大阪ブルテオンをSVリーグ制覇に導いた“世界一セッター” ブリザールの創造的プレーと人間性
サントリーはレギュラーシーズンを40勝4敗の1位で終えていて、前身のVリーグも含めればファイナルも2年連続で制していた。またブルテオンは「2戦先取」のシリーズで、15日の初戦を1-3で敗れている。16日のゲーム2も第1セットを13-25と落とし、その時点でブルテオンの優勝はまったく予想できなかった。
しかしチームは西田有志やミゲル・ロペス、第2戦の途中交代から持ち味を発揮した甲斐優斗といったアタッカーの強打やサーブで流れを引き戻した。
サントリーはデアルマスアラインの負傷もあり、「入れ替え」で流れを変えられなかった。対するブルテオンはアウトサイドヒッター、ミドルブロッカーとも、状況に応じて複数の選手を使い分けていた。そんな人材を操るセッターが、アントワーヌ・ブリザールだった。
ブリザールが見せた創造性
第3戦を終えた彼はこうコメントしている。
「キャリアの中で、クラブの選手として国内リーグで優勝したのが実は初めてです。来日した直後から、クラブが優勝に対してどれだけ強い思いを持っているかも感じ取っていました。だから本当に素晴らしい気持ちです。クラブは恵まれた環境を整えてくれて、私の食事はもちろん、妻に対するサポートも手厚くしてくれています。生活に対する負荷を自分は背負わなくてもよかったことが非常にありがたかった」
ブリザールの身長は196センチ。もちろんセッターだろうと背が高く、ブロックやスパイクで貢献できれば理想に違いない。とはいえこのポジションは「いいトスを上げられるか」が最優先で、サントリーの関田誠大は(日本代表の極めて能力の高いセッターだが)175センチの一般人体型だ。
2025-26シーズンの外国籍選手の同時出場枠は2名(+アジア枠1名)だが、SVリーグ男子の他チームを見ればミドルブロッカー、オポジット、アウトサイドヒッターにこの枠を使っている。長身選手が希少な日本のバレー界ならば、当然そうなる。
それでもブリザールは外国籍の「2枠」を割くに値する人材だ。世界を制した経験値はチームにも還元されているだろうし、何よりファンを楽しませる「華やかさ」「創造性」がある。日本のセッターは得てして「両手で丁寧にトスを上げる」のだが、ブリザールはトスの1本1本が型にはまらず不揃いで、ワンハンドやノールックのプレーも多い。ツーアタック(トスに見せかけて自らスパイクかプッシュをするプレー)も当然ながら強みだ。
ファイナルの3試合でもう一つ感じたのは「アグレッシブさ」「味方への信頼」だ。相手のブロックを受けた選手を、直後のプレーで、同じような状況でも打たせる選択が多い。いい意味でのしつこさ、成功するまでやり続ける頑固さも伝わってきた。
人間性と「エスプリ」
「本当に皆さんがご覧いただいた通りで、素晴らしいセッター。それ以外にないと思っています。人としてもチームメイトに寄り添える部分を持っています。チームに必要とされる人間性が、彼には備わっています」
ブルテオンのキャプテンを任されているのは西田だが、ブリザールもリーダーの一人だ。指揮官はこう述べる。
「長いシーズン戦い抜くにあたっては、リーダーシップにも幅を持たせるべきだと自分は考えています、西田だけではなく、アントワーヌ(・ブリザール)や山本智大、ミゲル・ロペスと違うタイプのリーダーシップが非常に大事になっていました。一人で責任を負いすぎるのでなく、違うリーダーシップを持っている選手と支え合いながらチームを引っ張っていくのがこのチームのやり方です」
いろんな競技、いろんな国のアスリートと向き合ってきた取材者として、ブリザールとのやり取りはかなり新鮮だった。彼は質問に対して素っ気なく返す、ちょっと意地悪く返す傾向がある。
「それを考えるのは私の仕事ではないですよ」
「試合に勝ったあとなのにそんなことを聞くのですか?」
文字にすると、質問に対する「拒絶」として伝わるかもしれない。しかし彼の顔を見ると険しさはなく、そのまま普通に相手の意を汲んだコメントもしてくれる。
様々な競技で司令塔を任される選手は、質問に対して「No,but……」で逆方向から切り返すタイプが多い。ブリザールもプレーと同様に会話の「駆け引き」「遊び」があるタイプで、フランス風で言えばエスプリ(機知)に富んでいる。そこはセッターとしてのスタイルに共通する部分かもしれない。