MLBで1世紀近く続いた定石を破る「現代の打順論」 大谷、村上、岡本ら日本人スラッガーたちに最適な打順は?

村田洋輔

日本人スラッガーたちに適した打順

驚異的なペースで本塁打を量産する村上。チームの最強打者として文句なしの2番打者だ 【写真は共同】

 では、MLBの舞台で奮闘する大谷以外の日本人スラッガーたちには、どの打順が最も適しているのだろうか。まず、本塁打と打点の2部門でア・リーグのトップに立ち、同3位のOPS.947をマークしている村上宗隆(ホワイトソックス)は2番が適任だろう。

 選球眼が良く、四球での出塁が多いことを考えると、1番に置くのも悪くないが、再建中のホワイトソックスはそれほど選手層が厚くないため、下位打線の攻撃力が大きく落ちる。若手のチェース・マイドロスや新人のサム・アントナッチが1番打者として健闘しているため、わざわざ村上を1番に置く必要はなく、ヤンキース(ジャッジ)やフィリーズ(シュワバー)のようにチームの最強打者を2番に置く形が最もしっくりくる。村上の打席を増やすために1番に繰り上げると、走者なしで村上に回るケースが増えることも予想されるため、村上が走者を還すという仕事をしっかりこなし、打点王争いに加わっている現状では、やはり2番がベストだろう(現地5月29日の試合で右太もも裏を痛めて翌30日に負傷者リスト入り。復帰まで4~6週間と報道)。

5月5日(現地時間)、レイズ戦で10号ソロを放ちゲレロJr.(左)に祝福のジャケットを着せてもらう岡本(右) 【写真は共同】

 昨季のア・リーグ王者であるブルージェイズに加入した岡本和真はどうだろうか。7番打者として渡米1年目の開幕を迎えた岡本だが、5月上旬の好調時には2番に入った試合もあり、シーズントータルでは4番での起用が最も多い。本来、ブルージェイズにはウラジーミル・ゲレロJr.という球界屈指のスラッガーがおり、今季も不動の3番打者として起用されていたのだが、ここまで打率.289、わずか3本塁打、OPS.761となかなか調子が上がらず、気分転換として2番を打つケースも出てきている。

 ただ、チーム全体として打線が低調で、ゲレロJr.のOPSはヘスス・サンチェス(.779)、アーニー・クレメント(.763)に次いでチーム3位のため、上位打線から外すわけにはいかないというのが実情。チーム内で断トツの11本塁打を放っている岡本だが、三振が多く出塁率も低いこと、5月中旬以降に調子を大きく落としていることなどを考えると、不動の1番ジョージ・スプリンガーのあとの2~4番をゲレロJr.らOPSトップ3に任せ、5~6番あたりで気楽に打つのが現時点では最適解か。もちろん、ゲレロJr.が本来の打棒を取り戻し、岡本が5月上旬のような勢いを再び見せることができれば、2~3番、あるいは3~4番でこの2人が並ぶのが理想だろう。

 カブスの強力打線の一角を担う鈴木誠也についても見ていこう。WBCで右膝を痛めた影響で出遅れた今季は4月上旬に復帰し、主に5番打者として起用されている。カブスのクレイグ・カウンセル監督は1番にコンタクト能力が非常に高いニコ・ホーナーを起用。そこからマイケル・ブッシュ、アレックス・ブレグマン、イアン・ハップ、そして鈴木と並ぶ打順になっている。突出したスラッガーがおらず、高いレベルで近い実力を持った好打者が並ぶ打線のため、打順の組み方の選択肢も豊富だが、1番ホーナーの安定感を生かすのであれば、やはり2番にはスラッガーを置くのが理想的。昨季34本塁打のブッシュが右腕相手の試合では2番に入っているが、左腕相手の試合でブッシュが下位を打つときの2番打者が流動的なため、そこに昨季32本塁打の鈴木がハマれば面白い。また、鈴木が持つ爆発力を考えると、出塁能力の高いブレグマンとハップのあとを打つ5番も適任と言える。以上を整理すると、鈴木に適した打順は、対右腕時は引き続き5番、対左腕時は2番ということになりそうだ。

 最後にレッドソックスの吉田正尚だが、起用法が流動的な現状では打順にとらわれず、与えられた出場機会で結果を残していくことが最も重要。四球の数が三振の数を上回るなど、出塁率自体は悪くないだけに、打球の速度と角度を上昇させて「バレル」の打球を増やすことができれば、全体的にやや低調なレッドソックス打線において、上位に定着することも不可能ではないはずだ。渡米4年目の奮起に期待したい。

※本文中の成績はすべて日本時間5月29日の全試合終了時点。

(編集:スリーライト)

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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