日本サッカーを染めて20年の「ミシャ式」に陰りなし 68歳の指揮官が名古屋で今なお見せる攻撃的スタイル
ミシャ式の「行間」を詰める
「本当に勇敢なトライをしたハーフシーズンでした。目の前にあるものをつかみきれなかった悔しさもありますけど、トライした中でつかんだもの、さらに高めなければいけないものが明確に分かったシーズンでした。次のシーズンに向けて、やるべきことを整理できました」
来季の路線は当然ながら継続で、選手の大きな入れ替えもない。
「基本的にはもう、このスタイルの浸透です。より深めていく、高め合っていくことが主題となります。(選手の入れ替えも)ほとんどないと思います。選手によって『出場機会を求めて』というところはあるかもしれませんが、我々が新しい人をどんどん入れる感覚はまったくありません」
もちろん失点は少ないほうがいいし、守備のテコ入れは必要だろう。ベテランFWの永井謙佑はこう指摘する。
「『負けているときはそのシチュエーション』という(似た)負け方が多いので、そこを個々の選手が感じながら、どう自分にフィードバックして連携を高めるか(が大事)。監督の美学は分かっているけど、失点するとプランも崩れるし、(シーズンの)最後は連続失点するシーンが多かった」
ただ、そこは監督が旗を振るところではないのかもしれない。服部SDはこう口にする。
「守備も実はスタッツ上で『奪う』といったポイントは上位陣と変わらないレベルです。最後の2試合は(2つの大敗の)反省を生かした戦い方もできているし、トライ&エラーをしながら落ち着いてきています。よく選手が言うのは『ミシャさんの言っていることにただ従うだけでなく、行間を俺たちで詰めていかなければいけない』という内容です。守備の『グレーゾーン』と言いますか、マンツーマンだけどサポートしなければいけないとか『セオリー以外の部分をどう埋めていくかに』僕はすごく可能性は感じます」
大きな補強はなさそうだが、上積みを期待できないという意味ではない。例えば負傷で戦線から離脱しているマテウス・カストロ、マルクス・ヴィニシウス、小屋松知哉らの復帰はチームにとって確実にプラスだろう。
服部SDはこう強調する。
「試合の出場機会が少なかった選手も、チャレンジし続けてくれています。キャンプのトレーニングによって、今季の反省を生かしたものがどんどん積み上げられ、より深まっていくことも楽しみです。(2026-27シーズンの)目標はもちろん優勝しかありません」
ミシャ色に染まった日本サッカー
相手チームや審判に対してときに辛辣な指摘もするタイプだが、「炎上」は起こらない。「ミシャさん」は不思議と許される。
1957年10月18日生まれの彼はJリーグ百年構想リーグ終了時点で全60クラブの最年長監督で、J1通算指揮試合数は「594」は長谷川健太氏に次ぐ2位(編注:2025シーズン終了時点)。ピッチ上の戦績だけでなく、オフピッチも含めて人間関係を円満に築く能力があるからこそのキャリアだろう。
日本代表の森保一監督も広島でミシャのもとコーチを務め、後任監督も務めた「フォロワー」の一人だ。
ミシャの賞味期限は、彼がJリーグ最年長監督になっても、初来日から20年が過ぎた今もまだ切れていない。それどころかJリーグの各クラブはこのスタイルを克服しようとしているうちに、気づくと彼の色に染められている。ミシャ式に陰りはない。2026-27シーズンも、日本サッカーに強い刺激を与えてくれそうだ。