長友佑都の特注ヘッドバンド、南野拓実のスピーチが空気を変えた そして日本代表の左シャドー問題にも解決策が!?

舩木渉

鈴木唯人(手前右)は6月7日の練習試合で約1ヶ月ぶりの実戦復帰を果たした。W杯の舞台で左シャドーの有力候補になるか 【写真は共同】

心を揺らした南野拓実のスピーチ

 午前10時半の段階で気温は30度を超え、ジリジリと照りつける日差しが容赦なく体力を削ってくる。6月10日(現地時間、以下同)、快晴のナッシュビルで日本代表が14日に迫った北中米ワールドカップ(W杯)グループステージ初戦のオランダ戦に向けた本格的な準備に着手した。

 ナッシュビルSCの練習場で行われた初めてのトレーニングには28選手が姿を見せ、負傷中の南野拓実を除く27人がボールを使ったメニューに参加。左足の違和感で別メニュー調整が続いていた遠藤航もスパイクを履いて合流し、途中で「確認」のために全体練習から外れたという。

 トレーニング開始前のロッカールームでは、南野がチームメイトに自らの想いを伝えた。鈴木彩艶によれば「拓実くんらしく、みんながパワーをもらえるような、笑顔が出るようなコメント」だったとのこと。他の選手たちも一様に、負傷により2度目のW杯出場を断念せざるを得なくなった仲間の言葉に心を動かされたようだ。

 スピーチに関しては「出られない選手が僕たちをしっかりと全力でサポートする」「初戦が大事。死ぬ気でやらなあかん」「チャレンジャーとしてやっていこう」といった内容が断片的に伝わってきているものの、全貌は分かっていない。それでも南野の想いはチームメイトたちの心に響いている。鈴木彩艶はこう言っていた。

「拓実くんは練習も見てくれていましたけど、ところどころで戦術的なコメントや雰囲気的なコメントもしてくれたので、本当にみんなの気が引き締まる感覚があった。本当に素晴らしい選手が入ってくれたなと、あらためて思います」

南野拓実はいつも笑顔で練習を見守る。ロッカールームでは言葉でチームに直接語りかけ、勇気を与えた 【写真:舩木渉】

 大迫敬介も南野のチームに尽くす姿勢には感銘を受けているようだ。「拓実くんには僕らに想像できないほど悔しい気持ちがあると思います」と長く共に戦ってきた先輩に思いを寄せつつ、さらに続けた。

「それでも僕たちをしっかりと支えると発言できる。やっぱり自分たちが彼の分までやらないといけないという気持ちになりました。彼がこのチームを引っ張ってきたからこそ、(今回は)メンターとして(の帯同)ですけど、このチームに関わっている意味は大きいと思います」

 W杯前最後のオフを挟んで再始動するタイミングでチームに対して声をかけたのはなぜか。2022年のカタールW杯を経験している南野は、自らの経験を踏まえて直前のここからさらに一段階ギアを上げていかなければならないことを意識させたかったのではないだろうか。

過去4度の経験を踏まえて…

長友佑都は6月10日の練習に背番号「5」と日の丸をあしらった特注ヘッドバンドを着けて登場。自分にもチームにも気合いを注入した 【写真:舩木渉】

 練習の雰囲気はいい意味でこれまでと変わらない。適度な緊張感がありつつ、落ち着いていて、大舞台を前に浮き足立っている印象はない。報道陣に公開された冒頭15分間のウォーミングアップでは笑顔も随所に見られていた。その後の戦術練習ではモードが切り替わり、集中して、妥協を許さない空気感があったはずだ。

 しかし、5度目のW杯出場となる長友佑都はさらに研ぎ澄ませていく必要性を感じていた。

「もう一段、二段、引き締められる感じがしているんです。今日もいろいろな練習をやりましたけど、最後にすごくガッと締まったいい練習ができたんですよね。もちろん環境が変わって、暑さもあるんだけど、そんなのはもう全く関係ない。W杯が来る。目の前なんでね。

 4年間かけて僕らはここに来たし、カタールW杯であれだけ悔しい思いをしてここに来たことを忘れてはいけない。もう一度、一人ひとりがあの時の映像を見直した方がいいと思いますよ。僕も含めて。それくらい目の色を変えないと。相手も目の色を変えてくるんでね。(カタールW杯で)優勝したアルゼンチンはすごかったですよね。目の色を変えて。あのくらいの覇気を出していかないと、やっぱり優勝はできないですよ」

 長友は10日の練習に日本から持参した、日の丸と背番号の「5」が刻まれている特注のヘアバンドを着けて参加した。「タイミングは全然考えていなかった。ナッシュビルに入って、W杯の熱量と、いよいよ感が出てきたので、ちょっと気合いを入れて今日着けたかった」というが、かつて2018年のロシアW杯直前にいきなり金髪で練習場に現れたように、チームの空気を変えようという意図があったのは間違いないだろう。

「ブラジルW杯の前は順調に4年間進んでいった。あの時もフランスやアルゼンチンに勝ったし、ベルギーにも勝って、自信を持っていた部分が実際は過信だったということに終わってから気づくところがあった。ロシアW杯や南アフリカW杯、カタールW杯の時もけっこう叩かれていたじゃないですか。チームがうまくいかなかったし。そういう時の方が引き締まりやすいのは人間的にあるんだけど、(うまくいっているからこそ)ここでもう一度引き締めないといけないなと感じています。練習から多少のケンカになってもいいくらいにぶち当たり合える関係、そういう必死さがこのチームには大事になってくるなと思うので」

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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