日本カーリングが要注意国→メダル常連国になるには? 五輪シーズン終え協会は2050年視野のプロジェクトを発足

竹田聡一郎

ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪で日本代表として出場したフォルティウスは8位に終わった 【写真:ロイター/アフロ】

日本代表としての国際経験の不足

 昨年夏の北海道ツアーを起点に考えると、11ヶ月におよんだカーリングの2025/26シーズンも、6月の日本選手権を残すのみとなった。

 チーム吉村としては初の大舞台となったフォルティウスの五輪出場や、それに向けた稚内での日本代表決定戦、さらに札幌でのオールスターゲーム初開催など、見どころの多いオリンピックシーズンではあった。

 しかし今季、日本代表として活動した各チームの成績を並べると、厳しい現実が見えてくる。

・パンコンチネンタルカーリング選手権(10月アメリカ・バージニア):女子5位/ロコ・ソラーレ、男子3位/SC軽井沢クラブ
・ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪(2月イタリア・コルティナ):女子8位/フォルティウス
・世界ジュニア選手権(2月デンマーク・トーンビー):女子7位/札幌国際大学、男子8位/チーム佐藤
・女子世界選手権(3月カナダ・カルガリー):4位/ロコ・ソラーレ
・男子世界選手権(3月アメリカ・オグデン):8位/SC軽井沢クラブ
・ミックスダブルス世界選手権(4月スイス・ジュネーブ):5位/小穴・青木
・ミックスダブルス世界ジュニア選手権(5月カナダ・エドモントン):優勝/三浦由唯菜・藤井海斗

  三浦由唯菜と藤井海斗ペアの金メダル獲得はかなり前向きなニュースだ。ミックスダブルスが五輪正式種目に採用された2018年よりのち、20代前半で日本選手権の決勝に立った選手は2024年の上野美優と前田拓海のみ。今回の三浦・藤井ペアの優勝で同世代の選手がダブルス挑戦の契機になればいい。

 それでも、SC軽井沢クラブの銅メダル獲得や、ロコ・ソラーレや小穴・青木のクオリファイ(決勝トーナメント進出)は健闘と言っていいが、世界一を決める大会で表彰台に上がるチームがいなかったのは望んだ結果ではないだろう。

 やはり特に男子代表とミックスダブルスでの五輪出場を逸したことは重く受け止めないといけない。

 上記のチームはいずれも日本国内での選考でフェアに選出されたチームではあり、海外遠征ができるチームが増えた日本の国内選考のレベルは世界的に見ても、もちろんチーム数や選考方法が違うが単純には比較できないが、大国カナダは別格としても、スイス、スウェーデン、スコットランド、韓国あたりの世界大会で結果を残した列強と同水準にあるだろう。

 では、なぜ「JAPAN」を冠したA代表が結果が出ないのか。

 例えば、SC軽井沢クラブの山口剛史は「世界選手権に継続して出ることで得るものがある」と語っていたことがある。小穴・青木の青木豪は12月の五輪最終予選で敗れて「日本代表としての国際経験の不足」を課題に挙げた。

 五輪や世界選手権の多くは国内大会や世界ツアーの試合のような専用施設でなく、アリーナのような大きな会場でやることがほとんどだ。気候や時間帯など様々な要因で起こる変化、いわゆる「アリーナアイス」への対応や、1日2試合が組まれる日がある一方、試合のない日もある独特のスケジュール。カナダや欧州などのアイスメーカーが作るアイスへの慣れ、大会中に研磨される石の情報更新、大歓声の中でのコミュニケーションの方法など、日本代表として挑む世界大会にはアジャストすべき項目が増える。それはやはり日本代表になって試合をしなければ実感できないものだ。そして国内選考のレベルが高いだけ、継続して日本代表に選出されにくい、というジレンマがある。

 さらに、来季から世界選手権の出場チームが18チームに拡大されることに伴い、アジアパシフィックや北中米地域の予選の役割も担っていたパンコンチネンタル選手権が廃止された。日本代表としての試合機会も失われることになる。

強化戦略室の発足

 各チームの強化と並行して行われるべきのA代表強化が大きな課題となったいま、日本カーリング協会は、これまでの強化委員会を解散し昨季から計画していた強化戦略室を来季から発足させる。強化トップの立場となる室長にはソチ五輪など五輪3度出場の小笠原歩が就き、長野五輪代表で北海道銀行フォルティウスや北海道銀行リラーズなどで指揮を執った佐藤浩、2025年に現役引退をした松村雄太など競技者としてのキャリアも持つメンバーが名を連ねた。

 2030年のフランス・アルプス五輪までに「世界チームランキングにおいて男子は30位以内に5チーム、女子は20位以内に5チーム、混合ダブルスは20位までに3チーム」、2050年までに「全ての種目の国際大会において常に表彰台の一角を占める」という長期的な目標を掲げる。

 具体的な施策はこれから明らかにされる見通しだが、ロコ・ソラーレの藤澤五月や鈴木夕湖は来季、3季ぶりにミックスダブルスに挑戦するなどのニュースも入ってきた。

 かねてから小笠原は「オリンピックで活躍することが最大の普及」と日本カーリングの進展を見守ってきた。開催国であった長野五輪から、自身が出場した2002年ソルトレイクシティ大会や2006年トリノ大会、本橋麻里(ロコ・ソラーレ理事)や石崎琴美(解説者)などが戦った2010年バンクーバー大会、出産を経て復帰した2014年ソチ大会、ロコ・ソラーレが初めて五輪でメダルを獲得した2018年平昌と2022年北京、そして今季は吉村紗也香らがバトンを託された。日本のカーリングにとって女子の五輪出場は生命線であり、それを多くの選手で繋いできた。それをもっともよく知る人物が強化のトップにいるのは間違いなくポジティブなことだ。

 現状を見つめ、足場を固め、トップからジュニアまでの幅広い強化を。簡単な道ではないが、複数の有力チームや、理解のある企業、熱意と技術を持った選手、支えてくれる多くのファンを持った日本のカーリングなら成し遂げられる。代表戦が減る中、多角的かつ広範囲で「JAPAN」は強くなっていかなければならない。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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