久保凛の知られざる苦悩「やっと素直に喜べる」 日本選手権3連覇の裏側
「やっと素直に喜べるというか、自己ベストではないんですけど、ここまで帰ってこれたなと」
前日の予選では、ラスト100~200mで思うように足が動かず「修正できるようにします」と課題を抱えていた。そして決勝、スタート直後から先頭に立って独走に近いハイペースを刻んだ予選とは打って変わり、序盤はヒリアー紗璃苗(わらべや日洋)と塩見がレースを引っ張るすぐ後ろ、3番手につけた。
予選の400m(1周目)のラップが58秒というハイペースだったのに対し、決勝はヒリアーが1分00秒で通過。久保もほぼ同時に通過した。そこから徐々に位置を上げ、最後の直線。予選で動かなかった足は、この日は動いてくれた。そこにどんな戦略があったのか。3連覇を成し遂げた18歳は、意外な舞台裏を明かした。
「予選みたいに1周目からいくっていう、余裕というか自信がないので、他の方の力も借りながら」
この「誰かの力を借りて走ってもいいんじゃない」というアドバイスを授けたのは、今春から彼女を指導する元男子800m日本記録保持者の横田真人コーチだった。「予選は全体的に力んでいた部分が多かったから」という横田コーチの言葉通り、ケガ明けで不安を抱えていた久保はその言葉を信じて結果に結びつけた。「余裕はあまりなかった。そんな中でも勝ちきるっていうところが、すごい良かったかな」と、大一番で見せた底力に胸を張った。
新チーム加入と思うようにいかない苦悩
「1番沈んじゃったのが木南のあと」「ご飯が食べられていない時期があって……」
そんな暗闇の渦中にいた久保を救ったのは、TWOLAPSの温かい仲間たちだった。「TWOLAPSの皆にすごい励ましてもらったりとか、気を遣っていただいて、すぐ元気になって」。特に、世界を舞台に戦ってきた新谷仁美(積水化学)は、優しく言葉をかけてくれたという。
「自分に気を遣わせないように、もう何気ない気遣いで話をしてくれた。それがすごい伝わって。感謝の気持ちでいっぱいです。最高のチームだなと思います」
練習の時はとことん厳しく「オン」に入り、終わればきっちり切り替えて「オフ」になる。そのメリハリが、折れかけていた彼女の心を優しく包み込んだ。