18歳の主役候補はW杯初戦に間に合うのか? ヤマルの性格を考慮した上での個人的な見解は――
皮肉にも登録メンバーの半数以上が……
スペイン代表の大会登録メンバー26名の発表は、5月25日(現地時間、以下同)にスペインサッカー協会が作成したビデオ映像を通して行われたのだが、そこにスペイン国王のフェリペ6世が登場したのには驚かされた。
映像の中でフェリペ6世が、「スペイン代表がプレーする時、私たちみんながプレーする」と訴え、ウエイター、タクシードライバー、研究者、パン屋、花屋など市井の人々が選ばれた26人の選手の名前を挙げていく。そして、最後に再びフェリペ6世が、「これがスペインの国全体のリスト、スペインの、私たちの国のリストです」と言ってビデオは終わる。
「感動で死にそう」「最高!」「サッカーはなんて素敵なんだ」「ビバ・エスパーニャ(スペイン万歳)!」など、コメント欄にはこの演出を讃えるメッセージも見られたが、個人的には違和感を拭うことができなかった。
フェリペ6世はスペインという国を1つにまとめる象徴として、このビデオに出演しているのだが、現在のスペインは君主制存続の危機に立たされていて、人口全体の51.5パーセントが共和制にすべきだと考えているのだ。また、53.,8パーセントの人々が王室に不満、あるいはそれに近いものを感じているというアンケート結果も出ている(ムルシア大学の学術プロジェクトThe Crownsによる)。
実際、スペインのバスク地方の一部やカタルーニャ地方では、例えばその地がスペイン国王杯の決勝の舞台となり、そこにフェリペ6世が姿を見せてスタジアムに国歌が流れると、たちまちブーイングが起こることが珍しくない。また、それを中継するスペイン国営放送が、音声を消したり、そのシーンだけ映像を流さなかったりすることもよくある。そしてその度にニュースになって、議論が巻き起こるのだ。
皮肉なことに、今回スペイン代表に招集された26人のうち、カタルーニャ出身が9人(ジョアン・ガルシア、エリック・ガルシア、パウ・クバルシ、ラミン・ヤマル、ダニ・オルモ、ダビド・ラヤ、マルク・プビル、マルク・ククレジャ、ビクトル・ムニョス)、バスク出身が5人(ウナイ・シモン、マルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、ミケル・オヤルサバル、ニコ・ウィリアムス)と、反王政派の2つの地方出身者が全体の半数以上を占めている。
かたやスペイン王室と親交の深いレアル・マドリーからは、今回誰ひとり選出されなかった。これはW杯におけるスペイン代表史上初めての出来事だが、もっとも2021年開催のEURO20でも、R・マドリーからは1人もメンバーに選ばれていない。
つまり今回の招集ゼロという事態は、6年以上にわたってこのクラブがとってきた政策が招いた、当然の帰結と言えるのだ。
デ・ラ・フエンテ監督は「間に合う」と明言
FIFAランキング68位のカーボベルデが相手ということもあり、4月下旬に左足を痛めてシーズンアウトとなったヤマル、そして同じく故障を抱えるN・ウィリアムス(5月10日にハムストリングを負傷)は温存するのではないかと、一部のメディアは示唆している。
今回スペインが入ったグループHには、カーボベルデの他に、サウジアラビア、ウルグアイがいるが、本来のスペインの実力をもってすれば、十分に1位通過が狙える。ペップ・グアルディオラも崇めるサッカー界の巨匠、マルセロ・ビエルサが率いるウルグアイは難敵かもしれないが、だからといって、このグループを抜けるのにヤマルの力を必要としなければならないとすれば、それはよほど代表チーム全体のコンディションが悪いとしか考えられない。
ルイス・デ・ラ・フエンテ監督は、ヤマルとN・ウィリアムスについて、「初戦にはきちんと間に合う。もし彼らがプレーしなかったら、それは調子が良くないからではない。私がプレーすべきではないと熟慮した結果だ」と、メンバー発表の時点でそう明言している。
デ・ラ・フエンテ監督にとってこの2人は、特別な思い入れのある選手だ。優勝したEURO24の準決勝でフランス相手に同点ゴールを決めたヤマル、そしてイングランドとの決勝で先制点を挙げたN・ウィリアムス。彼らに、今予選でチーム最多タイの6得点をマークしたミケル・メリーノ(1月に右足を骨折)を加えた3人については、スペインサッカー協会のメディカルスタッフと、バルセロナの担当医であるリカルド・プルナ医師が、チームを組んで怪我の経過観察を行ってきた。