日本代表、オランダ撃破の青写真 「真っ向勝負」で打ち負かすために必要な対策と適応

舩木渉

谷口彰悟(中央)はオランダ代表に「付け入る隙」があると見ている。そこを突くための準備に残された時間はあと1日だ 【写真:舩木渉】

初戦直前に相次ぐトラブル

 北中米ワールドカップ(W杯)のグループステージ初戦を2日後に控えた6月12日(現地時間、以下同)、日本代表はアメリカに入って初めて雨の中で練習を行った。

 前日練習は時間が限られる上、強度を上げるのが難しいため、2日前は試合に向けて徹底的な戦術・戦略の詰め作業に集中できる最後の日になる。初戦で激突するオランダ代表は世界屈指の強豪チームの1つということもあり、森保ジャパンは綿密な戦い方の確認に取り組んだ模様だ。

 グラウンドに姿を見せたのはサポートプレーヤーの吉田麻也と南野拓実も含めて27人。前日に遠藤航の離脱が決まり、追加招集が発表されていた町野修斗は、搭乗予定だった便の相次ぐ欠航により、12日の夕方にオランダ戦の開催地・テキサス州ダラスでチームに合流することとなった。

 トラブルはさらに続く。この日はダラスの天候が悪く、12日19時の時点でダラス・フォートワース空港を発着する378便が欠航。筆者ら多くの日本メディアが搭乗するはずだった便も2度の遅延の末に欠航となり、ベースキャンプ地のテネシー州ナッシュビルで足止めを食らっている。

 日本代表が移動のために用意していたチャーター便にも約1時間の遅延が発生し、チームは予定よりも約40分遅れて練習場を出発した。その出発の前には一度全員がバスに乗り込みながら、想定以上の遅延が発生することがわかったためにバスを降りてクラブハウス内に戻るというドタバタ劇もあった。

 森保一監督は「想定外も想定内に」と何度も繰り返してきた。ならば、こうした度重なるアクシデントに動揺することなく、残された時間で可能な限りの準備をするしかない。ピッチ外の出来事でチームが崩れてしまうようでれば、オランダ打倒は到底叶わないだろう。

 当然ながら対戦相手の分析や対策は着々と進んでいる。谷口彰悟は「親善試合とW杯の初戦が全くの別物というのはもちろん理解している」としつつ、オランダに攻略の糸口があると説く。

「個の能力は高いなとすごく感じます。ただ、チームとしては、付け入る隙はあるなと、正直、試合を見ていても感じます」

 オランダは6月に入ってからの国際親善試合でアルジェリアに0-1で敗れ、ウズベキスタンにはPKによる2得点で2-1の辛勝とやや苦しんでいる。流れの中から1つもゴールを奪えず、オランダ国内では「決定力不足」への指摘や批判が強まっているという。オランダ代表OBのピエール・ファン・ホーイドンク氏は国営放送NOSの番組内で「W杯開幕目前のチームとは思えない。内容も迫力も足りない」とロナルド・クーマン監督のチーム作りを厳しく非難した。

オランダ相手にどう守る?

左WBの有力候補、中村敬斗はオランダ戦でカウンターに活路を見いだそうとしている。そのためには守備で走って戦うこともいとわない 【写真:舩木渉】

 ドニエル・マレンやコーディー・ガクポ、クリセンシオ・サマーフィルら強力な攻撃陣を擁しながら決定機を決め切れておらず、谷口も「チャンスを外しているシーンはもちろん見ている」。ただ、「もし1本入っていたらと思うと、1-0や2-1ではなくて、もっと点差が開いていたかもしれない。そこは結果論で、僕はあまり気にしていない」と警戒を怠らない。

「そこ(決定機)に至るまでの崩しの質、個の能力も含めてレベルが高いので、そこは個人としてもそうだし、チームとしてもやらせないようにすることは、間違いなくやっていかなければいけないと思います」

 では、どう守るか。オランダは4-3-3を基本システムとしているが、試合の中で柔軟に形を変えてくる。とりわけ攻撃時はフレンキー・デ・ヨングが左センターバックのフィルジル・ファン・ダイクの左脇に降りて、擬似的な3バックを形成してビルドアップの安定を図る。

 そこに日本代表が「付け入る隙」を見いだせるかもしれない。まずは前線から激しくプレスをかけにいき、擬似3バック、特にデ・ヨングから中央を経由しての組み立てを寸断する。そのうえでボールをサイドに誘導し、高い位置を取るオランダの両サイドバックに対して日本の両ウイングバックが厳しく寄せてボールを奪う。そこからは相手サイドバックの背後にできるスペースを活用したショートカウンターが有効になりそうだ。

 日本の左ウイングバックで先発出場の有力候補となる中村敬斗は「(今年3月の)イングランド戦をイメージできたらいいかなと思います。カウンターで1本刺せれば勝てるはチャンスあると思うし、いい試合ができるのではないか」と、金星を収めた一戦を参考に攻略のイメージを膨らませていた。

「オランダはもちろん攻撃がストロングポイントで、ボール持たれる時間が長くなる可能性も高いと思うので、しっかり相手の攻撃をつぶしてまず守備から入る。フワッと入らずにしっかり守備から入るのはチーム(の意識)としてあるので、そこは誰しもが思っているし、僕個人としては攻撃のためにエネルギーを溜めることは全くない。守備でまずやらせなかったらいいかなとは思います」

 右ウイングバックや2列目シャドーでの起用が想定される伊東純也も「強豪国相手だとボールを持たれる時間も長くなると思うので、イングランド戦みたいな奪って素早いカウンターが大事になる」と、スタッド・ランス時代に同僚だった中村と同じ意見を持っていた。

 ボールを奪った後の速攻においては伊東のスピードが活きてくるはず。ウイングバックでもシャドーでも「(自分たちが)ボール持っているときはなるべく逆サイドなど幅広く顔を出して、守備になったらコンパクトにしたい。コンパクトにしている分、素早いコンビネーションからのカウンターは出しやすいと思っています」と、ゴールまでの道筋をはっきりと描いていた。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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