「11.5ゲーム差なんて普通は無理」 中田翔が明かす2016年大逆転優勝の舞台裏
「負ける気がしない」最強の空気が生まれた
監督が僕らにプレッシャーをかけるようなことは、一切なかったですね。ただ、選手同士でも「今季は優勝しかないよね」という声が自然と上がっていましたし、その決意でシーズンに臨んだことは間違いありません。前年は貯金を17も作りながら、ソフトバンクに12ゲーム差をつけられての2位。「もう一度、頂点を勝ち取るぞ」という思いを、全員が強く持っていました。だから監督といちいち言葉を交わさなくても、「今、監督は絶対こう考えているはず。なら僕らはこう動こう」「こういう勝ち方を一つでも増やそう」と、選手間で常に話していました。
――そんな中、6月18日には首位・ソフトバンクと11.5ゲーム差まで開いてしまいます。ところが翌19日の中日戦から、球団新記録となる15連勝の快進撃。チームにどんな化学変化が起きていたのでしょうか。
「11.5」なんて、シーズンの中盤や終盤でひっくり返せる数字じゃないですよ。みるみる離されていく中で、正直「ヤバい、ヤバい」と焦りばかりが先に立っていました。それがふと気づけば、「えっ、俺ら今、めちゃくちゃ勝ってない?」と。(あの勢いがついた)きっかけは、今も思い当たらないんです。流れを変えた試合やポイントは絶対あったはずなのに、どこと聞かれても僕らにも分からない。ただ5連勝、6連勝と白星が重なっていくころには、「なんか、負ける気しなくない?」とベンチで口々に言っていました。先発が立ち上がりに5点を失って早々に降板しても、「今日は負けかな」というムードにまったくならなかった。「いや、5点くらいならワンチャンいけるよね」と全員が信じていて、案の定ひっくり返す。チームもファンもイケイケで、その勢いのまま突っ走った15連勝でした。
――その中で、7月1日からのソフトバンク3連戦を3タテしたことが、逆転優勝への大きな弾みになったのでは?
当時のソフトバンクは、本当に強かった。投手陣も盤石でしたからね。それでも自分たちが臆せず攻めていけたのは、「自分たちは絶対にできる」というマインドの選手が多かったからだと思います。
――王者・ソフトバンクに若い力が怖いもの知らずでぶつかった、というより、中田さんら2012年の優勝経験者とのバランスがうまく取れていた感じでしょうか。
ベテラン、僕ら中堅、そして若手が、本当にうまく噛み合っていましたね。12年にレギュラーを張っていたメンバーは、「この3連戦で2つ取っておけば、次のカードは最悪1勝2敗でもトントンだ」とか、わりと細かく計算していたんです。一方で下の子たちは、もうイケイケ。「失敗したっていいじゃん」くらいの気持ちで飛び込んでいく。僕らも普段から「負けてもお前らの責任じゃない。背負うのは俺ら年長のレギュラー陣。だから恐れずやれ」と声をかけていました。近ちゃん(近藤健介)も(西川)遥輝も、その言葉どおり伸び伸びやってくれた。僕自身、12年には稲葉(篤紀)さん、金子(誠)さん、小谷野(栄一)さんといった先輩から「翔、もっと伸び伸びやれよ」と背中を押してもらいましたから。あの縦のつながりが、当時の日本ハムの大きな財産でした。