週刊MLBレポート2026(毎週木曜日更新)

好投続ける大谷翔平の“浮かない”4シームのメカニズム 打者としての「復調の兆し」を読み解く鍵とは?

丹羽政善

4月28日(※日時はすべて現地時間)、大谷は5戦連続QSを達成。防御率0.60は堂々のリーグ1位 【写真は共同】

なぜ大谷の4シームは“浮かない”のか?

 先日のジャイアンツ戦(22日)。大谷翔平が二回裏、エリオト・ラモスに投じた3球目の4シームが2806回転(分、以下同)を記録した。2度目のトミー・ジョン手術から復帰後は、4シームの平均回転数が2400回転を超え、今年は2500回転近い。もっともそれで「大谷の4シームは回転数が高い。だから揚力が働き、ホップするような軌道となって、空振りをとれる」と結論づけるのは、あまりにも短絡的。

 そもそも、野球のボールが物理的にホップすることはない。それは打者の錯覚に過ぎない。感覚ではなく、ファクトベースの話をするなら、大谷の4シームはむしろ、“浮かない”として知られている。縦の変化量そのものは、リーグの平均以下――回転数が、上がったとしても。

 MLB独自のトラッキングシステム「STATCAST」のデータが検索できるBaseball Savantによると、今季の大谷の縦の変化量(※)は平均で14.7インチ。昨季は14.5インチなのでほぼ変わらず、MLBの順位的には266位タイ。MLB平均は16.2インチ。トップは、アレックス・ベシアの21.3インチ(すべて27日現在)。

(※)変化量:無重力という想定で回転数や回転効率などによって生じた変化量を無回転の場合の軌道(基準)と比較し、その差を求めたもの。重力などを加味したトータルな変化ではなく、純粋に球質のみ評価することで、他の投手との比較も可能となる。大谷の4シームの場合、本来よりも14.7インチ“落ちない”というのが正しい表現となる。

 そもそも変化量は回転数だけでは判断できず、回転効率、回転方向、縫い目の影響が関わってくるので、4シームの球質で回転数にことさら注目することは、あまり意味がない。

 では、なぜ大谷の4シームは“浮かない”のか。それは、70%台という低い回転効率が影響している。昨季は78%だったが、今年は75.6%。順位としてはリーグ341位。今永昇太(98%)、山本由伸(93%)、佐々木朗希(95%)らと比べても低く、冒頭で触れたジャイアンツ戦での平均は78%で、MLBの中央値は89.8%だ。

 回転効率が大きいということは(100%であれば、回転軸が進行方向に対して90度)、マグヌス効果が働き、それが揚力となるが、回転効率が低い場合はジャイロ成分が働き(回転軸が進行方向と一致すれば、ジャイロ回転)、マグヌス効果を打ち消す。大谷がラモスに投じた1球の縦の変化量は17インチ。2800回転を超えても、わずかに平均を上回る程度なのである。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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