アイルトン・セナ不滅の6勝 モナコで勝つのはいかに難しいか

柴田久仁夫

アントネッリの歴史的勝利

モナコ6勝のうち最も感動的だったのが1992年の勝利だった 【Photo by Sutton Images】

 モナコは、いったん荒れ出すと止まらない。先週のレースが、まさにそうだった。2回のセイフティカー導入、赤旗中断、マックス・フェルスタッペン、シャルル・ルクレールら、優勝候補が次々に姿を消す波乱の展開。タイトル争いで崖っぷちに立つジョージ・ラッセルも、入賞圏外に消えた。そんな中、キミ・アントネッリだけは少しの揺らぎも見せず、堂々のポール・トゥ・ウィン。19歳でのポールポジション獲得と優勝は、いずれもモナコGPの最年少記録だ。

 レース終了直後、2位に入ったルイス・ハミルトンが真っ先にアントネッリに歩み寄り、勝利を祝福した。現在41歳のハミルトンが、18年前の2008年に23歳でモナコを初制覇したのが、これまでのレコードだった。アントネッリはそれを大幅に更新したことになる。

モナコで勝つことの難しさ

F1で105勝を挙げたハミルトンですら、モナコでは3回しか勝てていない 【(C)MercedesF1】

 モナコで勝つことは、「他のGPの3勝分の価値がある」と言われる。モナコでは、ドライバーのあらゆる技量が試されるからだ。

 エスケープゾーンがほとんどなく、ガードレールの迫る狭いコースは、ほんの些細なミスが即リタイアにつながる。それでもミリ単位でガードレールを攻めなければ、予選で上位グリッドを取ることはできない。コース上の追い抜きはほぼ不可能だから、グリッド順がレース結果に直結するのだ。

 それでも今年のように、数年ごとに大荒れのレース展開がやってくる。その状況で78周の長丁場を走り切るには、精神的タフさに加えて運の良さも必要だ。ちなみに予選順位が絶対視されがちなモナコだが、実は2000年以降ポールシッターがそのまま優勝できたのは16回にとどまる。本人のミス、チームのお粗末な戦略、不運なメカトラブルに見舞われ、勝てたはずのレースを落としている。モナコで勝つことの難しさの、ひとつの証左であろう。

 通算105勝と、F1で最も多く勝ってきたハミルトンでさえ3勝、マックス・フェルスタッペンは2回しか勝てていない。しかし一人だけ、モナコで突出した結果を出したドライバーがいる。アイルトン・セナである。生涯41勝のうち、モナコだけで6勝。5回のポール獲得記録も、いまだに破られていない。モナコで最も速く、最も多く勝った男、それがセナだった。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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