週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

大谷翔平が試合中に伝えたメッセージとは? 若き捕手ラッシングが学ぶべき「メジャーの流儀」

丹羽政善

大谷翔平はマウンド上でラッシングと何を話していたのか? 【写真は共同】

初回から狂った大谷との呼吸

 デレック・ジーター(ヤンキース)は打席に入ると、バットの先でホームベースを“ トン、トン”と叩いてから、構えるのが常だった。

 そのとき、マウンドに新人などがいると、「お前、誰だ?」と言わんばかりに下から見上げるような仕草をする。これを相手投手はどう思ったか。当時、マリナーズでクローザーを務めていたトム・ウィルヘルムセンが教えてくれた。

「ルーキーに対してやることで有名だった。こっちは、『チクショー、なめやがって』と思う。でも、そうやって頭に血が昇った時点で負け。冷静に投げられなくなる」

 ジーターにしてみれば、それが狙いだったか。

 ちなみにこれを、逆の立場――新人の打者が、ベテラン投手にやったらどうなるか? おそらく次の瞬間、その打者は、地面にうずくまっているはずだ。
 
 そんなアンリトゥン・ルールは他にも存在し、内角球を投げられた打者が、投手に向かって腕を広げて、手のひらを上に向けた瞬間、両軍のダグアウトから選手が出てくる。

 その行為は本来、チームメートの間でも御法度。特に若い選手が、実績のある選手にやった場合、“指導案件”となる。先日の試合でそれを大谷翔平に対してやってしまったダルトン・ラッシングの横に、フレディ・フリーマン、デイブ・ロバーツ監督が相次いで座って、諭すように話していたのは、まさにそういう背景がある。

 あの試合――大谷が先発した24日(※日時はすべて現地時間)のツインズ戦を振り返ると、初回から二人の呼吸が合っていなかった。

 簡単に2死を取った後、3人目の打者に対する初球のシンカーをラッシングは弾いた。あれがサインミスなら、すぐにラッシングはマウンドへ駆け寄ったはずだが、そうではなかったので、単に捕れなかっただけということになるが、だとしたらそれはそれで、キャッチングが雑だった。

 問題はその次の球。やはりシンカーが外角低めに決まったかに見えたが、判定はボール。大谷はすぐさま、ABSチャレンジを求めるような仕草をしたが、ラッシングはスルー。実際は枠にかかっており、チャレンジしていればストライクだった。

 2-0か1-1か、その差は小さくないが、まだ初回であり、失敗した場合、いきなり権利を一つ失うことになる。ラッシングはそれを恐れたのかもしれないが、結局大谷はその打者を四球で歩かせ、その時点でかなりイライラしているようだった。

 その回は無失点で切り抜けたものの、二回は、1死一塁からスプリットを多投して連打を浴びて満塁に。この配球も謎だったが、問題が起きたのは、その直後。初球、大谷のシンカーをラッシングが捕逸し、ボールがドジャースのダウアウトに入ってしまった。このとき、ベースカバーに入った大谷は天を仰ぎ、ラッシングは大谷の方を見ながら、マスクを持った右手の手のひらを上に向け、さらにダグアウトの方向を見た。これが先ほど触れた一連の経緯である。

「ちょっと、あれはどうだろう」

 直後にやり取りをしたある元選手は、すぐにラッシングの態度を指摘した。

「自分は間違っていないと言わんばかり。印象は良くない」

 直後、ラッシングがマウンドへ。このとき大谷はこう口にしていたのでは? と、ある米メディアが読唇術を使って推測していた。

「Last time?」(最後のでしょ?)

「Last one?」(最後のだよね?)

「Fastball?」 (真っ直ぐでしょ?)

 まず、大谷が口元を隠さなかったこと自体が驚き。彼もまた、冷静さを失っていたのではないか。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント