5.2東京D決戦を日本S・バンタム級王者が展望 井上優勢予想も、中谷勝利は「KO決着しかない」

船橋真二郎

世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(左)と世界3階級制覇王者の中谷潤人による「世紀の日本人対決」が目前に迫っている 【©Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA】

 ボクシングの「世紀の日本人対決」がいよいよ目前に迫ってきた。5月2日、東京ドームで行われる世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋/32勝27KO無敗)とWBA、WBC、WBO同級1位の中谷潤人(M.T/32勝24KO無敗)による対戦は、国内外から大きな注目を浴びている。

「THE DAY」と銘打たれた東京ドーム決戦は、同時にスーパーバンタム級の今後を左右する「運命の日」となる。世界戦レベルは言わずもがな、国内においても多くの実力者がひしめき合う同階級。1月13日に行われた日本スーパーバンタム級タイトルマッチでは、挑戦者の池側純(角海老宝石)が、王者・石井渡士也(RE:BOOT)をTKOで破り国内の頂点に立った。

 5.2東京ドームの世界戦でも国内戦と同様に“政権交代”は起こるのだろうか。今回は国内のスーパーバンタム級のタイトルを競った池側、石井の両選手、並びに両ジムの関係者に「世紀の日本人対決」についての見解を聞いた。そして、ライバル関係にある池側、石井の今後について語ってもらった。

「5.2東京D決戦」はSバンタム級の重要な分岐点

群雄割拠の時代か、はたまた新たな支配者による新時代か。井上(左)と中谷の頂上決戦は、スーパーバンタム級の今後を占う一戦でもある 【©Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA】

 日本人同士による頂上決戦の予想は、井上優位に大きく傾いているようだ。現役・元選手、トレーナー、記者など、筆者が聞いた限りでは、中谷優位の声は聞かれなかった。日本ボクシング史上最高傑作という評価にふさわしい力を見せ、偉大な実績を築いてきたのだから、それも当然か。

 勝敗の行方が大方の予想通りなら、その後、井上はフェザー級への転級が想定されている。そうなれば、空位となる世界スーパーバンタム級の4つの王座をめぐる争いが激化し、群雄割拠の時代が到来することになるだろう。

 井上相手に爪痕を残したラモン・カルデナス(米国)、井上の技巧に封じられた元WBA・IBF同級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、転級初戦の中谷にタフな戦いと経験値をもたらしたセバスチャン・エルナンデス(メキシコ)……。

 中谷とのバンタム級王座統一戦に敗れた後、階級を上げてIBF次期挑戦権をつかんだ西田凌佑(六島)、世界を見据えて4戦連続KO防衛を果たした東洋太平洋王座を返上した中嶋一輝(大橋)、階級変更も視野に東京ドームでテストマッチに臨む前WBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)。その時を国内外の精鋭が手ぐすね引いて待っている。

 一方、世紀の一戦が大方の予想を覆す事態になった場合、中谷が世界スーパーバンタム級4団体の新たな支配者となる。新時代の扉を開く可能性はあるのだろうかーー。

 あらためてボクシングは分からない、勝負に絶対はないという鉄則を示す、静かだが確かなうねりである。「運命の日」を迎えた2026年、スーパーバンタム級戦線には王者が入れ替わる流れが生じている。

ボクシングは分からない……王座交代が続出

<小國以載&村田昴>対戦発表会見で顔を合わせたときの村田昴(左)と小國以載。この試合は村田が勝利も1年後は……(2025年4月22日) 【写真:船橋真二郎】

 記憶に新しいビッグサプライズは2026年4月3日、元IBF世界スーパーバンタム級王者の小國以載(角海老宝石)が元WBA・IBF同級王者のマーロン・タパレス(比)を判定で撃破した一戦になるだろう。すでに37歳。負ければ最後の崖っぷちで、久しぶりに小國らしい戦略的なボクシングを見せ、世界3団体で上位につけていた実力者を見事に攻略した。

 一方で、井上と中谷の頂上決戦後の世界スーパーバンタム級先陣争いに加わると有力視されていたのが村田昴(現KOBE長谷川※3月5日付けで帝拳より移籍)だった。10戦全勝全KOを誇ったWBOアジアパシフィック王者は2月7日、伏兵ガブリエル・サンティシマ(フィリピン)にまさかの判定負け。王座から陥落し、4団体の世界ランクも失った。

 2025年5月、村田は小國を6回TKOで退け、新旧交代劇を演じていた。両者が描いた明暗は、誰も想像しなかった未来だろう。村田は帝拳ジムから長谷川穂積さんのジムに移籍。ジム第1号のプロとして心機一転、巻き返しをはかる。

 こうしたスーパーバンタム級の多くの交代劇の流れを振り返ると、2026年1月13日の年明けに行われた日本タイトルマッチが始まりだった。

 2025年4月の日本王座決定戦から2戦続けてKO勝ち。先行するトップ陣を追う一番手と目されていたのが石井渡士也(RE:BOOT、25歳/10勝7KO2敗1分)だった。

 2度目の防衛戦で迎えた当時1位の池側純(角海老宝石、28歳/9勝3KO1敗3分)とは過去に1勝1分。下馬評は王者に傾いていた。しかし、石井のポイントリードで迎えた終盤9回、池側が逆転KO勝ち。鮮烈な王座交代劇となった。

<石井渡士也&池側純>2度目の対戦の前日計量をクリアした石井渡士也(左)と池側純。通算1勝1敗1分で決着戦も見据える(2024年10月16日) 【写真:船橋真二郎】

 失意の石井には6月7日、大阪で山﨑海斗(六島)とのOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王座決定戦が決定した。再起戦でめぐってきた失地回復の好機に「久々にギラギラした感じが出てきた」と燃えている。

 池側、石井の対戦成績は通算1勝1敗1分。ともにここから世界を目指し、決着戦となる将来の4戦目も見据える。ノンタイトル戦に始まり、日本タイトル挑戦者決定戦、日本タイトルマッチと戦うステージを上げてきた。次に交わるのは、どこになるか。

 国内からの飛躍を目指す両陣営が「THE DAY」後の未来に望むのは、よりチャンスが広がるだろう混とんの状況。つまり井上の勝利なのだが。

 池側は「正直、9-1とか、それぐらいの差があると思う。10回やって、1回あるか」と、まずは中谷に厳しい見立て。阿部弘幸トレーナーも「スピード、パンチ力、総合的に見て、井上選手が全部上回っている」と分析する。それでも「(中谷は)その1回をつかみに行ける選手ではある。だから、面白い」と池側は同い年で同じサウスポーへの期待感も付け加えた。
 
 井上、中谷と十代の頃からスパーリングで手合わせしていた石井は「お互いにムダな動きができない技術戦」を予想。攻撃力、パンチ力に焦点が当てられがちだが、両者の「ディフェンス力の高さ」を指摘する。能力値で見ると井上の「完封」という射場哲也会長は、中谷とルディ・エルナンデス・トレーナーの強固な師弟関係に言及。「ルディの指示は何でもやる」という作戦遂行力に「どっちが勝つとは、自分は言い切れない」と語る。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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