“精密機械”に起きたまさかの異変… 山下美夢有が見せた「強さ」とは、全米女子プロ最終日レビュー

塩畑大輔

【Photo by Kate McShane/Getty Images】

 海外女子メジャー『KPMG全米女子プロゴルフ選手権』の最終ラウンドが6月28日、米ミネソタ州のヘイゼルティン・ナショナルGCで行われた。

 9選手が決勝ラウンドに進出した日本勢だが、最高順位は山下美夢有の通算5アンダーの12位。同13アンダーで優勝した韓国のユ・ヘランらの上位争いに割って入ることはできなかった。

 それでもU-NEXTの独占ライブ配信『日本勢徹底マークLIVE』で解説を務めた米山みどりプロは、日本勢がさらに一段階高いレベルに上がったと確信したと語った。そうみる理由とは。

良い状態、良い流れでここに来たからこそ…

 ここまで強くなっているとは…というのが率直な感想です。日本勢は上位進出がならず、それぞれに悔しい思いをしているはずですが、私は逆に彼女たちのレベルが一段階上がっていると感じました。

 特に強さを感じさせたのは、畑岡奈紗選手、山下美夢有選手、そして国内女子ツアーからただひとりスポット参戦をした桑木志帆選手です。

 3選手とも、ものすごく良い状態、ものすごく良い流れでこの海外メジャー大会を迎えました。周囲から期待されるのはもちろん、自分への期待もすごく高かったんじゃないかと。実際にそれぞれショットの状態も良く、パットのストローク、プレーのリズムなども素晴らしかった。

全米女子オープンに続く健闘をみせた桑木志帆。2メートル以上の難しいパーパットをねじ込み続ける姿も印象的だった 【Photo by Kate McShane /Getty Images】

 ただ、ほんのわずかの差でパットが決まらないという場面が、初日からとても多かった。

 自分への期待が大きく、実際にラウンドしてみても感触も良い中でうまく結果が出ないと、普通ならフラストレーションを抱えていることがもっとプレーに出てしまうものだと思います。加えて、メジャーならではの難しいセッティングがストレスをかけてくる。

 今週は自分の週ではない、という言葉がありますが、3選手とも高いレベルの内容、結果をあきらめてしまってもおかしくない状況だった。でも、最後までそうはならなかった。悪い流れに何度も入りそうになりながらも、自分のプレーでそれを食い止め続けた。

第2ラウンド終了時点で2位につけるなど、今大会も上位でプレーし続けた畑岡奈紗 【Photo by Kate McShane /Getty Images】

 うまくいかなかったというのは、若干のズレに過ぎません。ただ、それも踏まえても、次のショットで厳しいピンポジションを狙っていくのはすごく勇気のいることです。山下選手と畑岡選手には、流れを取り戻しにいくためにピンに向かって打っていく、という姿勢がはっきりと見えた。そこに私は強さを感じました。

精密機械に起こった異変。揺るがない強さ

 山下選手は前週の『マイヤーLPGAクラシック』で優勝して、最高の流れで今週を迎えました。大会に入ってもショットの精度は高く、海外メジャーの難しいセッティングの中でもボギーを最小限にとどめながらプレーできていました。

 ただ、数多く迎えたチャンスで、得意のパットがわずかに外れる場面が続いてしまった。加えて、最終ラウンドでは7番、16番とセカンドショットを一度ならず二度までも池のほうに落としてしまった。精密機械のような山下選手にもこんなことが起きるのか、と驚きました。

チャンスが生かせない苦しい流れの中だからこそ、山下の精神的な強さは際立った 【Photo by Kate McShane /Getty Images】

 16番はかろうじて池のふちの茂みの中にボールが生きていましたが、そこからのアプローチはグリーンをこえ、左奥の深いラフに入ってしまった。あまりにも苦しい状況で、自分だったらきっと心が折れてしまうと思ってみていました。でも、彼女は違いました。

 3メートル以上ありそうなパットをねじ込んでナイスボギーにすると、続く17番パー3ではピン奥2メートルにピタリとつけてバーディーを取り返した。グリーン手前から4ヤード、左端から3ヤードという簡単ではない位置でしたが、直前にミスがあったことをまったく感じさせない果敢な攻めで、悪い流れを地力で断ち切ってしまった。

まだチャンスは…自ら言い放つ自信と覚悟

 畑岡選手について私が一番驚いたのは、第3ラウンド終了後のインタビューです。後半に入っての3連続ボギーを3連続バーディーで取り返したのに、直後の上がり2ホールの連続ボギーでふいにしてしまった。76もたたいてしまったこともあって、普通ならインタビューも受けたくないような心境のはずです。

 でも彼女は「明日は天候がかなり悪くなるという情報なので、まだ巻き返しのチャンスはあると思います」と言い切った。他人から「まだ明日があるよ」と言われることはあっても、自分でそれを言葉にできるのは、相当な自信、そして心の強さがないとできないことです。

すでに実績のある畑岡だが、米山プロはこれまでにも増して強さを感じるという 【Photo by Kate McShane /Getty Images】

 最終ラウンドも序盤から3つボギーが重なって難しい流れでしたが、前半のうちに立て直してそれ以降ボギーを打たなかった。18番に長いバーディーパットをねじ込んで、終わってみれば最終ラウンドはアンダーパー、終わってみれば「やっぱり畑岡さんだよね」ということになった。それは偶然じゃなく、前日のインタビューで自分に誓って、自分で果たした必然なのかもと感じました。

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著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

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