちてしまった。それを攻撃的なスタイルを変えるところに挑んでいると思うので、そういう部分は楽しみにしています。
――服装もおしゃれですね。
水沼 個性的に引っ張るタイプですね。槙野もそうだけど、須藤監督は槙野が(藤枝MYFCの監督に)なる前からバリバリやっていたから。
秋葉監督と乾選手、磐田の相性は?
水沼 秋葉忠宏監督になって乾貴士選手を呼んで、(過去に清水エスパルスに在籍していた二人の)禁断と言ったら禁断の移籍です。一回ヴィッセル神戸を挟んでいるから大丈夫かもしれませんが、結構チャレンジングですよね。磐田のクラブとしての必死さは伝わってきます。(磐田のスポーツダイレクター、取締役を務める藤田)俊哉がチームを変えなければいけないということで、尽力しているのでしょう。磐田は新国立でやるのが初めてですよね?
――初めてみたいです。
水沼 清水が国立でやったときは新幹線を清水色に染めて、みんなで乗り込んで来たじゃないですか。ジュビロもそんなことやったら面白い。
――乾選手の磐田移籍をどうご覧になりますか?
水沼 秋葉監督なら、乾の扱い方は間違いないと思います。システム的にどうハメるかはわからないですけど、清水で蘇らせたのも彼でした。
――秋葉監督は色んなクラブを経験している指導者ですが、磐田入りは流石に驚きました。
水沼 クラブの雰囲気は大きいですが、秋葉はそれを変えると思います。彼はパワーがすごいので。俊哉もそれがほしいのでしょう。秋葉はネガティブじゃないし、暗くないし、まず自分のモチベーションも高くて、そのやる気を表に出さないことに我慢できないタイプです。選手もそれに引っ張られていく気はします。