連戦の町田はなぜ崩れない? キャプテン昌子が語るACLEの収穫と「次」のビジョン

大島和人

昌子源が町田のキャプテンとして果たしている役割は極めて大きい 【(C)J.LEAGUE】

 AFCチャンピオンズエリート(ACLE)は「終わってから」が大変な大会かもしれない。FC町田ゼルビアは4月25日(現地時間)にアル・アハリ(サウジアラビア)とACLE決勝を戦い、延長に突入する激闘の末0-1で敗れた。振り返ると、これが9連戦の3試合目だった。

 町田はそんな大連戦を本当によく戦っている。既に終えた7試合の中で「90分以内の負け」は一度もない。帰国後の4試合は2勝、1PK勝ち、1PK負けの勝ち点9という戦績で、EAST首位の鹿島アントラーズ、2位・FC東京に食らいついている。

 監督やコーチ、コンディショニングを担当しているスタッフの貢献は大きいが、誰より称えられるべきはキャプテン昌子源を中心とした選手たちだ。

9連戦も戦績に陰りなし

 町田が15日間のサウジアラビア遠征を終えて帰国したのは4月27日午後。28日は千葉県内に宿泊して調整し、29日は水戸ホーリーホックとのアウェイ戦に臨んだ。額面上は中3日だが、決勝の終了時間は日本時間にすると26日午前4時頃で、正確には「中58時間」だった。帰国2日目、3日目は時差ボケの調整が特に難しいタイミング。実際に選手の多くは睡眠不足の状態だったという。

 しかし町田は水戸戦を2-2(4PK3)で終えた。そのまま5月3日の鹿島アントラーズ戦(1△1/2PK4)、5月6日の横浜F・マリノス戦(2◯0)、5月10日のジェフ千葉戦(2◯0)と連戦を消化し、さらに5月13日の東京ヴェルディ戦、17日の川崎フロンターレ戦が待っている。

 サッカー界では「1週間に2試合以上ある」「中3日以内に試合がある」状況を『連戦』と表現する。町田は4月18日にACLEファイナルステージ準々決勝のアル・イテハド戦(1◯0)を戦ってから、中3日で準決勝シャバブ・アル・アハリ戦(1◯0)、中3日で決勝アル・アハリ・サウジFC戦(0●1)とサウジで3試合を戦った。帰国後は実質中2日の水戸戦、中3日の鹿島戦、中2日の横浜FM戦、中3日の千葉戦を終え、まだ「中2日の東京V戦」「中3日の川崎戦」が残っている。

 同じサウジ帰りのヴィッセル神戸が4試合で勝ち点3、1得点9失点と激しく落ち込んでいることと比較すれば、町田の「善戦」ぶりはよく伝わるだろう。

ACLEから得た刺激

町田はサウジでACLEファイナルズの3試合を戦い、帰国後もすぐ連戦に突入 【写真は共同】

 千葉戦は前半に2点を先制し、後半もしっかりと展開をコントロールして逃げ切る快勝だった。相馬勇紀、中山雄太、ネタ・ラヴィと連戦前後に負傷して欠場している主力は多く、ベストメンバーだったかと言えば違う。しかし今の町田は条件が悪くても結果をもぎ取るたくましさがある。

 理由はまず選手を入れ替えながら戦えるだけの選手層、戦術の浸透が今の町田にあるから。4月29日の水戸戦はACLE決勝から「十枚変え」の編成だったが、それでも勝ち点2をつかんだ。今季の補強は二人だけだったが、その二人(テテ・イェンギ、徳村楓大)がチームに大きく貢献している。特に徳村は高卒新人ながら帰国後の4試合中3試合に先発起用されていて、左ウイングバックの定位置確保も狙える状況だ。

 ただ選手に聞くと、それと別の理由も伝わってくる。昌子は試合後にこう語っていた。

「選手層はもしかしたら他のチームにない厚さは持っているのかなと思います。あと今回は戦争の影響で(アル・イテハドとの準々決勝は)サウジのチームが連戦やったじゃないですか。結果は勝ちましたけど、延長に行って中2日で俺らと戦っても、確かな技術と何かが彼らにはあったんです。(今の町田も)中2日、3日でもちろんしんどさはあるんですけど、これでへばっていたら彼らに勝てねえなと。勝っているんだけど、思い知らされた……。本当に、そういうところがいい経験になっています」

 前寛之はこう口にする

「決勝まで行って負けた喪失感と、ここからやらないと意味がないよねという危機感を一緒に感じていています。『あそこに戻るにはどうしたらいいの?』と考えると、今シーズンの優勝は勝ち点的になかなか難しいかもしれないですけど、自分たちの積み上げを少しでもやっていかなければいけない。(帰国後も)自分たちが強くなっていく、いいチームになっていくための努力を続けていけている実感があります」

 町田は2025年の天皇杯王者で、「アジア2位」の称号も手に入れたが、Jリーグでの最高成績は3位。選手たちはもっと上を目指す感覚を持っていて、「ハングリーさ」を高めてサウジから帰ってきた。

 サウジから帰国しても「一休み」という感覚を持たず、連戦を戦い切る、J1百年構想リーグで一つでも上の順位を狙うマインドへスムーズに切り替わった。そんなメンタリティも、善戦の大きな理由だろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、バレーボール、五輪種目と幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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