実は鬼門のGS第2戦 長友佑都が前例のない選手ミーティングで伝えた「W杯に足をすくわれる感覚」の正体

舩木渉

長友(左)と板倉(右)が中心となり、6月17日の練習前に再び選手ミーティングが開かれた。グループステージ第2戦に向けて選手の目線を揃えるのが目的だったという 【写真:舩木渉】

長友の呼び掛けで開催された選手ミーティング

 日本代表が北中米ワールドカップ(W杯)のグループステージ第2戦に向けて再始動した。

 6月16日(現地時間、以下同)はチーム練習がオフとなり、選手たちは家族と過ごすなどそれぞれの形でリフレッシュを図ったようだ。なお、グループステージ初戦のオランダ戦で負傷した久保建英は、活動再開となった17日の練習に姿を見せず。日本サッカー協会は久保に関して、MRI検査の結果、左膝に負傷が認められたと明かした。

 なお、全治までの期間や詳しい症状については公表されておらず、チームから離脱せずリハビリに取り組んでいく。20日に予定されているチュニジア戦の欠場は濃厚だが、その後の試合で再びプレーできるチャンスがありそうだ。

 また、報道陣に公開された17日の練習冒頭15分間では、上田綺世が別メニューとなっていた。疲労を考慮してチーム本隊から外れての調整になったようだが、本人は「大丈夫です」とチュニジア戦への影響がないことを強調していた。負傷を抱えている様子はなく、コンディションさえ改善すれば次戦への出場は十分に可能だろう。

 17日の練習前には、約5分間と短いながら2度目の選手ミーティングが開かれた。過去の例を見ても本大会中に複数回の選手ミーティング実施は異例だが、グループステージ第2戦に臨むにあたって共有しなければならないものがあったという。

 長友佑都はオフに入る前の15日に、こんなことを話していた。

「(オランダ戦を)『いい戦い』で終わらせちゃダメですよ。結局、引き分けですからね。勝ち点1ですから。僕らは優勝を目指しているチームなので。オランダ相手に勝つ力を持っていなければいけないという意味では、勝ち点1で、しかもギリギリで追いついてなので。もちろん評価できるところもあるんだけど、慢心は絶対ダメで」

 その後には、過去の経験があるからこその言葉が続く。

「前回のカタール大会でドイツに勝って、コスタリカは初戦でスペインに0-7で負けて、僕らは次の試合でコスタリカに負けたじゃないですか。シチュエーション的にはちょっと似ているんですよね。だからもう一度ここで選手ミーティングをした方がいいとは(板倉)滉に僕からも伝えましたけど、僕らの経験でもう一度引き締めていこうというのは、僕からまた伝えようと思います」

 板倉滉は5度目のW杯に挑んでいるチーム最年長の意見を聞き入れ、17日の練習前に選手ミーティングの時間を設けた。「意図としては、まずは戦術うんぬんよりは気持ち、メンタリティーのところで同じ方向を向きたかったから」だと、新キャプテンは説明する。

「最初に自分が意図を話して、佑都くんから『ミーティングした方がいい』という話もいただいたので、佑都くんに振らせてもらって。他の人が喋るよりも、そこでバシッとチームの中で締まった感じがあったので、短いミーティングでしたけど、みんなで練習に行くぞ! という感じになりました」

グループステージ第2戦で勝てない日本代表

長友は大きな声とアクションで練習を盛り上げ、ピッチ外では自らの豊富な経験を惜しみなくチームメイトたちに伝えている 【写真:舩木渉】

 では、どんな内容だったのか。長友は自分がチームに伝えた内容を我々メディアにも詳しく教えてくれた。

「僕は実際に(W杯を)4大会やってきて、(グループステージの)2戦目はすべて勝てていないんですよね。そのことも伝えさせてもらったんですよ。やっぱりW杯に4年間を懸けて準備してきて、初戦はみんな緊張感やプレッシャーがある中で準備してきて、1戦目を終えると、何か緊張の糸が切れてしまうというか。やはり人間なのでどうしてもあるんですよね。その中で4大会ずっと苦戦してきたので。それがないように、もう一度気を引き締めようとは伝えました。

(内容の大部分は)精神面のところですね。ここまですごくいい準備ができているし、この8年間の積み重ねがあるので、その部分に関しては別に言うことはなくて。だからあと精神面でもう一度心をひとつにして、緊張感を高めて、どう(試合を)迎えるかがこの短期決戦の中では一番大事になってくるポイントだと僕は思うので」

 確かに日本代表は初出場だった1998年のフランス大会から2022年のカタール大会までのW杯グループステージ第2戦で過去に一度しか勝てていない。勝ち点3をつかむことができたのは自国開催だった2002年大会のロシア戦だけだ。

 そして、2022年カタール大会のコスタリカ戦も、多くの選手の脳裏に苦い記憶として刻まれている。初戦でドイツに勝利し、ポジティブな空気で臨みながら相手にワンチャンスを仕留められて0-1で敗れ、スペインとの第3戦を大きなプレッシャーがかかる中で戦わねばならなくなった。

 結果的にスペインを破って決勝トーナメント進出を果たしてはいるが、紙一重での勝ち上がりだったのは間違いない。もしコスタリカ戦で勝利していれば状況はかなり違っただけに、前回大会よりも勝ち点で2ポイント少ない現状を考えると、より強い危機感を持ってチュニジア戦が開催されるメキシコ・モンテレイに乗り込んでいく必要があるだろう。

 長友は言う。

「もしかしたらオランダ戦よりむしろ難しくなるかもしれないと思っています。(前回大会の)コスタリカ戦もそうでしたけど、日本に対して引いてくる、守ってくるであろう相手に対して、それを崩すのは簡単ではないし、今回のW杯を見ていても、強豪国がいわゆる格下と言われるチームにかなり苦戦している。そういうところを見ると、本当に難しくなるなというのが、正直な僕の感覚です。

 今考えると、コスタリカが0-7でスペインに負けて、僕らがドイツに勝った時に『コスタリカ戦、絶対にいけるでしょう』という感覚は正直あったんですよね。コスタリカに足をすくわれるというよりは、W杯に足をすくわれる感覚ですね。W杯は本当に心して向かわないと、本当に強い覚悟がないと足をすくわれるのでね。それは対戦相手というよりは、W杯にですね」

 これまで4度のW杯を経験してきたからこそ、言葉に重みが生まれる。ピッチ上はもちろん、ピッチ外で貴重な知見を情熱的に、かつ心に響く形でチームメイトに伝えることができるのは長友が持つ唯一無二の強みだ。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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