北中米W杯48チーム徹底分析「森保ジャパンの勝算は?」

W杯初戦でぶつかるオランダの森保ジャパン評 メディアが警戒する「3バック」と「上田綺世のヘディング」

中田徹

ファン・ダイクやF・デ・ヨングらワールドクラスを多数抱えるオランダだが、クーマン監督は「そう簡単にはいかない」と日本に対して警戒心を強める 【Photo by Rafal Oleksiewicz/Getty Images】

 北中米ワールドカップ(W杯)に挑む日本代表メンバー26人も発表され、いよいよ本番に向けて期待感が高まってきた。「優勝」を目標に掲げる森保ジャパンにとって最初の関門となるのが、6月14日(現地時間、以下同)にグループステージ初戦で対戦するオランダだ。過去3度のW杯準優勝(1974年、78年、2010年)を誇るグループ最大の強敵だが、ではオランダ国内のメディアは自国の代表チームと日本代表をどのように見ているのだろうか。現地の論評を拾い集めた。

自国の代表への危機感と日本に抱く敬意

 悲願のワールドカップ(W杯)優勝に燃えるオランダ。しかし、その道のりは長く険しい。グループステージの初戦は6月14日、相手は日本。オランダのメディアは自国への危機感と、日出ずる国への敬意をもって報じている。そのことを象徴するのが3月31日の夜だった。

 オランダは強化試合でエクアドルと1-1で引き分けた。試合後の記者会見で「日本がウェンブリーでイングランドを破った」と知らされたロナルド・クーマン監督は一瞬、顔を歪めてから「簡単に勝てる国はもうない」と、呟くように言った。

 日本勝利の情報をオランダ代表の指揮官にぶつけた『デ・フォルクスクラント』紙のビーレム・フィッサー記者は4月1日付の紙面で、「オランダはもはやサッカーの強豪国ではない――それがW杯への道のりで得られた教訓だ」と題する記事を寄せた。

「(エクアドルの戦いぶりを見て)規律、才能、戦術能力によって多くの国々がトップレベルに追いつきつつある。オランダはもはやトップレベルの国ではない。ロナルド・クーマン監督はエクアドル戦後、日本がウェンブリーでイングランドに勝利したことを聞き、『(日本との戦いは)そう簡単にはいかないだろう』と言った。オランダは1974年大会以来、(W杯に出場すれば)グループステージで敗退したことがないので、今回も楽勝のはずだった。しかし日本、スウェーデン、チュニジアと同じグループの戦いは厳しいものになるだろう。日本代表の選手はヨーロッパ中に散らばっていて、技術力・体力・戦術面のいずれにおいても優れている」

 4月1日、オランダのサッカー専門誌『フットボール・インターナショナル』のポッドキャストは記者3名による鼎談を行った。そこでピート・ズワルト編集長は日本代表の印象についてこう語っている。

「近年、日本サッカー界は『トップクラスの国々と戦うにはまだ準備が足りない』という結論を出し、それに基づいた強化プログラムを開発してきた。森保一監督はヨーロッパ中のあらゆるクラブを訪ねて回り、そこで日本の選手たちがどんなふうに仕事をしているのかをつぶさに見てきた。たとえばベルギーのシント=トロイデン(STVV)。ここには次から次へと日本人選手が現れる。そして、STVVを経由して多くの日本人選手がヨーロッパのトップレベルのサッカーシーンに送り込まれ、W杯のような大会で活躍するために必要なものを身に付ける。本当に手ごわい国だよ」

 日本がイングランドを破った衝撃を、同ポッドキャストでは3人の記者がこんなやり取りで振り返っている。

ミシェル・アビンク記者:日本はW杯の注目国だね。昨日も大暴れだ。ウェンブリーでイングランドに勝ったのは本当に印象的だった。

マルタイン・クラベンダム記者:“ただし”という言葉を付け加える必要はあるけれどね。イングランドのメンバーはいつもと違っていた。とはいえ日本は非常に規律が取れていて、ああいう試合で普通に勝てるチームになったのは確かだ。あれは偶然の勝利ではない。(アジア最終予選のアウェーゲームで)オーストラリアには敗れたものの、ここのところほとんど負けてない。

ズワルト編集長:ヨーロッパの国を相手に無敗記録を築いているからね。(前回のW杯では)ラウンド16でクロアチアにPK戦で敗れたけれど、ドイツ、スペインにも勝った。最近では親善試合でブラジルを3-2で下している。本当に強いチームだ。(3月には)スコットランドにもBチームで勝った。日本を過小評価してはいけない。

オランダが苦手とする3-4-2-1システム

欧州予選は無敗で突破したものの、3-4-2-1システムを用いる国に対しては苦戦。ポーランドとはホーム、アウェーともに引き分けた 【Photo by Dean Mouhtaropoulos/Getty Images】

 FIFAランキング7位のオランダの懸念は、クーマン政権2期目(2022年~)を迎えてから、一度もランキング25位以内の国に勝っていないことだ。一方、ランキング18位の日本は長期にわたって列強国に負けていない。前述の『デ・フォルクスクラント』の記事はこう続く。

「日本はウイングバックを起用する5バックシステム(3-4-2-1)でプレーする。オランダのルイ・ファン・ハール前監督は指揮を執った過去2回のW杯(14年と22年)で同じ戦術を採用し、14年は準決勝、22年は準々決勝でアルゼンチンと当たり、いずれもPK戦で敗れた。

 クーマン監督の好みは4-3-3だが、オランダ代表は複数のシステムを習得する必要があることを分かっている。5-3-2(3-4-1-2)が今のオランダの持ち味に最も適したシステムかもしれない。ウイングバックには(デンゼル・)ドゥムフリースと(ミッキー・)ファン・デ・フェン。卓越したウインガーが乏しいなか、(メンフィス・)デパイ、(コディ・)ガクポ、(ドニエル・)マレンを2トップで組み合わせることができる」

 ここで解説を加えると、欧州予選のオランダは6勝2分け/27得点・4失点と一見、素晴らしいスタッツで勝ち上がったが、中盤の最適解が見つからないなどさまざまな問題を抱えていた。その1つが3-4-2-1システムの国に対する守備の脆弱さ。4失点はすべて同システムを採用した国に喫したが、それも決して偶然ではない。

 まだ今回のW杯で日本と同組になることが決まる前、クーマン監督は「3-4-2-1対策」の必要性を唱えていた。

「自陣でブロックを作る3-4-2-1システムの国でも、攻撃に転じれば前線の3人に両ウイングバックが加わって5トップになる。4バックシステムのオランダは数的不利になり、脆さが生まれる。本大会までに解決策を見出さないといけない」(昨年11月のポーランド戦後、公共放送局『NOS』のインタビューに答えて)

 そして5月3日、『NOS』のサッカートーク番組『ストゥディオ・フットボール』にゲスト出演したクーマンは、司会者から「W杯初戦の対戦相手は日本です。彼らは5バックでプレーしますが、オランダにとって相性が良くないのでは?」と問われた。そのときのやりとりはこうだ。

クーマン:そんなことはありません。

――(EURO24のグループステージで敗れた)オーストリアも5バックでした。

クーマン:(状況に応じてシステムを変える)オーストリアには(決まった)システムがあるのかどうか、分かりませんでしたけどね。

――つまりオーストリアは非常に優れた戦術を持っている、ということになりますね。

クーマン:我々も常にではないですが、ボール保持時は3バックでプレーします。選手の配置を高くしたり低くしたりすることで、別のシステムになります。ともかく日本はポジションチェンジがとても多い。3バック+ウイングバックでプレーする日本をどうすれば攻略できるか、我々もいま、取り組んでいるところです。

 確かに(3-4-2-1の)ポーランドとの2試合(欧州予選/2戦とも1-1のドロー)は苦戦しました。ああいった相手にマンツーマンで対応できないと窮地に立たされる可能性があります。そこに全神経を注ぐつもりです。というのも日本だけでなく、3戦目の相手であるスウェーデンも3-4-2-1のような形ですから。そこが注意すべきポイントです。

 こうした分析から読み解けば、おそらくオランダは伝統の4-3-3システムを基軸としつつ、以下の2つのパターンで本大会に挑むことになるだろう。

1)4-3-3のプランAでスタートしつつ、ボール非保持の場面ではセントラルMFのフレンキー・デ・ヨングが最終ラインに落ちる5-4-1への可変システムを採用する。

2)プランBの3-4-1-2/3-4-2-1システムで試合に入る。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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