塩貝健人と藤田譲瑠チマの明暗を分けたもの ドイツ組が出した“強度”という問いへのそれぞれの答え
求められているものは適応のその先にある
そのドイツの地で、今季も多くの日本人選手が主役として、あるいはサバイバルの当事者としてピッチを駆けた。
ブンデスリーガが日本人選手に突きつけるものは、昔も今も変わらない。技術でも戦術眼でもなく、まず強度だ。球際の激しさ、切り替えのスピード、90分間衰えない運動量。そこに適応できるかどうかが、すべての出発点になる。
かつてはその壁を乗り越えること自体に意味があった。だが、今の彼らに求められているものは、適応のその先にある。強度を当たり前のものとして受け入れた上で、チームの命運を左右できるかどうか。そこが求められる。
今季、その問いはより鮮明な形で突きつけられた。6月開幕の北中米ワールドカップ(W杯)を控え、クラブでの現実と代表への想いが常に背中合わせとなるシーズン。強度という土台をつかんだ者と、そこで足をすくわれた者とで、明暗はくっきりと分かれた。
終幕を迎えた今、「ドイツ組」の25-26シーズンをあらためて振り返る。
守備の強度で基準を満たした鈴木唯人
鈴木はシーズン序盤、新天地となったフライブルクのピッチでなかなか存在感を示せなかった。ブンデスリーガのインテンシティに体が追いつかず、出場機会を失う時期もあった。それでも諦めずに適応し続けた結果、シーズン後半にはチームの中心的存在へと変わっていた。前半戦の苦悩を糧に、強度の水準を自らのものへと書き換えていった。
さらに、チームが求める強度を携えた上で、自身の強みである攻撃面で違いを示したのが見事だった。苦しい時間帯にバックラインまで戻って守備をしたかと思えば、巧みな動き出しとポジショニングで前線にテンポを生み出す。さらにはゴールに関わる仕事までする。足りなかったところを基準以上にまで引き上げたことで、彼らしいプレーをよりピッチで表現できるようになった。
この変化がW杯のメンバー入りにつながったのは間違いない。光る攻撃面だけでなく、守備の強度でも森保一監督が求める基準を満たしたことは、選考の最後の一押しとなったはずだ。
強度という面で圧倒的だったのが、マインツ2年目の佐野海舟だ。昨季、すでにブンデスリーガでその水準を証明していた佐野だが、今季はさらに上のレベルのタスクを課された。カンファレンスリーグとリーグ戦を並行しながら、チームの中心として走り続けること。それは想像以上に厳しいタスクだった。
特に新指揮官であるウルス・フィッシャー監督が就任して以降は、より強度が求められる環境下に置かれた。昨年12月まで最下位に沈み込んでいたチームは、新たに佐野をワンアンカーに据えるシステムを採用。佐野の広範囲に動けるスタミナと強度、鋭い状況判断に基づく穴を開けないポジショニングを信頼してのシフトチェンジが功を奏し、V字回復を遂げたチームは、最終的に10位でフィニッシュしている。
佐野にとっても成長の1年だった。今季はプレーの波を減らすことを意識。たとえコンディションが整っていなかったとしても、局面でしっかりと高い強度を出すことで安定感あるプレーをし続けた。
その証明が、「シーズン48試合・4,164分出場」という数字だ。カンファレンスリーグを含めたタイトなスケジュールの中で、ほぼすべての試合をフルタイムで走り切ったのだ。そのパフォーマンスは多くのクラブの目に留まり、W杯での活躍次第ではビッグクラブへと向かう可能性も高いだろう。