18歳の主役候補はW杯初戦に間に合うのか? ヤマルの性格を考慮した上での個人的な見解は――

山本美智子

今大会の有力な主役候補のヤマルだが、コンディションが整うまで組分けに恵まれたグループステージは温存との噂もある 【Photo by Evrim Aydin/Anadolu via Getty Images】

 スペイン在住がすでに25年以上に及ぶ日本人ライターによる、月2回の連載コラム。レアル・ソシエダの久保建英と、マジョルカで2年目を迎えた浅野拓磨の動向を中心に、文化的・歴史的な背景も踏まえながら“ラ・リーガの今”をお届けする。2025-26シーズン最終回のテーマは、いよいよ開幕が目前に迫った北中米ワールドカップ(W杯)。比較的楽なグループに入ったスペイン代表だが、今、国民やメディアの一番の関心事は、故障を抱える18歳のエース、ラミン・ヤマルが大会の初戦に間に合うかどうかだ。

皮肉にも登録メンバーの半数以上が……

 北中米ワールドカップ(W杯)が目前に迫ってきた。

 スペイン代表の大会登録メンバー26名の発表は、5月25日(現地時間、以下同)にスペインサッカー協会が作成したビデオ映像を通して行われたのだが、そこにスペイン国王のフェリペ6世が登場したのには驚かされた。

 映像の中でフェリペ6世が、「スペイン代表がプレーする時、私たちみんながプレーする」と訴え、ウエイター、タクシードライバー、研究者、パン屋、花屋など市井の人々が選ばれた26人の選手の名前を挙げていく。そして、最後に再びフェリペ6世が、「これがスペインの国全体のリスト、スペインの、私たちの国のリストです」と言ってビデオは終わる。

「感動で死にそう」「最高!」「サッカーはなんて素敵なんだ」「ビバ・エスパーニャ(スペイン万歳)!」など、コメント欄にはこの演出を讃えるメッセージも見られたが、個人的には違和感を拭うことができなかった。

 フェリペ6世はスペインという国を1つにまとめる象徴として、このビデオに出演しているのだが、現在のスペインは君主制存続の危機に立たされていて、人口全体の51.5パーセントが共和制にすべきだと考えているのだ。また、53.,8パーセントの人々が王室に不満、あるいはそれに近いものを感じているというアンケート結果も出ている(ムルシア大学の学術プロジェクトThe Crownsによる)。

 実際、スペインのバスク地方の一部やカタルーニャ地方では、例えばその地がスペイン国王杯の決勝の舞台となり、そこにフェリペ6世が姿を見せてスタジアムに国歌が流れると、たちまちブーイングが起こることが珍しくない。また、それを中継するスペイン国営放送が、音声を消したり、そのシーンだけ映像を流さなかったりすることもよくある。そしてその度にニュースになって、議論が巻き起こるのだ。

 皮肉なことに、今回スペイン代表に招集された26人のうち、カタルーニャ出身が9人(ジョアン・ガルシア、エリック・ガルシア、パウ・クバルシ、ラミン・ヤマル、ダニ・オルモ、ダビド・ラヤ、マルク・プビル、マルク・ククレジャ、ビクトル・ムニョス)、バスク出身が5人(ウナイ・シモン、マルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、ミケル・オヤルサバル、ニコ・ウィリアムス)と、反王政派の2つの地方出身者が全体の半数以上を占めている。

 かたやスペイン王室と親交の深いレアル・マドリーからは、今回誰ひとり選出されなかった。これはW杯におけるスペイン代表史上初めての出来事だが、もっとも2021年開催のEURO20でも、R・マドリーからは1人もメンバーに選ばれていない。

 つまり今回の招集ゼロという事態は、6年以上にわたってこのクラブがとってきた政策が招いた、当然の帰結と言えるのだ。

デ・ラ・フエンテ監督は「間に合う」と明言

EURO24で優勝の原動力となったN・ウィリアムス(右)とヤマルが、ともに怪我を抱えている。彼らのサイドからの仕掛けはチームの生命線だが 【Photo by Alexander Hassenstein/Getty Images】

 そのスペイン代表のW杯初戦は、6月15日のカーボベルデ戦だが、注目されているのは、この試合にラミン・ヤマルが間に合うのかどうかだ。

 FIFAランキング68位のカーボベルデが相手ということもあり、4月下旬に左足を痛めてシーズンアウトとなったヤマル、そして同じく故障を抱えるN・ウィリアムス(5月10日にハムストリングを負傷)は温存するのではないかと、一部のメディアは示唆している。

 今回スペインが入ったグループHには、カーボベルデの他に、サウジアラビア、ウルグアイがいるが、本来のスペインの実力をもってすれば、十分に1位通過が狙える。ペップ・グアルディオラも崇めるサッカー界の巨匠、マルセロ・ビエルサが率いるウルグアイは難敵かもしれないが、だからといって、このグループを抜けるのにヤマルの力を必要としなければならないとすれば、それはよほど代表チーム全体のコンディションが悪いとしか考えられない。

 ルイス・デ・ラ・フエンテ監督は、ヤマルとN・ウィリアムスについて、「初戦にはきちんと間に合う。もし彼らがプレーしなかったら、それは調子が良くないからではない。私がプレーすべきではないと熟慮した結果だ」と、メンバー発表の時点でそう明言している。

 デ・ラ・フエンテ監督にとってこの2人は、特別な思い入れのある選手だ。優勝したEURO24の準決勝でフランス相手に同点ゴールを決めたヤマル、そしてイングランドとの決勝で先制点を挙げたN・ウィリアムス。彼らに、今予選でチーム最多タイの6得点をマークしたミケル・メリーノ(1月に右足を骨折)を加えた3人については、スペインサッカー協会のメディカルスタッフと、バルセロナの担当医であるリカルド・プルナ医師が、チームを組んで怪我の経過観察を行ってきた。

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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