データ分析から見えてくる「新時代の打順」のセオリー チーム最強打者を“1番”に置くメリットとデメリットは?

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開幕戦で初回初球先頭打者本塁打を放ったDeNA・牧秀悟。「1番・牧」の起用は大きな話題を呼んだ 【写真は共同】

役割や連なりではなく好打者を上位打線に

 プロ野球ファンの間で日夜話題のタネとなるのが打順だ。自身が応援する球団について、「○番には○○を置くべき」、「調子の悪い○○の打順は下げるべき」といった具合に、監督になったつもりで理想のオーダーを思い描くのは楽しみの一つである。

 そして多くの野球ファンの間には、こういった打順にはこういった打者を置くと機能しやすいというセオリーが共有されている。例えば1番には俊足で出塁能力の高い打者、2番は小技のうまい打者、3番は打率と本塁打を両立できる好打者、4番は溜まった走者を返すパワーヒッター、という具合だ。

 だがこのようにかねてより伝えられてきた打順のセオリーにはどれほどの妥当性があるのだろうか。私たちが信じてきたセオリーは効率的だったのだろうか。近年はデータの分析が進み、得点を多く奪うためにどのような打順が効率的かもわかってきた。今回はその新しい時代のセオリーを紹介していきたい。

 データ分析の観点から打順を組むにあたって気をつけたい原則は主に2つある。1つ目は「優れた打者に多くの打席を与える」ということだ。

 まず、現在データ分析の観点からは、打順にはそもそも役割はないと考えられている。従来のセオリーでは打順ごとの役割、または前後の打者の連なりが得点の大小に大きな影響を与えると考えられてきた。実際、2000年代に各チームの4番打者を大量に獲得した巨人が思ったほどには勝てなかった記憶から、同じ役割の打者ばかりを集めても機能しないと考える人も少なくないだろう。

 しかし実際にデータ分析を行うと、役割や連なりよりも、優れた打者にとにかく多くの打席を与え、長打や四球を集中させれば得点は増えていくという事実がわかってきたのだ。要するに1番に俊足、2番に小技……と役割や連なりを考えるのではなく、シンプルに1番から良い打者順に並べるような発想が良しとされる。足の速さなどはほとんど考慮しないのだ。

 優れた打者に多くの打席を回すといっても、実際打順によってどれほど打席数が変わってくるのだろうか。下記表は打順が変わるごとに打席数にどれほどの違いが出るかを表したものだ。まず1試合平均という列から見てみよう。2025年のNPBで、1番打者には1試合平均4.58の打席が回った。これが2番になると4.47、3番は4.38、4番は4.28と、打順が下がるごとに1試合平均の打席数は大体0.11打席ほど減少していく。9番になると1試合あたり3.70打席しか回ってこない。

【データ提供:DELTA】


 1試合単位だとイメージしづらいので1シーズン単位でイメージしてみよう。1番打者は1シーズンあたり655打席。これに対し、最も少ない9番だと529打席しか回ってこない。シーズン全体で126打席もの差が生まれるのだ。同じ上位打線の1番と5番でも差は58打席。それだけの打席数を好打者に与えるとどれほど安打や四球が増えるかは想像しやすいはずだ。上位になるほどこれほどまでに打席数が変わってくるのである。

 実際こういった良い打者に多くの打席を回す作戦を実践しているチームも少なくない。おそらく多くの人の頭に真っ先に思い浮かんだのがドジャースではないだろうか。ドジャースはチーム最強打者の大谷翔平を3番や4番ではなく、1番に配置。最強の打者にとにかく多くの打席を回す作戦をとり、強烈な得点力を発揮している。

 日本のプロ野球でも今季開幕当初に話題になったのが、DeNAの主砲・牧秀悟の1番起用だ。かねてより2007年巨人の高橋由伸など、チーム最強打者が1番を打つケース自体はあった。しかしそれほど足も速いわけではなく従来の1番打者像から外れる牧だけに、印象に残っている人も多いだろう。

 とはいえとにかく優れた打者に多くの打席を回すというあまりにもシンプルな原則に疑問を持った人もいるだろう。1番打者は多くの打席が回る一方、走者を置いた打席は少ない。初回は必ず走者なしでの打席。こういった打席で本塁打が出た場合、ソロになるためもったいない、走者ありの打席が回りやすい打順に置くべきだと考える人も少なくないだろう。

 実際その指摘は妥当だ。以下の表は各打順に走者を置いた打席がどれだけ回ってくるかを表したものだ。1番打者について見てみると、走者なしでの打席割合が67.2%、3分の2以上に及んでいる。ほかに走者なし割合が60%を超える打順はない。

【データ提供:DELTA】

 打席に立ったときの平均走者数を見ても、1番打者はわずか0.46人。1番の次に少ない2番打者でも0.55人であるため、やはり1番打者の打席では走者が少ない。長打力のある打者を置いても、返す走者が少ないためあまり効率的ではないと言えるだろう。ここでは走者の数を紹介したが、打席に入った時のアウトカウントなども考慮するとより精緻に考えることができる。要するに走者数やアウトカウントなど「状況」を考慮するのだ。

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