サラー、ロバートソンとの別離 そしてペップの退任で実感した一時代の終焉
相手のアストン・ヴィラ選手団も加わって2人を見送った
シウバといえば、サウサンプトン時代の吉田麻也が「もうあいつはキレキレでどうしようもない」と、本当にうんざりとした顔で語ったことが今も鮮明に印象に残っている。
公称173センチだが、実物はもう少し小さく見える。しかしピッチ上ではその四股を大きく伸ばしてボールを操り、自分を大きく見せた。まさに“躍動”という言葉がぴったりのポルトガル人だった。
ストーンズはエバートンからマンチェスター・Cに移って驚異的な成長を遂げた。足元の技術が素晴らしい華麗なセンターバックになった。
この2人の交代時にも、こちらは対戦相手であるアストン・ヴィラの選手団も加わり、ガード・オブ・オナーができた。
技術の高い日本人選手に光が当たったのはペップの影響
彼とクロップの2人が真の意味でプレミアリーグを世界最高のリーグにした。
2017-18シーズンに達成した前人未到の勝ち点100優勝の衝撃。翌2018-19シーズンも前シーズンに樹立したリーグ記録と同じ32勝を挙げて、勝ち点97のリバプールにタイトルを明け渡さなかった。
また世界最古にして最も激烈なイングランド1部リーグで“不可能”とされていた、史上初の4連覇を達成。さらには2022-23シーズンにトレブル(3冠)も成し遂げ、隣人マンチェスター・Uのサポーターを心底辟易とさせた。
こうした実績を並べるだけで、ペップの偉大さが伝わってくる。この人とクロップがプレミアリーグのレベルを革新的に引き上げ、名実ともに世界一のリーグに押し上げたという見方に異論がある者はいないだろう。
現在の2大戦略であるポゼッションとプレスの創始者。選手の技術と体力を、信じ難いほどの情熱と独自の理論を吹き込みながら高めたペップとクロップ。この2人のカリスマが超絶なフットボールを展開して、プレミアリーグが栄華を極めた。
ペップの一番弟子だったミケル・アルテタは、アーセナルの監督として当初はマンチェスター・Cのフットボールを再現しようとしたが、結局は諦め、デカくて強い選手を集めてフィジカルな壁を築き、堅い守りと強いセットプレーでイングランドを制した。
そう、やはり本家には勝てないのである。
バルセロナ、バイエルン・ミュンヘンを経て、マンチェスター・Cで完成させたペップのフットボールは、最終的には宿敵クロップのプレスと体力的な優位をも吸収して、現時点で最高形のチームを創り上げた。
プレミアリーグで頑なに維持されてきた強度とスピード、そして何よりも根性に依拠したフットボールに、ペップは近代的な技術と戦術をしっかりと刻み込んだ。
これは筆者の私見だが、近年のプレミアリーグにおける日本人選手の活躍もペップの功績の余波だと思う。彼が勝ちまくり、テクニックの重要性をイングランドに知らしめたことで、技術の高い日本人選手に光が当たった。
もちろん、プレミアリーグで輝いた冨安健洋、三笘、遠藤といった選手が、ハードな筋トレによってこのリーグで通用するフィジカルの強さを身につけた努力を忘れてはならないが、彼らの技術の高さがイングランドでも不可欠な要素になったのは、スペイン人知将の影響だと思う。
突如として退任が発表されたが、本人が「これ以上続ければ、監督の椅子に座ったまま死ぬことになると医者に宣告された」と語ったように、自身の健康を害し、ギリギリのところで戦っていたという事実を明かされては仕方がない。1年休養してスペイン代表監督に就任するという気の早い報道もあるが、まずはゆっくりと静養してほしい。
先週は三笘の代表不選出のショックで愕然としたが、今週はサラー、ロバートソンとの別離を体感し、シウバ、ストーンズ、そしてペップがマンチェスター・Cを去ったことで、やたらとセンチメンタルな気分になった。
しかしアレックス・ファーガソンが去り、アーセン・ベンゲルがいなくなっても、クロップとグアルディオラが現れたように、次の10年のプレミアリーグにも革新と興奮の嵐が巻き起こることを心の底から祈り、信じることで今季の連載を締めくくりたいと思う。
(企画・編集/YOJI-GEN)