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敗戦のなかでも復調の兆しを見せた三笘 リバプールの無気力とマンU・キャリック監督の未来

森昌利

三笘はニューカッスル戦の開始2分にいきなり見せ場を作った 【Photo by Stu Forster/Getty Images】

 シーズン佳境のプレミアリーグで三笘薫が復調していることをうかがわせた。5月2日(現地時間)、第35節のニューカッスル戦。1つの引き分けを挟んで4連勝中と好調のブライトンは、開始から相手を押し込みながらカウンターを食らって失点を重ね、1-3で敗れた。それでも日本代表MFは開始早々にビッグチャンスをもたらすなど、随所に輝きを放った。ワールドカップに向けて明るい材料だ。

ブライトン優勢の展開が一瞬にして崩れて…

「そうですけど、1対1で負けるシーンも多かったですし、まあ、ああいうカウンターのシーンを作られたくなかったなかで、何度もやられたところがあった。相手のやりたいことをやられた感じですね」

 ニューカッスル戦直後に三笘薫が開口一番放った「そうですけど」という言葉は、筆者の「力負けではなかったと思うが」という問いにかかっていた。

 かつて武藤嘉紀が所属したことで、今も顔見知りが多いニューカッスルだが、地元紙クロニカルのリー・ライダー記者が筆者の顔を見ると、すかさず「今日はブライトンの勝ちかい?」と話しかけてきた。

 そのクオリティを考えると、本来であれば欧州チャンピオンズリーグ出場権をかけて戦っていなければならないニューカッスルが、今季は不振に陥って二桁順位でもがいており、前節のチェルシー戦で3-0勝利を飾ったブライトンとの対戦を前に、リーが「分が悪い」と思ったのも無理はない。

 そして試合開始のホイッスルが鳴ってわずか2分後、GKバルト・フェルブルッヘンからのロングボールを左サイドで受けた三笘が右足のトラップで切り返して、20歳の巨漢右サイドバック、ルイス・マイリーのマークを簡単に外し、“必ず味方が走り込む”と確信したかのように右足でゴール前にボールを送り込むと、トップ下のジャック・ヒンシェルウッドが見事にそこに飛び込んできて、右足を合わせた。 

 しかしこのシュートはニューカッスルGKニック・ポープが左に横っ飛びしてセーブ。三笘が作った絶好機は阻まれたが、まるで試合前のリーの予感が的中したかのような幕開けだった。

 この後もボールがつながるのはブライトン。わずかに枠を外したが、カルロス・バレバの豪快なミドルシュートも飛び出し、このニューカッスル戦でも勝利して、前節に奪取したヨーロッパリーグ出場権を得られる単独6位の地位を守ると思った。

 しかしフットボールというのは分からない。

 ブライトン優勢の展開が一瞬にして崩れたのが前半12分。フェルブルッヘンの飛び出しが裏目に出て、無人となったゴールにヘディングを叩き込まれて、ニューカッスルに先制を許した。 

 三笘が「ああいうカウンター」と言った最初の形だった。

 ニューカッスル主将のブルーノ・ギマランイスが、右サイドの最終ラインの裏に放ったサイドチェンジのパスをオランダ代表GKが深追いしたことがゴールにつながった。日本とW杯の初戦で当たるオランダのGKフェルブルッヘンは、身体能力は抜群だがまだ23歳と若く、こういう判断ミスが時折ある。

三笘自身がコンディションは「徐々に上がっています」と発言

三笘(右)は怪我から復帰して5戦目で初のフル出場。本人も言うようにコンディションは着実に上向いている 【写真:ロイター/アフロ】

 もともとニューカッスルには能力のある選手が集まっている。それがこの先制点により、セントジェームズ・パークを埋めた5万人のサポーターの熱狂にも後押しされてチームが自信を得た。

 ゴールは試合の流れを大きく変える。奪った側に自信を与え、奪われた側は恐怖を覚える。

 この後、フィジカルが強いニューカッスルの選手たちがコンパクトに守り、ボールを奪い返すとそこから素早くカウンターを仕掛けた。そうやってカウンターで押し上げてコーナーキックを奪った前半24分、ニューカッスルが2点目を決めた。

 お手本とも言えるコーナーキックからの得点だった。ニアに走った198センチのイングランド代表DFダン・バーンが、鋭く頭を振ってボールを対角線上に飛ばし、見事なゴールを決めた。

 ブライトンはあっという間に0-2にされて窮地に陥った。後半、左の三笘と右のヤンクバ・ミンテのポジションを入れ替えたが、ピッチの中央寄りでプレーした三笘のタッチ数がガクッと減った。

「全体的にはうまくいってたと思います。ポジションによっては前進できてましたし、(ブライトンが)1点取るまではうまくいきました。そこから何をしたら良かったのかは、少し難しいですけど。相手がマンツーマンにこないところと、後ろからしっかり前進できるポジションと、相手がプレスに来られないところでは行けたんで、そこは作れて良かったですけど。そこから最後のところですね」

 右に移って、三笘が際立った見せ場を作れなかったのは、皮肉にも後半16分にヒンシェルウッドが1点を返したことで、ニューカッスルのフィジカルな中盤が危険エリアのスペースを必死に消しにきたことが原因だった。問答無用なタックルも繰り出してきた。無論、三笘が自由に動けるスペースが激減した。

 それでも28歳日本代表は、相手のわずかな隙を突いて、なんとかチャンスを作ろうと試みた。しかし本人も言うように、相手にラストサードを固められ、決定機を生み出せなかった。

 後半アディショナルタイム5分にまたしてもカウンターで3点目を奪われたが、これは2-2のドローを目指して押し上げた結果、裏に大きなスペースが生まれたからだ。だからして、ニューカッスルが2点差勝利に値する強さを発揮したとは思わない。ブライトンが力負けしたという印象はなかった。

 この敗戦からポジティブな材料を探せば、それはやはり三笘の復調だろう。本人もコンディションについて「徐々に上がっています」と話した。そしてこの試合で90分フル出場を果たし、左、右、そしてトップ下と複数のポジションをこなした多様性については「求められるところはなんでもできるようにはしたいと思ってやってる」とコメント。アタッカーとしてさらに成長していることを実感しているようだった。

 ただし、この一戦はブライトンにとって必勝の試合だった。確かにクオリティの高いニューカッスルとのアウェー戦は難しい。しかしこういう試合を勝たないと、欧州カップ戦の出場権には手が届かない。

 最終的には三笘の野心と釣り合う結果を勝ち取ってヨーロッパの舞台に行ってほしいが、ブライトンは若手を重用し、育てて、有力選手になると売却して利益を上げるクラブ。結局はそうしたクラブの姿勢が、このような正念場で勝てない要因でもあるのではないかと思った。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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