北中米W杯48チーム徹底分析「森保ジャパンの勝算は?」

事前準備は日本にアドバンテージ! カギは3戦目のターンオーバー 識者によるW杯開幕直前座談会【大会展望編】

構成:YOJI-GEN

スウェーデン戦はメンバー入れ替えが理想

プレーオフを制して辛うじて本大会進出を決めたスウェーデン。6月1日に行われたノルウェーとの親善試合では1-3と完敗 【Photo by Mateusz Slodkowski/Getty Images】

――佐藤さんは、グループステージ突破のシナリオをどう描いていますか?

佐藤 2人と同じですね。基本的に勝ち点4が突破のラインだと思いますが、僕は最初から3戦目のスウェーデン戦でターンオーバーを使うつもりでいると見ています。それを見越した上で、3月のスコットランド戦もサブ組で戦ったんじゃないかと。状況によっては後半から主力を投入して、なんとか勝ち切らなくてはならないかもしれませんが、そんな無理をしないためにも、やはり1、2戦で勝ち点4を取るのがベストだし、そのための準備もしていると思います。

――過去のW杯で日本代表は初戦にピークを持ってくるような調整をしてきましたが、今大会の日本代表は優勝を目標として掲げています。となれば、多くの優勝候補がそうするように、初戦はセーブして臨むことも考えられませんか?

佐藤 いや、優勝を目標に掲げていますけど、正直、今の日本にはまだ、大会の中盤以降にピークを持っていくような実力も経験もないと思います。今はまだ1戦、1戦勝ち抜いていくしかないし、余力を残して勝ち抜けるほどW杯は甘くない。だから全力で初戦を取りにいく必要があるし、仮に敗れた場合に、そこから3位通過でも大丈夫っていうメンタルに持っていくのは、かなり難しい。

――実際、日本はW杯の初戦を落としながら決勝トーナメントに進出できたことが1度もないですからね。

佐藤 前回大会の初戦でサウジアラビアに負けて、そこから優勝したアルゼンチンみたいな芸当はなかなかできませんから。あのフランスだって、02年の日韓大会では初戦でセネガルに敗れてグループステージ敗退。ドイツだって前回大会の初戦で日本に敗れ、グループステージで姿を消しました。伝統国でさえこうなんですから、やっぱりW杯は甘くないんですよ。初戦必勝の戦い方をすべきだし、その結果として勝ち点1でも御の字だと思います。

舩木 W杯優勝経験国や優勝を現実的に狙える力を持った国は、おそらく大会中に2度ピークを作ろうとします。1度目はグループステージの2戦目以降か決勝トーナメントの最初の試合、そして2度目は準決勝です。なぜかというと、優勝するためにはそもそも決勝に進まなければ話にならないから。

 勝ち上がりの道筋がどうであれ、準決勝にはそこにふさわしい実力のチームが残るので、決勝を見据えて温存しようなどと考えていたら勝てるわけがない。「歴代W杯の名勝負~選」のような記事を見ると、実は決勝よりも準決勝の試合が選ばれているケースが多いんですよね。ただ、現状の日本に最初から準決勝に照準を合わせたピーキングができるかというと、そうではないだろうという考えは景さんと同じで、やはり一戦必勝で歴史を塗り替えていくための準備をすべきだと思います。

竹内 ピーキングに関して言うと、メンタル的には絶対に初戦に勝つことが大事だと思いますが、ただ、コンディショニングにおいては、事前に練習試合を組めなかった調整法からすると、大会が進むにつれて上がっていくという展望は持っているんじゃないかと思います。アイスランド戦前の国内合宿でも、リーグ戦を終えたばかりの選手たちはいったんオフを取り、合流を遅らせました。壮行試合に向けてコンディションを上げていくというより、大会に向けての準備を取った形です。

 確かにW杯は短期決戦ですけど、決勝までの8試合を考えたときに、いわゆるカップ戦的な戦い方ではなく、中4日、5日のスパンで適切なコンディション調整をやり続ける、リーグ戦的な戦い方を想定しているような気がするんです。リーグ戦でも初戦を落とすつもりで戦うチームはありませんが、試合を重ねていくうちにコンディションが上がっていく側面は間違いなくありますよね。初戦にすべてを集約するためにコンディションを上げすぎるのではなく、先を見据えて、負荷管理をきちんとやっていくというチーム作りになっているように思います。この点、日本は昨年3月にW杯出場を決めた後、たくさんテストマッチを行ってきましたが、W杯予選を終えてからあまりテストができなかった他国とでは優先順位が異なるのかもしれません。

――ただ、いずれにしてもグループステージを1位通過でも2位通過でも、ラウンド32の相手はモロッコかブラジルで、3位通過ならフランスと当たる可能性が高いわけだから、厳しい戦いになるのは間違いないですね。

竹内 ラウンド32の組み合せを考えれば、断トツで日本のグループFは死の組です。どこがどう勝ち上がっても、ラウンド32では強敵が待ち構えていますからね。ただ、ラウンド32を抜けたら、A組2位(メキシコ、南アフリカ、韓国、チェコ)とB組2位(カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイス)の勝者か、E組2位とI組2位の勝者とラウンド16で戦うことになる。いずれも2位抜けのチームなので、準々決勝進出、つまり史上初のベスト8に光が見えてきます。

――なるほど、いかにコンディション的に良い状態で強豪とのラウンド32を迎えて、そこを突破できるか。ここが上位進出のポイントになりそうですね。

(企画・編集/YOJI-GEN)

【YOJI-GEN】

佐藤景(さとう・けい/左)

大学卒業後、(株)ベースボール・マガジン社に入社。週刊プロレス編集次長、ワールドサッカーマガジン編集長、サッカーマガジン編集長を歴任し、2022年7月に退社。現在はフリーランスとして活動し、サッカー日本代表、Jリーグのほかスポーツを中心に取材中。近著『ミシャ自伝〜来日19年の足跡と攻撃サッカー哲学』。

竹内達也(たけうち・たつや/右)

1989年生まれ。大分県豊後高田市出身。大学院卒業後、地方紙記者を経て、2017年夏から『ゲキサカ』でサッカー取材をスタートさせた。日々のJリーグ、育成年代取材のほか、18年9月の森保ジャパン発足後から日本代表を担当し、19年のUAEアジアカップ、22年のカタールW杯で現地取材。21年からシャレン!アウォーズ選考委員。VARなど競技規則関連の発信も続けている。

舩木渉(ふなき・わたる/中央)

大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、横浜F・マリノスや日本代表をメインに、海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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