週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

村上宗隆はなぜ追い込まれても打てるのか? ジャッジ級データが示す“2ストライクアプローチ”の正体

丹羽政善

ジャッジに迫る2ストライクの数字

5月16日のカブス戦、外角の球を引きつけて左中間スタンドに打球を運んだ村上宗隆 【Photo by Daniel Bartel/Getty Images】

 その点について本人に聞くと、「もちろん、追い込まれる前に決めたい気持ちもありますし、追い込まれてからの対応とか、すごく大事になってくるので、もちろん、その前に決められる球があれば、決めたい」と答えたものの、彼は追い込まれてもしっかり自分のスイングができている。

 例えば、17本塁打のうち7本塁打は2ストライクから。これはリーグ2位タイで、1位はアーロン・ジャッジの8本なのでわずか1差。また、追い込まれてからのハードヒット率(打球初速95マイル以上)は60.9%で、これはリーグ4位。1位はジャッジで68.5%。そもそも村上の平均ハードヒット率は59.0%なので、2ストライクのときの方が上なのである。また、スイングスピードは74.4マイル。平均は75.2マイルなので、ほぼ変わらない(記録はすべて19日試合終了時)。

 そうしたデータを伝えると、村上は言った。

「2ストライクであっても、しっかり自分のプランを立てながら、やることは意識します」

 その意識は、しっかり結果に表れていると言えるのではないか。

 さてかつて、最後の4割打者として知られるテッド・ウィリアムズは、「The Science of Hitting」という自著で、こう2ストライクアプローチについて書いている。

① 追い込まれてもゾーンを広げない
② スイングを変えない(短くバットを持つ、コンパクトに振るは間違い)
③ 際どい球を見逃して三振することは、ボール球を振って凡打になるよりもいい

 村上に当てはめると、①に関しては前回紹介した通りで、その後もその傾向に変化はない。2ストライクでボールを振る割合は27.8%で、リーグ平均の約40%を大きく下回る。②に関しても今回、村上が同じようなアプローチを心がけていることがわかった。

 では、③はどうか?   

 村上に聞いたものの「いや、それはないと思います」と苦笑しながら答え、見逃し三振を受け入れることには否定的だった。

「どっちの結果も良くないですけど、もちろん、相手が素晴らしいコースに決めた球に対して、打つ確率はすごく低くなると思いますけど、打てる球はしっかり打ちたいなと思いますし、どの打席も、ちゃんとホームランだったり、ヒットだったりというのは、打ちたいなと思って打席に立っています」

 それがウィリアムズの言葉であることを伝えると村上は、「天才の考えることは分からない」と頬を緩めた。とはいえ、2つは同じであり、ゾーンを広げず、追い込まれても自分のスイングに徹する――それは図らずも相手にプレッシャーを与えている。

 19日の試合。六回2死二塁で村上が打席に向かうと、マリナーズのダン・ウィルソン監督は、それまでわずか被安打1のブライス・ミラーを代えた。

「村上と3回も(同じ投手と)対戦させるのは危険だと思った」

 その説明こそが、いまの村上の現在地を的確に言い表していた。

(編集:スリーライト)

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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