好投続ける大谷翔平の“浮かない”4シームのメカニズム 打者としての「復調の兆し」を読み解く鍵とは?
なぜ大谷の4シームは“浮かない”のか?
そもそも、野球のボールが物理的にホップすることはない。それは打者の錯覚に過ぎない。感覚ではなく、ファクトベースの話をするなら、大谷の4シームはむしろ、“浮かない”として知られている。縦の変化量そのものは、リーグの平均以下――回転数が、上がったとしても。
MLB独自のトラッキングシステム「STATCAST」のデータが検索できるBaseball Savantによると、今季の大谷の縦の変化量(※)は平均で14.7インチ。昨季は14.5インチなのでほぼ変わらず、MLBの順位的には266位タイ。MLB平均は16.2インチ。トップは、アレックス・ベシアの21.3インチ(すべて27日現在)。
(※)変化量:無重力という想定で回転数や回転効率などによって生じた変化量を無回転の場合の軌道(基準)と比較し、その差を求めたもの。重力などを加味したトータルな変化ではなく、純粋に球質のみ評価することで、他の投手との比較も可能となる。大谷の4シームの場合、本来よりも14.7インチ“落ちない”というのが正しい表現となる。
そもそも変化量は回転数だけでは判断できず、回転効率、回転方向、縫い目の影響が関わってくるので、4シームの球質で回転数にことさら注目することは、あまり意味がない。
では、なぜ大谷の4シームは“浮かない”のか。それは、70%台という低い回転効率が影響している。昨季は78%だったが、今年は75.6%。順位としてはリーグ341位。今永昇太(98%)、山本由伸(93%)、佐々木朗希(95%)らと比べても低く、冒頭で触れたジャイアンツ戦での平均は78%で、MLBの中央値は89.8%だ。
回転効率が大きいということは(100%であれば、回転軸が進行方向に対して90度)、マグヌス効果が働き、それが揚力となるが、回転効率が低い場合はジャイロ成分が働き(回転軸が進行方向と一致すれば、ジャイロ回転)、マグヌス効果を打ち消す。大谷がラモスに投じた1球の縦の変化量は17インチ。2800回転を超えても、わずかに平均を上回る程度なのである。