最高の“テストマッチ”となったアイスランド戦 日本代表にとって結果よりも重要だったW杯仕様への最適化
結果よりも大事だったこと
アイスランドに1-0という結果こそ、日本代表戦の「興行」として物足りなさはあったかもしれないが、この試合で重要だったのはスコアよりも内容だ。やりたいことがどれだけできたのか、あるいはできなかったことは何かと、それぞれ建設的に振り返ってW杯本大会につなげるのが最大の目的だったのだから。
これまで日本代表や日本サッカーに大きく貢献してきた吉田麻也にキャプテンマークを託し、花道で送り出すセレモニーもW杯に向けた一体感を高めるために大事な要素となった。約1週間の合宿を通して吉田がチームに対して見せてきた姿勢や伝えてきた経験、それらも現代表選手たちを強く刺激したのは間違いない。
収穫は他にもたくさんある。冨安健洋や遠藤航ら、コンディションに不安のあった選手たちに十分なプレー時間を確保することができた。所属クラブで出場機会が限られていた選手、そして直近の試合から時間が空いていた選手たちの状態もしっかりとチェックすることができた。
戦略・戦術面においては伊東純也の左シャドー起用、瀬古歩夢のボランチ抜てき、3-4-2-1から3-1-4-2への移行、そして先制した後の3-1-4-2から3-4-2-1への再移行、5-4-1で構えての終盤の逃げ切りといったW杯本番を想定した勝ち切るためのオプションをいくつもテストし、それぞれが効果的に機能することを確かめられた。
前半は5-4-1のブロックを構築し、チャレンジ&カバーの原則に忠実な守備を披露したアイスランドを崩せなかった。もしかするとW杯で対戦するチュニジアやスウェーデンに格好のスカウティング材料を与えてしまったかもしれない。だが、アイスランド戦での森保ジャパンは鎌田大地や前田大然、さらに鎌田と組んだ時の佐野海舟といった“特異点”になりうる要素を見せていない。すべてをさらけ出さずにテストの成果と結果を両立できたことは、森保一監督の「勝つ確率を1%でも上げる」チームづくりにおいて重要な意味を持つだろう。
新競技規則への適応で分かれた明暗
例えばスローインやゴールキックの際に「意図的にプレー再開を遅らせている」と判断された場合、主審は5秒のカウントダウンを始める。それが終わっても再開されていない場合、スローインの権利は相手チームに渡り、ゴールキックは相手チームのコーナーキックに変更される。日本代表は合宿中の練習に「5秒スローイン」を取り入れ、そのためのパターンも用意してアイスランド戦に臨んだ。
また、交代で退く選手は交代ボードが掲示されてから10秒以内にピッチを出なくてはならない。11秒以上かかった場合、交代出場する選手は次のプレー再開から1分が経過した後の最初のアウトオブプレーまでピッチに入れず、チームは一時的に数的不利となってしまう。
負傷者やGK、合意が取れているセレモニーなどいくつかの例外はあるものの、アクチュアルプレーイングタイムの増加を目的とする新ルールに適応できなければ、W杯の舞台で大きな不利を被りかねない。
メキシコでの事前合宿に入ってからW杯のグループステージ初戦までの間に対外試合を予定していない日本にとっては、アイスランド戦が新ルールへの適応を確認する最後の重要な機会だった。
これらのルールをすでに導入している北米MLSでプレーしている吉田は「MLSではスローインはそんなに厳しく取られない。ただ、交代の時は結構厳しい。それでも日本人っぽく普通にやっていれば、よほどのことがなければ大丈夫だと思う」と語っていたが、実際にやってみるとその通りになった。
アイスランドは後半の21分に、スローインの「5秒」違反を取られている。タッチライン際でボールを持っていたダグル・ダン・ソルハルソンに対し、主審が片手を挙げて5秒のカウントをスタート。同選手はカウントが終わってからスローインを行ったため、同じ場所から日本ボールでのスローインに変更された。
後半40分には選手交代の際にクリスティアン・フリンソンがなかなかピッチを出ず、「10秒」が経過。イサク・スナエル・ソルヴァルドソンはタッチライン際でプレーが切れるまで1分以上待たされることとなり、10人で戦っている間に日本のゴールが生まれたのは新たな競技規則が適用された環境で起こりうる事象として象徴的だった。アイスランドのアルナル・グンラウグソン監督が猛抗議していたのは言うまでもない。