アントネッリ首位独走! 「本命」ラッセルはなぜ勝てないのか

柴田久仁夫

絶好調のアントネッリ

初優勝から3戦連続ポール・トゥ・ウィン。今のアントネッリの強さには誰も敵わない 【(C)MercedesF1】

 もはや「将来有望な新人」という表現では追いつかない。メルセデスのキミ・アントネッリが、F1世界選手権で破竹の3連勝。チャンピオン争いで首位を独走中だ。

 第2戦中国GPで自身初のPP(ポールポジション)を獲得すると、そのまま初勝利を達成。続く日本、マイアミGPでもPPからの連勝をやってのけた。初優勝からの3戦連続ポール・トゥ・ウィンは、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハも成し遂げられなかったF1史上初の大記録だ。予選一発の速さは群を抜き、レースではいったん首位を失ってもそこから巻き返す粘り強さと冷静さも併せ持つ。

 まさにアントネッリの勝ち方は、単なる勢いや偶然ではなく、堂々たる王者のそれだ。F1参戦わずか27レースの19歳の若者が、なぜこれほどの強さを見せられるのか。もちろん所属するメルセデスF1が、ライバルたちより頭ひとつ抜けた戦闘力を有することも大きな要因だ。しかし同じマシンを駆るジョージ・ラッセルは、開幕戦オーストラリアGPを制して以来、勝てない状態が続く。

 開幕前、「2026年のチャンピオン大本命はラッセルだ」と、多くの関係者は見ていた。ルイス・ハミルトンがフェラーリに去った後のメルセデスを率いる存在として、経験、速さ、安定感を兼ね備えていたからだ。しかしシーズンが進むにつれ、チーム内の空気は少しずつ変わり始めている。

ラッセルはなぜ勝てない

開幕4戦でわずか1勝という成績は、ラッセル自身にも予想外だったことだろう 【(C)MercedesF1】

 言うまでもなく、ラッセルも決して遅いわけではない。たとえばアントネッリのF1デビュー年だった去年は、予選は21勝3敗とアントネッリを圧倒し、レースでの獲得ポイントも319:150と2倍以上の差をつけた。今年も開幕戦で優勝、第2、3戦も2位に入って、選手権2位に踏みとどまっている。とはいえチームメイトに20ポイント差をつけられている現状は、チャンピオン本命と評価されたドライバーとすれば、不本意な結果に違いない。

 成績以上に内容が、それもシーズンが進むにつれて下降線をたどっている点が、大きな不安要素だ。

 典型的だったのが前戦マイアミGPで、予選は今季ワーストの5番グリッド。アントネッリに対しコンマ4秒もの大差をつけられた上に、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、ランド・ノリス(マクラーレン)との1000分の1秒単位の激戦も勝ち抜くことができなかった。そしてレースでは、序盤のペースは悪くなかったものの、ハードタイヤに履き替えてから伸び悩み、表彰台に届かなかった。

 タイヤマネージメントがうまくいかない。セーフティ明けのタイミングで、ミスを犯した。接近戦の駆け引きに失敗した。ひとつひとつは細かな要素だが、それらが積み重なって、気がつけばアントネッリが勝っている。そんな展開だった。そこにはアントネッリの急成長に対する焦りも、もちろんあるだろう。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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