元ブライトン監督が警戒する日本代表の武器とは? 「彼らは三笘薫がいない状態での解決策を見つけている」

舩木渉

スウェーデン代表を率いるグレアム・ポッター監督。かつてはブライトンを率い、短期間ながら三笘薫も直接指導した 【写真:舩木渉】

三笘薫がいなくても……

 北中米ワールドカップ(W杯)も早いもので6月24日(現地時間、以下同)からグループステージ最終戦がスタートしている。日本代表は初戦でオランダと引き分けた地、アメリカ・テキサス州ダラスで同25日にスウェーデンとグループステージ突破を賭けた一戦に臨む。

 スウェーデンを率いるのはイングランド人のグレアム・ポッター監督だ。彼はブライトン&ホーブ・アルビオン時代に三笘薫を見いだし、ヨーロッパの舞台へと引き上げた人物として知られる。

 三笘はブライトン加入後すぐにベルギー1部のロイヤル・ユニオン・サンジロワーズへ武者修行に出されたため、2人が同じ環境で仕事をした期間は期限付き移籍から復帰して以降の数カ月と短かったが、面識があるのはわかっている。そこで筆者は6月24日に行われた公式記者会見の場であえて「日本代表に三笘不在の影響はあるか? 三笘なしでも戦える新たな武器や解決策を見つけたと感じているか?」と、ポッター監督に問うた。

 その質問に対する答えはこうだ。

「(三笘)薫の質は非常に高く、どのチームも彼を欠かせない存在と感じ、どのチームも彼を迎え入れたいと思うだろう。私はそれを間違いなく確信している。私の彼に対する経験、印象は間違いなくポジティブなものしかない。

 彼が持つ1対1の能力は素晴らしく、ディフェンダーをかわし、守備の組織を崩す能力は非常に重要で、現代サッカーで非常に難しいと言われるダイナミックな突破口をもたらしてくれる選手だ。

 しかし、今の日本代表を見ると、彼らは薫がいない状態での解決策を見つけているように感じる。もちろん異なるタイプの選手で、特徴は少し違うが、それでも解決策であることに変わりはない。

 そして、彼らがチームとしてそれを見つけられることが非常に印象的だ。彼らは長い間一緒にプレーしてきたチームであり、そのことが強い集団的理解を生んでいる。現代サッカーについての前の質問にも関連するが、私たちは個人に注目しがちで、もちろん個人は重要だ。しかし、サッカーはチームスポーツであり、日本はチームとして非常にうまくプレーをしていると感じている」

誰が出ても機能する日本代表

板倉滉は自らが絶対的でなくとも、誰が出てもチームとして機能する日本代表のこれまでの積み重ねに自信を持っている 【写真:舩木渉】

 三笘が主に務めていた左ウイングバックでは、中村敬斗が絶大な存在感を発揮し、高い突破力やシュートスキルを日本代表の攻撃に還元している。また3-4-2-1の左シャドーなら、グループステージ第1戦のオランダ戦では前田大然が、第2戦のチュニジア戦では鎌田大地が先発起用されている。試合途中からは久保建英や中村敬斗、鈴木唯人も左シャドーとしてプレーした。ポッター監督の言う「解決策」は、誰か一人ではなく組織としての全般的な選手起用のことを示しているのだろう。

 プレミアリーグでの豊富な指導経験を持つスウェーデンの指揮官は、日本代表を「サッカーに計画や方向性があり、それがチーム全体で共有されていることを示す良い例」と称え、こんなことも言っていた。

「日本代表を見ると、長く一緒にプレーし、同じ考えを共有しながら長い時間一緒に活動してきたことで生まれる、独特の非言語的なコミュニケーションがある。それはトレーニングや試合を重ね、経験を積み、そのフィードバックを受けてまた挑戦するというプロセスから生まれているものだ」

 この分析は森保ジャパンが時間をかけて育んできた「誰が出ても、誰と組んでも機能する」の原則とも合致する。代表チームではクラブチーム以上に序列がはっきり生まれがちだが、今の日本代表には選手にもスタッフにも「誰が出ても……」という意識が浸透しており、それが個人のパフォーマンスよりもチームの勝利を最優先するマインドにもつながっている。

 2023年3月の第2次体制発足以降、森保一監督は総勢89人の選手を招集してきた。そして、そのほとんどが日本代表としてピッチに立った。国際Aマッチウイークでは通常2試合が組まれ、試合ごとに大きく先発メンバーを入れ替えて戦うことも珍しくなかった。

 結果が最も重要な北中米W杯のアジア最終予選でも多くの選手にチャンスを与え、W杯本大会でも大幅な入れ替えをためらわない。オランダ戦からチュニジア戦にかけて先発を4人変更し、2試合で総勢22人を起用している。これだけ多くの選手を使った国はほとんどなく、3年半かけて進めてきたチーム力の底上げの成果がW杯の舞台で発揮されていると言っていいだろう。

 チュニジア戦で今大会初出場となったキャプテンの板倉滉は「今は第1戦と第2戦でメンバーを変えても、こういう(4-0という)結果が出せるし、みんながいいパフォーマンスを見せられている」と述べ、「誰が出てもやれる準備をしている」と胸を張る。

 同じくチュニジア戦に先発した田中碧も「自分たちはどんな相手にも戦えるという自信を持ってやれている。誰が出ても自分たちの強さが出せるのがチームの強み」と誇った。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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