前田大然が叶える4年越しの想い 2度目のW杯への決意「日本代表は優勝できる」
4年前に語っていた「次」への想い
「自分はW杯というのをあまりイメージしてこなくて、それこそメンバーに入れるともあまり思っていなかった。W杯で活躍するというイメージが全くない状態でここに来た感じでした。でも、W杯でプレーすると、ベテランの選手たちも言うように『また来たい』と強く思った。これからの4年間は次のW杯のことをしっかりと見据えてやっていきたいと思います」
取材の時間は10分に満たなかったが、前田は「次」や「4年後」を意識した発言を何度も繰り返した。
「これを機にもっともっと成長して、4年後にまたここに戻ってきたい」
「日本のサポーターの皆さんも、もっと上を見たかったと思う。そのチャンスはもう次の4年後にしかこない。そこでしっかりリベンジできればと思っています」
W杯という舞台に魅せられた選手が、また1人増えた――。そう強く感じたのをよく憶えている。
あれから約4年。前田の目の前には再びW杯の舞台に立つチャンスがある。せっかくのインタビューの機会に、カタールW杯での最後の取材対応の時のことを振り返ってもらった。
「何なんですかね……。僕自身、W杯がなぜ人を強く惹きつけるのかよく分かっていないですけど、カタールで悔しい思いをしたのは間違いない。その借りはW杯の場でしか返せないという意味で『また来たい』と言ったのかなと思います」
前田はラウンド16のクロアチア戦で先制点を決めた。前半43分、右コーナーキックの流れから堂安律が上げたクロスを吉田麻也が相手選手と競り合いながら落とし、前田がこぼれ球を左足でゴールネットに蹴り込んだ。
日本代表を史上初のW杯ベスト8進出に大きく近づけた一発だった。だが、決めた本人は「こういう取材の時に、振り返って思い出すくらいで、普段は別に思い出さない」という。後半に追いつかれた日本代表は、延長戦、そしてPK戦の末にクロアチアに屈した。
「『日本もベスト8に行けるぞ!』と思わせた試合ではありました。でも、逆にああいうところで負けてしまうのは、当時の日本代表の弱い部分でもあったのかなと。内容面も含め、クロアチアとの間に差はあったと思います。PK戦でキッカーにどれだけ自信があったのか、そもそもPK戦までもつれさせてはいけなかったのではないか。クロアチアとの差はそういう細かいところにありました」
前田は自らのゴールに対しても「勝てなかったら意味がない」と言い切る男だ。ゆえにクロアチア戦のゴールも過去のこと。敗退した瞬間から、視線は未来に向いていた。
「W杯で負けた次の日から、目の前のことに全力で取り組んできました」
セルティックで成長し、日本代表では左WBに
「目標を設定することによって、そこに行くために何をすべきか逆算できると思うんですけど、個人的にはあまり設定していないんです。とにかく目の前の試合や練習を一生懸命やることにフォーカスしている。それがW杯での優勝といった成果につながってくるのかなと思っています」
大きな目標のためにやらなければならないことに囚われないから、焦らない。淡々と今やるべきことに集中し、成長する。その先に「リベンジ」のチャンスがあると信じて、前田は結果を残し続けてきた。
セルティックでは加入した2021-22シーズンから国内リーグ4連覇を達成し、2022-23シーズンは国内3冠も成し遂げている。個人としても着実に実績を重ね、2024-25シーズンに大きな飛躍を遂げる。
3年連続での本戦出場となったUEFAチャンピオンズリーグでは4得点を挙げて、欧州最高峰の舞台でも爆発的なスピードと高い得点力を遺憾なく発揮。国内ではリーグ戦33試合で16ゴール10アシストを記録してセルティックの優勝に貢献し、個人ではリーグ年間MVPを受賞した。
さらにクラブの選手やファンが選ぶセルティック年間MVPやスコットランドプロサッカー選手協会(SPFA)に登録されている現役選手の投票によって選ばれるSPFA年間最優秀選手賞も受賞するなど、個人タイトルを総なめに。公式戦通算49試合に出場し33ゴール12アシストと、古橋亨梧が去ったチームで代役不在のエースへと成長した。
一方、日本代表では任される役割が変わった。森保一監督は2024年1月のAFCアジアカップでの準々決勝敗退後、同年6月から基本システムに3-4-2-1を採用することとなり、それまで1トップや左ウイングで起用されてきた前田は左ウイングバック(WB)という新たなポジションに挑戦することとなる。
最初はおぼつかなかった。特に慣れない守備でディフェンスラインまで下がった時のポジショニングや判断に戸惑い、持ち味を発揮しきれなかった。それでも回数を重ねるごとに適応し、今や左ウイングバックとして重要戦力の1人となっている。
常に高い位置を取りつつ、攻撃から守備に切り替わると相手の想定を上回るスピードでプレスバックし、足もとからボールをかっさらう。攻撃になれば再び爆速で相手ディフェンスラインの背後へ抜けて味方からのパスを引き出し、ドリブルで仕掛ける。そして、フルスプリントでの上下動を何度も繰り返せる前田の運動強度の高さは、他のウイングバックにはない唯一無二の武器だ。
「FWではないところでもプレーできるようにしておくのが大事だなと。もちろんFWでプレーするチャンスが来た時のための準備は常にしていますけど、4年間積み上げてきたものがやっぱりあるので、まずはウイングバックでしっかり準備したいと思っています」