元日本代表DF森脇良太のW杯オランダ戦解説「戦術面とメンタル面の問題をピッチ上の選手たち自身で解決してしまった」

吉田治良

大事なW杯初戦で、強豪オランダから勝ち点1をもぎ取った日本代表。二度もリードを許しながら、最後まで気持ちが折れることはなかった 【Photo by Maja Hitij - FIFA/FIFA via Getty Images】

 6月14日(現地時間、以下同)、強豪オランダとのワールドカップ(W杯)グループステージ初戦に引き分け、貴重な勝ち点1を手に入れた日本代表。二度のビハインドを追いついたこの一戦を、元日本代表DFの森脇良太氏は「勝ちに等しいドロー」と称える。勝敗を分けたポイントは、森保一監督の選手交代ももちろんだが、2つの失点後に選手たちが見せたリアクションにあったと分析。チュニジアとの第2戦に向けた修正ポイントも含め、森脇氏に解説してもらった。

うまくいっていないと感じる試合の入り

 まず、全体的な試合の印象から言えば、W杯の初戦ということもあって、あまりリスクを冒さない、どちらかというと堅い試合になりましたね。オランダという強い相手に対して、森保(一)監督がいつも言っている「いい守備からいい攻撃」というところを、ものすごく意識した試合になったなと思います。

 特に立ち上がりはオランダにボールを握られて、なかなかプレッシングにも行けませんでした。ミドルブロックと自陣でのブロックを使い分けて、そこからカウンターを狙う戦いになりましたけど、選手たちは「あまりうまくいっていないな」と感じるような試合の入りだったかもしれませんね。

 ただ、僕はこの試合のカギは、日本の前からのプレッシングになると思っていました。例えば相手のゴールキックや自陣からのビルドアップに対して積極的に前からプレスを仕掛けるべきだと。

 前田大然選手をシャドーの位置でスタメン起用したのも、森保監督がそうしたプランを持っていたからだと思いますが、おそらくW杯初戦の重圧や、(コディ・)ガクポ選手をはじめとする個人能力に優れたオランダ攻撃陣の圧力を、選手たちがピッチの中で感じすぎた部分があったんでしょうね。

 それでまずはミドルブロック、プラス、自陣でブロックを作って守ろうという判断を、選手たち自身でしたんだと思います。

注目は中村のゴールが生まれる前のシーン

オランダ攻撃陣の圧力を受け、前半は引いて守る形になったが、前からプレスを仕掛ける機会は常に窺っていた。中村のゴールも前田(右)らのプレスがきっかけに 【Photo by Alex Pantling - FIFA/FIFA via Getty Images】

 それでも行けるタイミングではプレスに行こうという狙いは常に持っていましたし、それが活きたのが、後半立ち上がりに先制されて、その6分後に同点に追いついた場面でした。

 中村敬斗選手のゴールももちろん素晴らしかったんですが、僕が注目したのはその前のシーン。鎌田大地選手が相手ディフェンダーを敵陣深くまで追いかけてバックパスを蹴らせて、そこに上田綺世選手、そして前田選手が猛然とプレッシャーを掛けたことで、ゴールキーパーに苦し紛れのロングキックを蹴らせたんです。結局これがタッチを割って得た日本ボールのスローインから、同点ゴールは生まれています。

 ただ、そうした戦術面以上に大きかったのは、メンタルの部分。FIFAランキング8位の強豪国に対して二度リードを奪われても気持ちが折れず、最後の最後まで我慢強く戦えた。

 何より僕が感心したのは、選手たち自身で問題を解決してしまったことなんです。先制された後も、そして64分に2点目を奪われた直後も、選手たちが円陣を組んでしっかりとコミュニケーションを取っていました。大観衆の中ではなかなか声が通らないんですが、あのタイミングを利用して選手間で話し合い、軌道修正できたのは、森保監督のもとで8年間培ってきたチーム力の証明だと思うんです。

 そこで戦術面の確認ができたのはもちろん、焦れずに我慢強く戦おうと、メンタル面を整えられたことが、非常に大きかったと思いますね。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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