菊池、誠也、大瀬良、田中...「3連覇」の中心選手を続々獲得 元広島スカウト部長が明かすドラフト秘話
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「1位」という声もあった菊池涼介
3年のときに「おっ!」と思って、それからは公式戦をほぼ全部見ています。4年の春には他球団に先駆けて「野村1位」を公表もしました。地元の広陵出身だから指名したとか、地元の選手を優先して指名しているとか思われるかもしれませんが、そうではありません。むしろ逆で「地元の子は可哀想だから獲らないようにしよう」と思っていた時期があるくらいです。地元出身の選手はちょっと成績が悪いと球場で野次られたり、叩かれることが多いのです。そういうプレッシャーを受けるのがちょっと可哀想で、地元の選手を避けている時期もありました。ですから野村を1位でいったのは単純に実力評価。単独で獲れたのは幸運でしたね。
この年は東海大に菅野智之(日本ハム1位拒否・2012年巨人1位/現・ロッキーズ)、東洋大に藤岡貴裕(ロッテ1位)もいて『大学生BIG3』と言われていましたね。菅野は高校時代から見ていましたが大学で大きく伸びました。特にスライダーが良くなった。でも大田のときと同じで本人は巨人に行きたがっている。スカウトの長谷川君と監督の辰徳もおるし、カープは最初から獲りには動きませんでした。藤岡も評価は高かったですがコントロールにちょっと難がありました。経験上、左でコントロールが悪いとプロで直すのはなかなか難しいものなんです。
2位が中京学院大の菊池涼介。担当の松本(奉文/現・有史)に「見てください」と言われて一緒に行きました。ショートの梵が30歳を超えていましたし、この年は膝も怪我をしていたので球団としては後釜になるショートが欲しかった頃です。
菊池の守備は打った瞬間の一歩目が速くて守備範囲が広い。打ってから動くのではなくピッチャーが投げるコースを見て、打球が飛んでくるであろう方向に自然にスーっと動ける。このレベルの守備ができる選手はなかなかいません。打つ方でも評価が高かったですね。体は小さいですがリストが良いからプロに入っても毎年10本はホームランを打てると思っていました。
このクラスの選手なら他球団も来るだろうなと思っていましたし、球団内では「1位でいきましょう」という声もありました。この年のカープは2位の指名順が4番目でしたから3位ではまず残っていません。それでいろいろと調査もして「2位なら獲れる」と判断しての指名になりました。
1年目にセカンドの東出が怪我をしたこともあってセカンドにまわると、そこからあっという間に球界を代表する名手になりました。元々ショートからの送球が少しシュート回転気味でしたから、菊池にとってもよいコンバートになったと思います。
日本ハム4位の横浜の近藤健介(現・ソフトバンク)は、今や日本を代表するバッターですがカープではそんなに名前が挙がっていた記憶はありません。高校のグラウンドに見に行きましたが確かにバッティングは良かったです。でもキャッチャーとしては正直厳しいとも思いました。「じゃあどこを守るの?」ということを考えると、セ・リーグ各球団はなかなか評価がしづらかったと思います。カープは野手を獲るときは足があるか、俊敏性があるかを重視しますから、カープ好みの選手ではなかったというのはありますね。
担当スカウトが惚れ込んだ鈴木誠也
でもピッチャーとしても160キロを超えるボールを投げる。岩手で見たときは私のガンでも161キロでした。速いだけのピッチャーはいますが大谷のボールは打者の手元でピュッとくるキレもある。ピッチャーとしても凄いなと思いましたね。
今年はメジャーでの防御率がここまで(取材時点)0点台で1位でしょ? これはちょっともう考えられない選手ですよ(笑)。もしも大谷が国内志望だったらカープも1位でいったでしょうね。でも『二刀流』はやらせていないと思います。そう考えると、日本ハムに指名されるべくして指名された、大谷にとって一番良い球団に指名されたということでしょうね。
同じ高校生に大阪桐蔭の藤浪晋太郎(阪神1位/現・DeNA)もいました。球は確かに速かったです。でも今と同じように抜けたボールが右バッターの頭付近にいったり、ちょっとどこにいくか分からない所があって1位でいくのは少し怖いなと思いました。彼の荒れ球を怖いと見るか、個性と見るかは球団によって考え方が分かれたと思います。
藤浪は今は苦しんでいますけど、プレッシャーのキツい阪神で高卒1年目から3年連続で二桁勝った。そんな投手はなかなかいません。1位の評価は正しかったということですね。
この年のカープはマエケンが14勝して、野村も新人王を獲って、今村も救援で活躍するなど、若いピッチャーがどんどん出てきていた時期でした。ですから1位は無理に即戦力を狙う必要がなく、素材の良い高校生ピッチャーでいきたいという考えがありました。その結果、カープは大谷でも藤浪でもなく東福岡の左腕・森雄大でいきました。担当の田村(恵)が推していましたし、やっぱりカーブが良かったですからね。でも楽天と競合して外して、「残っている中で一番良いピッチャーでいこう」とNTT西日本の増田達至を指名したら西武と競合してまた外れ。
「こういうときは野手でいこう」と思い切って方向転換して、外れの外れで龍谷大平安の髙橋大樹でいきました。髙橋はバッティングも肩も良かったんです。厳しい高校で鍛えられて、家庭の教育も結構厳しかったと聞いていました。でもカープの厳しい練習にはちょっとハマらなかった。もっとできるだけの能力はあったんですけどね。
2位が二松学舎の鈴木誠也(現・カブス)です。高校時代はピッチャーでしたが、評価したのはもちろん打つ方。ピッチャーとしては全然評価はしていませんでした。足はあるしバットも振れる。投げ方も良いし、鍛えれば内野ができると思いました。
担当の尾形(佳紀)は誠也に惚れ込んでいましたよ。夏の大会が終わった後にすぐに学校に行って「ショートをやらせてください」と監督さんにお願いして、練習をさせてもらっていました。
誠也のバッティングは懐が深くてボールを運べる、大きいのが打てる。「練習の虫」というのもいかにもカープ好みの選手でした。
前年にショートのつもりで獲った菊池が早々にセカンドに移っていましたから、球団としてはポスト梵、ショートがやっぱり欲しかったのですが、誠也は高校時代にショートでの実績は全然ない。それでも尾形が「ショートを守れます!」と野村(謙二郎)監督に言ってね(笑)。
ショートなら光星学院(現・八戸学院光星)に北條(史也)もいて、私は好きなタイプの選手で評価もしていました。でも先に阪神に指名されましたし、尾形が強く推していましたから2位は誠也でいきました。誠也のその後の活躍は言うまでもありません。担当した尾形の慧眼が光りましたね。
プロ入り後はショートをやっていましたが、まぁあんなもんです(笑)。3年目に外野にコンバートされて、4年目に本格化しました。体つきも最初はヒョロッとしていたのが段々プロレスラーみたいになってね。
とにかくよく練習をする選手でしたね。チャンスで打てなかったときなんかは、マツダスタジアムの室内練習場で深夜2時くらいまで黙々と打っていました。古くは高橋慶彦、山崎隆造、その後は金本知憲、新井貴浩、丸佳浩。みんな猛練習で上手くなりました。最近のカープにここまで練習する選手がいないのが寂しいですね。