弾道測定器から「運営を助けるツール」へ進化 『トップトレーサー・レンジ』が創る練習場の未来像
ひたすら球を打つだけの場所だった練習場に付加価値を与え、ゴルファーにとって弾道測定器が身近になる。同社はそんな新しい文化の礎を築いたと言える。そして同システムは今、単なる弾道測定器ではなく、練習場の経営を支える新たな商材に進化した。
そこで、『トップトレーサー・レンジ』導入1号店の横浜旭ファミリーゴルフ(横浜市)など5つの練習場を運営する、ライフ白銅のゴルフ事業部長・石川博之氏を徹底取材。同システムがいかにしてここまで成長し、どのように経営戦略に活かされているのか? その歩みを聞いた。
御社は『トップトレーサー・レンジ』の導入1号店で、今では効果的に集客に活用していますが、1号店ならではの色々なエピソードがあったかと思います。
「そうですね。酸いも甘いも色々ありましたね(笑)。それをGDOさんと一緒に都度解決して今に繋がっていると思います」
その辺りも含め、まずは導入の経緯を教えて下さい。
「最初のきっかけは2018年頃でしたか。GDOさんと当時の当社事業部長との会談がスタートだったと聞いております。その後、アメリカのトップゴルフを視察し、これまでにないシステムに可能性を感じてその年の秋に横浜旭ファミリーゴルフで試験導入をすることになりました」
具体的にどういう点に可能性を感じたのでしょうか?
「まず従来の練習場では、弾道の軌跡をトレースしてすぐにグラフィック化できるシステムはありませんでした。横浜旭ファミリーゴルフはネットまでが150ヤード程度なので、その先の弾道がどうなっているかが分かりません。これが可視化できるのは顧客サービスの面でも非常に良いと思いました」
確かに100ヤード前後の練習場も多いですからね。
「はい。それとバーチャルゴルフができる点も魅力的でした。というのも、今までの練習場はあくまでもゴルフ場でのプレー前に『練習するだけ』の場所でした。ところがバーチャルゴルフでプレーの疑似体験ができる。練習場がいきなりゴールになるというか、練習場のあり方が変わると思ったんです」
バーチャルゴルフはインドアでしかできなかった。これが屋外の練習場でできるのは当時画期的でした。
「何よりも、ただ弾道測定するだけではなく、施設の付加価値や集客面で様々な使い方ができるツールだと感じました」
それで導入後すぐに『トップトレーサー・レンジ』を集客に活かしたということですね。
「ところがそうもいかなかったんです。お客様も勝手に使うと別料金がかかるのではと思っている方が多かった。そこで営業開始前に『トップトレーサー・レンジ』を全打席フリー計測モードで立ち上げておき、お客様が何もしなくても自動で弾道が出るようにして、まずは認知して触れてもらうことに注力しました」
「もう一つの問題は、実は弾道測定のクオリティが今イチだったという点です。今でこそ計測率95%ですが、当時は100球中、測定できない弾道が結構多くて、横幅の誤差も10数ヤードということもありました。これがお客様からクレームになりましてね。後に左右の誤差は目標ターゲットを正しく設定できていないことも原因だと分かったのですが、当時はマニュアルも存在せず説明する術がなかった。GDOさん経由で現場の声を上げてもらっていましたが、その先はスウェーデンのメーカー本社なので対応するにも時差がある。当時は大変でした」
それをどうやって変えていったのですか?
「GDOの担当者の方が頻繁にヒアリングに来てメーカーに掛け合ってくれました。徐々に機器の精度も改善されましたし、24時間メール対応と、電話対応(8時~17時)もできる日本専用のサポートデスクも作ってくれました」
『トップトレーサー・レンジ』を活用した集客戦略
「時間限定で『トップトレーサー・レンジ』を使ったニアピンタイムを作りました。BGMを流してプラカードを首から下げてアナウンスしながら打席を歩くんですよ。それと『トップトレーサー・レンジ』のバーチャルコースを紙に書き出して、100切りしたコース数に応じて賞品をプレゼントする『100切り選手権』という企画をやったり。
担当営業さんと『トップトレーサー・レンジ』を使って何ができるか常に考えていましたし、GDOさん側でも企画を作ってくれて、沢山の販促品を協賛してくれました。特にGDOのECで使えるクーポンに関しては2000円分を数百セット協賛してくれてお客様からも好評でした」
その辺りは物販もできる同社ならではですね。
「後に『トップトレーサー・レンジ』アプリとGDO会員の連携が始まった時には人も派遣して、店舗内で一緒に呼びかけもしてくれました。GDOさんの本部でもテレビコマーシャルや、ゴルフアニメとのコラボなどを通して外部訴求してくれたこともあり、徐々に認知されていって、お客様からも『トップトレーサー・レンジを使いたい』という声が増えていきました」
「当時は前例がありませんでしたからね。でも今は『トップトレーサー・レンジ』の導入施設数も140以上になったので、GDOさんがほかの練習場の活用法や成功事例を教えてくれるので助かっています。これから新たに『トップトレーサー・レンジ』を入れる練習場は、蓄積されたノウハウをすぐに活用できるので非常にやりやすいと思いますよ」
最近の『トップトレーサー・レンジ』に対するお客さんの声と、導入後の売上や集客の変化はどうでしょうか?
「やっぱりお客様からは飛距離が分かるのが嬉しいという声が多いですね。今は距離計を使う方が多いので飛距離を把握するのが当たり前になっていますから。『トップトレーサー・レンジ』がついてない練習場だと意味がないというお客様もいるくらいです。
実際に来場促進にも寄与してくれていて、横浜旭ファミリーゴルフは導入後に2回、岩槻ファミリーゴルフも1回値上げしましたが来場者数は増えています。特に横浜旭は、私が現場マネージャーを務めていた2019年~2020年末まで24か月連続で売上は前年同月比プラスでした」
それは驚異的な数字ですね。コロナの練習場バブルが2021年からなので、その前に成果を出していたことになる。
「その意味でも『トップトレーサー・レンジ』の影響はかなり大きかったと思います。2020年12月には岩槻ファミリーゴルフにも『トップトレーサー・レンジ』を導入しましたが、岩槻は1打席で2人まで利用可としているので、若いグループに好評で、バーチャルゴルフの利用率は30%以上です。全体の平均は15~20%程度だと聞いているのでかなり多いと思います。ちなみに横浜旭は平均30%、加須は35%以上のバーチャルゴルフ利用率です。3場全体で20代から30代のお客様が数年で約15%増えたので、『トップトレーサー・レンジ』がちょうど時代にマッチしたんだと思います」
若年層のゴルファー創造は業界にとって長年の課題です。それができたのは大きいですね。加須ファミリーゴルフについてはどうですか?
「加須は2023年11月のリニューアルと同時に『トップトレーサー・レンジ』を導入したのですが、『トップトレーサー・レンジ』アプリとの連動率を上げたかった。連動することで記録が残るので、また来ようという気持ちになりやすいんです」
「はい。それで考えたのはビンゴカードを作って、例えば『トップトレーサー・レンジのアプリをインストールする』とか、『ニアピンモードを使う』といった形で、何かしら『トップトレーサー・レンジ』に絡めるお題を書いて、達成したらスタンプをあげる。ビンゴを達成するとレンジの割引券をプレゼントするという施策をやったんです」
アプリの利用率も上がるし、割引券でリピーターにも繋がる。
「実際にアプリログイン率は40%以上で、ログインして使ってくれたお客様の月間平均利用回数が2.9回まで伸びました。他店舗の平均は2.4回とのことなので効果があったと思います。それと当時、『トップトレーサー12』というモードがリリースされたタイミングで、その利用率を上げたかった。GDOさんも施策をサポートしてくれて、同モードの利用率は通常(10%前後)の3倍の30%まで上がったんです。
『トップトレーサー・レンジ』は多くのモードがあるので、それを効果的に使ったイベントをやることが集客には最も重要だと私は思っています。実際に横浜旭のお客様からは『いつも混んでいて待たされるけど、トップトレーサー・レンジのイベントが楽しいから来ています』と言っていただけたんです」
それは成功事例ですね。
「はい。特に多いのが、バーチャルゴルフとニアピンのイベントが楽しいという声です。ちょうどGDOさんが『トップトレーサー・レンジマスターズ』という企画をやってくれているので、それと交互で当社でもバーチャルゴルフを活用したイベントを実施予定です」
導入施設と二人三脚 『トップトレーサー・レンジ』で運営サポート
「その点はお客様からの『日本のコースを増やしてほしい』という声を受けて、GDOさんも以前からずっと本国と交渉してくれていました。その甲斐もあり、最近ようやく川奈ホテルGC富士コースが追加になりました。名門コースなのでコース側の要望を調整するなど苦労したようですが、現場の声を反映して動いてくれたと思います」
GDOは導入店の運営サポートにも注力していると聞きます。その辺りはどうですか?
「先程、導入当初は測定のクオリティが今イチだったという話をしましたが、今ではお客様からもそういった声は全くなくなりました。『トップトレーサー・レンジ』はカメラで弾道測定してデータを出すのですが、カメラの設置方法や角度を細かく研究してくれて、今では設置技術と測定精度が確立されています。それと目標のフラッグに『シックフラッグスティック』というツールを配置して撮影精度を上げてくれるなど、日々アップデートしようという姿勢が見て取れます。詳しいマニュアルも作ってくれているのでこれからの導入施設は安心できる体制になっていると思います」
「以前はGDO主催の『トップトレーサー・レンジ』イベントが唐突に行われることがあったのですが、今では年間のイベントスケジュールを共有してくれるので、当社も独自イベントの計画を立てやすい。常に何らかの『トップトレーサー・レンジ』イベントをやっている状態を作れば、お客様を飽きさせずに済む。
それに毎年GDOさんが『トップトレーサー・レンジアワード』というものを企画して、『トップトレーサー・レンジ』を活用している練習場を表彰してくれるんです。加須も2024年、2025年と2年連続で表彰されて海外旅行に招待してくれました。2025年の表彰に関しては、2階打席を全て開放してジュニア向けのゴルフ体験イベントを企画したんです。これが市と市の教育委員会に評価され後援してくれたことで、当日は93名のジュニアが集まってくれた。しかもほとんどがゴルフ未経験者で、『トップトレーサー・レンジ』を使って初めてのゴルフを楽しんでもらえました。GDOさんもジュニアクラブや人手を派遣してサポートしてくれましたし、アワードではこういった『ゴルファー創造』という点もしっかり評価してくれるので施設のモチベーションにもなります」
それは素晴らしい。
「それと最も助かるのは、『トップトレーサー・レンジ』に蓄積された顧客動向データを元にGDOさんが施策のアドバイスをくれる点ですね。『トップトレーサー・レンジ』とGDOの連携データから確度の高い分析ができる。例えば当店の来場客の居住分布図から正確な商圏や、平日と土日の客層の違いも把握できるので戦略立案がしやすい。加須の例で言うと、今までは客単価の高い南の地域からいかに集客できるかが重要だと思っていたのですが、データを見たところ実は客単価の安い北の地域からも集客できていることが分かったんです。つまりイベントの内容が良ければ集客できるという根拠にもなり価格勝負に頼らなくて済みます」
最近はICカードなどの顧客データから効果的な施策を打つ練習場が増えていますが、ICカード未導入の施設にとっては『トップトレーサー・レンジ』が分析を担ってくれるのはメリットですね。
「はい。ハードだけではなくソフト面もサポートしてくれる。担当の方と意思疎通と情報交換ができているのでとても助かっています。それにスタッフがイベント立案を頑張ってくれています。正直、イベントって手間もかかるし大変なんです。でも先程言ったようにデータでその効果が実感できるので、スタッフの頑張りも報われていることが分かるし、モチベーションアップにも繋がる。『トップトレーサー・レンジ』はそんな効果もあると思いますね」
現場が色々考えるきっかけになる。つまり人材の教育と成長にも繋がるツールということですね。
「競争」から「協業」へ
「これは個人的な見解ですが、私はそうは思いません。導入店が増えれば『トップトレーサー・レンジ』を知ってもらえる機会が増えます。当練習場の若いお客様が増えた例からも分かるように、『トップトレーサー・レンジ』は非ゴルファーに刺さるツールなんです。と言うのも今まで練習場ってただキツイ場所だったじゃないですか? 例えば上手くなるためにアプローチを1000球打たなきゃいけないとか」
トラック一杯球を打てとか。若年層にはただの苦行ですよね。
「それが『トップトレーサー・レンジ』ならゲームを楽しみながらアプローチ上達できますよと。これが若い層にマッチする。苦を伴う場所から楽しい場所に練習場を変えたと思うんです。だから導入店が増えれば、ゴルファー全体のパイを増やせる。パイが増えれば当然、各施設のお客様も増える。むしろ施設ごとにイベントの特色を出しやすくなり、各練習場がカラーを出せるようになると思うんです」
『トップトレーサー・レンジ』導入店同士でいがみ合っている場合じゃないですね。
「例えば横浜スパークゴルフクラブさんと、当社の横浜旭ファミリーゴルフは同一商圏で、共に『トップトレーサー・レンジ』導入店ですが以前から仲良くやらせてもらっています。仮に競合に『トップトレーサー・レンジ』が入ったとしても、GDOさんが間に入ってくれてむしろ挨拶のきっかけになる。合同でイベントもできますし、双方で盛り上げられると思います。『トップトレーサー・レンジ』で練習が楽しいと思ってもらえれば、ゴルファー全体の練習場への来場頻度が伸びる。これからは『競争』ではなく『協業』して一緒に上がっていく必要があると思いますね」
業界を俯瞰した視点です。ありがとうございました。
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