「39歳長友の選出」「塩貝&後藤のダブル抜擢」「ボランチ4人」の謎を解く 識者によるW杯開幕直前・座談会【メンバー選考編】
鈴木淳之介の左WB起用に満足できず?
佐藤 僕は正直、選ばれないだろうと予想していました。森保(一)さんの中で最初から選ぶつもりだったのか、それとも怪我人が増える中で選考のテーブルに載ったのかは分かりませんが、今一番議論になっているのが、長友を戦力として考えているのかどうか、ですよね? 戦力として考えていないという意見の根拠は、予選も含めてほとんど試合に出ていないという事実。でも、これだけ怪我人がいる状況で、ピッチ上での貢献を期待していない選手を呼ぶ余裕なんてないと思うんですよ。
そこで思い出すのは、一昨年にインタビューをしたときの森保さんの言葉なんです。そのとき、森保さんは「(三笘)薫と1対1をやって誰よりも止めるのが佑都なんです」と言ったんですね。だから、今もって長友の1対1の強さは評価しているだろうし、対戦相手にスピードのあるウインガーがいれば、使うかもしれない。それこそ、オランダとの初戦で、(デンゼル・)ドゥムフリースにぶつける可能性もゼロではないと思いますよ。
――振り返れば長友は、2010年の南アフリカ大会ではカメルーンの(サミュエル・)エトー、オランダの(ディルク・)カイト、デンマークの(デニス・)ロンメダールに、18年のロシア大会ではコロンビアの(ファン・ギジェルモ・)クアドラードに張り付きました。その再現もある、ということですね。
佐藤 こうして実際に選出されたことで、そんな使われ方もあるんじゃないかと思い始めています。
――単なるメンターとして呼んだわけではないと?
佐藤 それこそ南野拓実がメンターとして帯同するわけですからね。
竹内 僕は森保さんのメンバー発表会見前に、02年日韓W杯のメンバー発表の映像を見返したんです。そこで(フィリップ・)トルシエ監督が23人のメンバーには「スタメンで出る選手」、「ベンチから出てくる選手」、「プレーしない選手」がいると。それぞれに役割があるんだと、「枠」について明確に言及していたので、「その枠はまだ生きているんだな」と感じたのが、会見の第一印象でしたね。
実際、W杯期間中に選手ミーティングが行われるとなったら、その場にコーチングスタッフが入ることはまずないですよね。長谷部誠コーチは年齢的に選手と近いですが、それでもコーチはコーチ。そういう場にスタッフがいると、「監督にはもっとこうしてもらいたい」といった腹を割った議論ができませんから。長友ならそうしたミーティングの場で重要な発言をしたり、最後に意見をまとめるリーダーとしての役割をこなせる。
でも、僕はW杯の取材経験が前回のカタール大会だけなので、その枠が本当に必要なのか、疑問でもあります。それにもし、本大会で長友を戦力として使うことを想定しているのなら、これまでに試すタイミングはいくらでもあったと思うんです。
――昨年6月のアジア最終予選終了後、国内組だけで戦った7月のE-1選手権を除いて4回8試合のテストマッチがあったわけですから、せめて45分は左ウイングバックとしてプレー機会を与えるべきでしたよね。
竹内 だから、森保さんが長友の招集を最後の最後で決断したのなら、それは今年3月の英国遠征で試した鈴木淳之介の左ウイングバックとしてのプレーに満足できなかったという要因もあるのかな、と思います。鈴木淳之介に足りないのは、縦のスライドの速さ。相手のサイドの選手にフリーで持たれたときに間合いを詰めるスピードが遅く、本職がセンターバックということもあって、そこがあまり得意じゃない。ワンツーで簡単に裏を取られるシーンが1試合に1~2回ありました。
その点で、長友には一日の長がありますし、おそらく代表の紅白戦で堂安律や久保建英にもうまく対応できているという信頼感もあるのかなと。組織を崩さずに目の前の相手をちゃんと抑え込める力がまだあるのだとしたら、使われてもおかしくない。ただ、本当に使うのかなと半信半疑なのが、正直なところです。
佐藤 長友の場合、縦のスライドは難しいかもしれないけれど、間合いを詰めたまま対応する守備は、確かに今の代表でもトップクラスだよね。
竹内 自分の間合いを持っていて、そのなかで奪いにいくなり、あえて持たせて狩るなり、ボール奪取力が高いですから。そこは堂安もうまいし、森保ジャパンのウイングバックに求められるのもそういうところだと思うんです。その意味でも、鈴木淳之介のオプション起用はまだまだなのかなと。
クローザーとして起用されるのは?
だから、もし使うとしたらアイスランド戦(〇1-0)と同じ左ウイングバックの可能性もありますが、3バックのストッパーもあり得るのではないかと思うんです。例えば、スウェーデンは3-4-2-1ですが、突破力があって厄介な2シャドーの(アントニー・)エランガや(ベンジャミン・)ニグレンに付かせて、彼らにボールを入れさせないようにするとか。
竹内 長友の3バック起用はこれまで2試合しかやっていないけど、もしそれが本番で生きるようなことがあったら、かなり熱いね(笑)
舩木 カタール大会のスペイン戦でも、たしか2-1でリードした終盤に冨安健洋を投入して、同じく途中出場だった対面のアンス・ファティを封じ込めましたよね? あれでスペインの勢いをかなり食い止めることができたんですけど、森保さんはあの試合の話をよくしますよね。
竹内 めっちゃする(笑)
舩木 だとしたら今回も、リードを守り抜くような展開になれば、長友を試合終盤に途中投入する選択肢は十分あると思うんです。もちろん長友はメンタルリーダーとしての役割も担うのでしょうが、使うならそういった起用法も考えられるんじゃないかと。
1年くらい前にテレビで放送されていたインタビューの中で、長友自身も「ウイングバックには守備の選手を置く必要はないと冷静に思っている」と話していました。その上で「(相手のウイングに速い選手がいて押し込まれたら)そのときに『対人だったら長友だ』と思わせるコンディションを作っておけばいいだけ」と言っていて、自分の役割と心構えについて森保さんに直接伝えていることも明かしていましたから。
佐藤 これは前回の座談会でも話しましたけど、24年1月のアジアカップ(カタール大会/日本は準々決勝敗退)でイラクやイランにロングボールでやられたことをきっかけに、森保さんは2センターバックではリスクがある、と3バックを採用するようになったんです。逆に言えば、真ん中が3枚だったら、クロスを蹴り込まれても守れると思っているんですね。なので、例えばリードしている終盤に冨安をどちらかのウイングバックに入れて、最後はセンターバック系の選手を4枚並べて逃げ切ることも考えているかもしれない。
長友にしても高さはないけど、相手に体を当てて飛ばせなかったり、張り付いてプレーの邪魔をしたりするのはうまいから、彼をサイドに入れても残り4枚がセンターバック系の選手だったら十分に守り切れると思う。だから、長友の3バック起用は、僕はちょっと懐疑的だけれど、ゲーム終盤のウイングバック起用は十分あるかなと思いますね。