「僕をスタメンから外してください」 中田翔が今だから語る2016年夏の決断
「疲れている?」だから何?
どちらかといえば得意で、苦手意識はなかったですね。汗をぶわーっとかくと、むしろ体が動く。暑さは好きなほうでした。ただ食事には人一倍、気を使いましたよ。夏は食欲が落ちて食べられる量も減るので、必要なたんぱく質だけは確保できるよう、自分で工夫したり、アドバイスをもらったりしていました。
――札幌、東京、バンテリンと、空調の利いた屋内球場が本拠地のチームを渡り歩いてきました。逆に西武ドーム(現ベルーナドーム)や千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)への遠征では、どんな暑さ対策を?
西武は、もうフィールド全体が蒸し風呂。千葉は海風が吹くぶん、カンカン照りの中でずっと温風を浴びているような感じです。正直、現場では対策のしようがありませんでしたね(苦笑)。ベンチに戻るたびに頭と首を冷やして、脇に冷たいペットボトルを挟むくらい。食欲がわかず、試合前に食べられない選手も多くて、みんな冷たい麺類でなんとかしのいでいました。
――そうした暑さや、積み重なったシーズンの疲れは、いつごろから出始めますか?
やはり8月ごろですね。レギュラーの中には、夏だけで7、8キロ落ちる選手もいるくらいですから。
――「疲れが出てきた」と感じたとき、バッティングのどこに一番影響しますか?
もう、全体的にです。スイングスピードも、振り切るパワーも落ちる。夏に体重が落ちるのは、パフォーマンスを出すうえで、やはりマイナスなんです。暑さが嫌いじゃない僕でさえ、夏場はスイングスピードの数字がはっきり下がっていました。
――その状態でも試合に出続け、戦い抜くために、何を心掛けていましたか?
心掛け、というより「試合に出ること」そのものが僕らの使命なんです。世間に夏休みがあっても、僕らにはない。みなさんが休みの時期こそ、僕らは優勝へ向けて最後のスパートをかけなければならないとき。「疲れている? だから何?」という世界です。そこで休める選手は、はっきり言ってレギュラーではありません。軽い肉離れだろうが、多少の骨折だろうが、バンテージを巻いてでも出る。だって、他の誰かにレギュラーを渡したくないですからね。
――休めば、代わりに入った選手が活躍してしまうかもしれない。
裏を返せば、当時の日本ハムはそれだけ層の厚い、強いチームだったということです。(どのチームでも)今の若い子は、自分から「ちょっと痛いです」「代えてください」と言ってしまうでしょう。それでは絶対的なレギュラーにはなれませんよ。もちろん今は「精神野球」や「根性論」が歓迎される時代ではないし、いろんな意見があるのは分かります。それでも僕は、そのマインドだけはプロ野球選手として、絶対必要だと思っています。
――その覚悟を、自分を支える軸にしてきたんですね。
野球界に限らず、社会的に成功を収めている人間でそういう腹の据わっていない人は、僕の周りに一人もいません。あのころは本当、根性で戦っていました。トレーナーに「翔、これじゃ無理だ。全力で走れないし、出たらもっと悪化する」と止められても、「いいから、バンテージ巻いて」と言ってグラウンドに出ていました。今は選手のほうが先に、「ちょっと無理です」と口にしてしまう。言い方は悪いですけど、それでは絶対的なスターは生まれません。大谷翔平(ドジャース)なんて、とんでもない根性ですよ。だからこそ、彼はあそこまでのスーパースターになったんです。