北中米W杯48チーム徹底分析「森保ジャパンの勝算は?」

三笘薫の負傷が選考に与える影響とカギを握るバックアップの顔ぶれは? 識者による「W杯26人枠予想」【MF・FW編】

構成:YOJI-GEN

メンバー発表まで1週間を切った段階で負傷してしまった三笘。それでも選出されるのか、森保監督の決断に注目が集まる 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 5月15日の日本代表メンバー26名の発表を前に実施したのは、佐藤景氏、竹内達也氏、舩木渉氏の3人のジャーナリストによる座談会形式での「26人枠予想」だ。北中米ワールドカップ(W杯)で優勝を目指すうえでのベストメンバーは? 前回の「GK・DF・ボランチ編」に続き、ここでは「MF・FW編」をお届けする。前十字靭帯断裂で長期離脱中の南野拓実に加え、ここに来て三笘薫まで負傷。ほかにもアタッカーのセクションに負傷者が少なくないだけに、識者も難しい選択を強いられたようだ。(文中敬称略)
GK予想
佐藤:早川友基、大迫敬介、鈴木彩艶
竹内:早川友基、大迫敬介、鈴木彩艶
舩木:早川友基、大迫敬介、鈴木彩艶

DF予想
佐藤:谷口彰悟、板倉滉、渡辺剛、冨安健洋、伊藤洋輝、瀬古歩夢、菅原由勢、鈴木淳之介
竹内:谷口彰悟、板倉滉、渡辺剛、冨安健洋、伊藤洋輝、瀬古歩夢、安藤智哉、鈴木淳之介
舩木:谷口彰悟、板倉滉、渡辺剛、冨安健洋、伊藤洋輝、菅原由勢、鈴木淳之介

ボランチ予想
佐藤:遠藤航、鎌田大地、田中碧、佐野海舟、藤田譲瑠チマ
竹内:遠藤航、鎌田大地、田中碧、佐野海舟
舩木:遠藤航、守田英正、鎌田大地、田中碧、佐野海舟

ロシアW杯以来のバックアップ招集か?

負傷者続出のため、バックアップメンバーを連れて行く可能性が浮上。その候補は、22歳の佐野航大(左)や19歳の佐藤龍之介(右)か 【Photo by Alan Harvey/SNS Group via Getty Images/Photo by Masashi Hara/Getty Images】

MF(サイドハーフ/シャドー)予想

佐藤:伊東純也、三笘薫、前田大然、堂安律、中村敬斗、久保建英、佐藤龍之介
竹内:伊東純也、三笘薫、前田大然、堂安律、中村敬斗、久保建英、鈴木唯人
舩木:伊東純也、三笘薫、堂安律、中村敬斗、久保建英、鈴木唯人、佐藤龍之介

(※年齢順、以下同)
――では、ここからはアタッカー陣を予想していきましょう。まずはミッドフィルダー(MF)から、3-4-2-1のサイドハーフ(ウイングバック)と2シャドーの人選をお願いします。右サイドの伊東純也(ヘンク)と堂安律(フランクフルト)、左サイドの中村敬斗(スタッド・ランス)と前田大然(セルティック)、シャドーの久保建英(ソシエダ)の選出は堅いと思いますが、ここに来て残念なニュースが飛び込んできました。三笘が5月9日のウルバーハンプトン戦で左太もも裏を傷めて途中交代。現状、負傷の詳しい状態は分かりませんが軽傷ではなさそうです。

竹内 僕はもし1〜2カ月程度で復帰できる可能性があるのなら、三笘も選ばれるんじゃないかと思っています。というのも、初戦の24時間前まで負傷によるメンバーの入れ替えができるので、まずは選出しておいて、ぎりぎりまで様子を見るんじゃないかと。18年のロシアW杯のときもそうだったじゃないですか。岡崎慎司や乾貴士ら負傷者が多かったので、バックアップメンバーとして若い浅野琢磨と井手口陽介をロシアに連れていった。結局、岡崎も乾も間に合って、浅野と井手口は開幕直前にチームを離れましたが、あのとき、森保さんもコーチとしてチームに帯同していたので、同じやり方をするのではないかと思います。

佐藤 僕も同じ考えですね。実際、三笘に限らず負傷者が多いわけだから、バックアップメンバーは連れていくでしょうね。

舩木 僕も同感です。それに最終的にメンバーに入れなくても、バックアップメンバーを経験するのも大きいですからね。浅野はそのときの悔しい思いを糧に4年間頑張って、前回のカタールW杯で活躍しましたから。

 そのカタールW杯ではメンバー発表の際に技術委員長の反町さんが「大所帯で合宿をして、気持ちの持ち方がまったく違うと難しい面もある」と発言し、バックアップメンバーを連れていきませんでした。26人の選考から漏れた選手の扱いは非常に難しいですが、今回の場合はカタールW杯当時と違って若手にも有力な候補が揃っているので、彼らにとっては経験価値の高いチャンスになるはずです。

 しかも、今大会はこれまでに比べてバックアップメンバーを選ぶことへのハードルが低いように感じます。5月末まで所属クラブで試合に出場する選手が多いため、5月31日のアイスランド戦のためだけに招集する選手もいるはずなので、ラージグループの中からバックアップメンバーを選ぶことにも合理性がありますよね。

――では、バックアップメンバーも含めて、予想するメンバーを聞かせてください。

竹内 僕は伊東純也、堂安、三笘、中村敬斗、前田、久保と鈴木唯人(フライブルク)の7人です。肩を骨折した鈴木唯人が間に合わない場合は、ボランチとシャドーの両方ができる藤田譲瑠チマ。そして、サポートメンバーとしては佐野航大(NEC)、佐藤龍之介(FC東京)を連れていくのではないかと予想します。もし、冨安や遠藤航ら、ほかのポジションで間に合わない選手が出たとしても、センターバックは厚めに予想しているので、この2人のどちらかをメンバー入りさせるイメージです。

佐藤 僕も三笘を含む鉄板の6人に、佐藤龍之介を加えました。龍之介の選出に関しては後ほど詳しく話すとして、サポートメンバーは佐野航大を考えています。

舩木 僕は前田大然をFW枠に入れたので、堂安、伊東、三笘、中村敬斗、久保の5人と鈴木唯人、佐藤龍之介の7人です。他のポジションにもコンディションに懸念のある選手がいるので、サポートメンバーは佐野航大と藤田譲瑠チマ、そしてFWのところで外した塩貝健人(ボルフスブルク)の3人を選びたいですね。3人とも所属クラブが入れ替え戦や欧州カップ戦出場権獲得のためのプレーオフに進む可能性があり、チーム合流は遅めになりそうですが……。

竹内 もちろん、三笘がいる、いないでは戦力的に大きく変わってくるのは間違いないんですが、ことシャドーができる人員ということで言えば、決して少なくはないんですよね。鎌田大地も譲瑠もシャドーができますし、攻撃にアクセントを加えたいとき、最近はフォワード(FW)タイプの選手をシャドーに入れて、攻撃の圧力を強めるやり方をしていますから。

 そもそもこのチームのシャドーで代役を探そうと思っても、簡単には務まらない。南野拓実のように、守備も高い強度でやりながらボールを収めて、裏にも抜け出してという、いわば「日本サッカーの最高到達点」とも言える2列目の選手はそう簡単には見いだせないと思っています。だから、もし試合中に選手を変更したり、ターンオーバーをするとしたら、普通に2トップにするんじゃないかと。中盤は3ボランチ気味にして。それで前線に厚みを付けて、前線は難しいことはしなくていいから、体を張ってボールを収めて、そこから攻撃を作り直すというような。

 また、W杯の試合は時間の経過とともに“身長ゲー”になっていく側面があるので、シャドー専門の選手を選びにくいとも思っています。ピッチ内に身長の低い選手がいればいるほど、相手が長身選手を入れてきたときにセットプレーなどで劣勢に陥る状況になりかねない。特に今回は大型選手が多いオランダ、スウェーデンと同じグループですからね。相手が185センチ以上の長身選手をどんどん投入してきたとき、こちらに170センチ台の選手が多く並んでいたりすると、センターバックの選手は競り合えても、5~6番目のマッチアップで明確なウイークポイントになってしまう。ですから、ここには本当に信頼できる選手だけを置いて、その選手が疲弊してきたら、一定の身長があるFWタイプをシャドー起用してやり繰りしていくんじゃないかと。

――これを受けて、佐藤さんはどうですか?

佐藤 3月のイングランド戦(1-0で勝利)で、堂安、伊東、三笘、中村敬斗をスタメンで2列目に並べて成果を得たじゃないですか。あれはたぶん、森保(一)さんはずっとやりたかったことだと思うんですよ。シャドーとウイングバックが激しくポジションチェンジを繰り返しながら、オーバーラップを仕掛けていくような攻めの形を、あそこで試せたのはけっこう意味があると思っています。

 イングランド戦後、そのテストについて森保さんに尋ねてみたんです。「本大会のために“隠す”ということは考えないんですか?」と。そうしたら、「隠して本番で成功する確率を考えるよりも、たとえ研究されたとしても実戦で試しておいたほうが絶対に実りはある」という言い方をしたんです。だとしたら、もうこの4人は鉄板ですよね。

 あとは、怪我が治った久保は当然入るでしょうし、前田も相手のキッカーを捕獲する役割とともに絶対に必要な選手です。裏に抜けてボールを引き出すプレーで前線を活性化できる前田は1トップでも使えますし、前回大会のクロアチア戦(ラウンド16)でゴールを決めたみたいに、何か大きな仕事をやってくれそうな選手でもありますから。

――では、佐藤龍之介の選出に関して、聞かせてください。

佐藤 実はもともと相馬勇紀(FC町田ゼルビア)を予想していたんです。というのも、イングランド戦で先発した4人以外に、シャドーとウイングバックをポジションチェンジしながらプレーできる選手ってほかに誰がいるかと考えたとき、相馬だなと。昨年11月の代表戦は町田のスケジュールがタイトだったので、呼ばれませんでしたけど、10月の2試合(パラグアイ戦、ブラジル戦)では、実際に途中出場でシャドーとウイングバックの両方で使われていますからね。

 あと、左から大きいサイドチェンジができる選手ってなかなかいないんですが、相馬ならそれができる。そういう意味でも重用されるんじゃないかと。前回大会で唯一出場したコスタリカ戦で悔しい思いも味わいましたから。

 ところが、ACLで負傷してしまったようで、その後の百年構想リーグでの欠場を余儀なくされていて、現状では選出は難しいかなと。そこで同じくシャドーとウイングバックを代表チームでこなした経験があり、FC東京で好調を維持している佐藤龍之介を代わりに選びました。鈴木唯人も、間に合うなら可能性は十分あると思いますし、三笘の状態次第でメンバー入りの確率は高まりますが。

――舩木さんも佐藤龍之介を選出しています。さらに、負傷した鈴木唯人も選びましたね。

舩木 実は僕も相馬を考えていました。相馬は今、Jリーグで一番いいプレーをしているアタッカーの1人だし、景さんが言うようにウイングバックとシャドーの両方できて、経験もあって、控えであっても淡々とやれるタイプで、両サイドにも対応可能と、とにかく条件がそろっている。なので、ここに来ての負傷は残念です。復帰はW杯のメンバー発表後にずれ込むのではないかとも聞いているので、2大会連続でのW杯出場は難しそうですね。

 相馬の代わりに佐藤龍之介を選んだ理由は、景さんと同じです。年始にU23アジアカップに出場してエンジン全開の大活躍を披露した影響か、百年構想リーグ序盤は少し出遅れましたが、コンディションが上がってからは「チームを勝たせる選手」として十分すぎる働きをしています。Jリーグでゴールを量産している木村勇大(名古屋グランパス)も“サプライズ”の候補として検討しましたが、最終的には国際舞台での経験値と若さ、汎用性という点を重視して佐藤龍之介を選びました。

 鈴木唯人に関しては、南野の代わりができる唯一の選手かもしれないと僕は思っていて。この1年で明らかに守備の強度と戦術理解力が向上しましたし、フライブルクでも後半戦では不動の存在になりました。だからこそ、負傷は残念でしたが、すぐに手術を決断したということはW杯に間に合う可能性があるからではないかなと。鎖骨の骨折なので接触プレーに不安はあるでしょうが、年齢的(24歳)にもパリ五輪世代で、ここで一度W杯を経験させておくのは、次につながるという意味でも価値があると思うんです。あと、鈴木唯人は僕の地元の隣町出身というのもあり、共通の知人もいるので個人的にめちゃくちゃ期待しています(笑)

前田を左ウイングバックで使う意味

すっかり左ウイングバックでの起用がメインになった前田。背後に抜けるスピードなど他にはない武器を持つだけに、森保監督の信頼は揺るがない 【Photo by Ian MacNicol/Getty Images】

――三笘は連れていくとして、南野の招集はやはり難しそうですか?

佐藤 そうでしょうね。

竹内 ここで戻ってきたら、それこそ快挙だと思うんですが、一方で南野がいる場合のやり方を、ここからまた考えるのは難しい状況かなと。それに、森保さんも英国遠征が終わった後に、「(復帰できたとしたら)2、3試合は見たい」と言っていましたから、そうなるともうスケジュール的にも間に合わない。前十字靭帯の断裂は、再発のリスクが非常に高い怪我でもありますからね。今後のキャリアも考えて、無理はさせないと思います。

佐藤 僕は見たかったけどね。人徳があって、チームメイトの信頼も厚いから。

竹内 それはもう間違いなく。

舩木 可能なのかどうかはわかりませんが、リハビリをしながらチームに帯同してくれるだけでもメンタルリーダーとして大きな力になるんじゃないでしょうか。前回大会で優勝したアルゼンチン代表におけるセルヒオ・アグエロのように。

――2列目の選手が自由にポジションを入れ替えるとして、ベースの立ち位置はどうなりますか? イングランド戦では左サイドは三笘が中で中村敬斗が外、右サイドは伊東純也が中で堂安が外でしたが、中村敬斗のほうが狭い局面で小技がきくし、三笘はスペースがあったほうがいい。右サイドでは、堂安よりも機動力のある伊東純也を外で使ったほうがいい、という考えはありませんか? 堂安をサイドで上下動させて疲弊させしまうのは、もったいない気がしますが。

舩木 右サイドに関して1つ言えるのは、森保さんが堂安の守備力を買っているということです。その点に関しては、伊東純也よりも間違いなく上ですから。それに伊東純也は足首に問題を抱えていて、サイドであの上下動をやらせ続けたら、壊れてしまいかねない。

佐藤 それもあって、右サイドに僕は菅原を選んだんです。

舩木 伊東純也は時間限定とか、あるいはタスク限定で使ったほうが、より力を発揮できると思います。

佐藤 左サイドでは、三笘がプレーできるのなら、シャドーでの起用は魅力的ですよ。あのトラップ力が生きますからね。

竹内 ブライトンでもストライカー的な役割を担うようになって、決定力も目に見えて上がってきていますからね。

――ティエリ・アンリやクリスティアーノ・ロナウドみたいに、ウインガーからストライカーに変貌を遂げている?

竹内 そうですね。単独で仕掛けるシーンは、以前に比べて減ってきています。それはたぶん、以前の怪我の影響もあると思うんですが、今の日本代表において、三笘はより欠かせない選手になっているので、彼を消耗させずにいかに長くピッチに立たせられるかというところも、けっこう大事なポイントでした。とはいえ、このフィニッシャー的な役割はもし本大会で長い時間プレーできなくても生きてくると思うので、やはりプレーできる可能性があるのならいてほしい選手なのは間違いありません。

――昔みたいに単独でのドリブル突破を期待するのではなく、イングランド戦のように、三笘をどうフィニッシュに絡ませるか。

舩木 今の代表で一番シュートが上手い選手ですからね。ウイングバックよりもゴールに近い位置でフィニッシュの局面に絡める回数を増やしたほうが、相手の脅威になれると思います。

 ただ、三笘は本当に“持ってない”なと。カタールW杯や24年のアジアカップ、東京五輪でも大会直前の負傷を抱えたままチームに合流しました。世代別代表ではアジア競技大会やトゥーロン国際大会の期間中に体調を崩してプレーできなくなったこともあります。大舞台で何度も印象的な活躍を披露してきたのは間違いないですが、国際大会へ臨むにあたってこれほど不運に見舞われる選手はそういないですよね……。

――なるほど、なおさら今大会では間に合わせて、活躍してほしいですね。では、舩木さんはFW枠ですが、みなさんが名前を挙げている前田大然について聞かせてください。代表チームではこのところFWではなく左ウイングバックで起用され続けていますが、その狙いはどこにあると思いますか?

竹内 守備での貢献、特にプレスバックからのインターセプト能力じゃないでしょうか。高い位置を取りながら、相手の想定を上回るスピードで戻ってインターセプトができるし、そこから攻撃が始まるパターンが、彼がウイングバックで出ている試合ではよく見られますからね。

 なおかつ、押し上げのスライドも、僕は前田大然と堂安が一番上手いと思っています。中村敬斗も対人守備が意外と上手いんですが、縦へのスライドの速さはやっぱり前田が上なんです。森保ジャパンはカウンタープレスのチームですから、それが得意な選手がウイングバックにいるというのは非常に大きいと思います。

舩木 僕は前田をFWに入れましたけど、彼の左ウイングバックとしての唯一無二の武器は、背後に抜けてボールを受けて仕掛けられるところ。そして何度でも動き直せて、スプリントを繰り返しても全くヘタらない異次元の運動能力とスピード。あれは誰にも真似できない。

佐藤 森保さんの前田に対する信頼は揺るがないと思いますよ。

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