“やや人見知り”徐若熙を支える鷹の仲間たち 「世界を代表する投手へ」野球だけじゃない進化の日々

田尻耕太郎

【写真は共同】

7失点KOも垣間見えた仲間たちの気遣い

 徐若熙は4月17日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)に先発するも1回2/3で60球を費やし、6安打1三振5四死球7失点でノックアウト。ソフトバンク移籍後3度目の先発で初めて“挫折”を味わい、リリーフ陣も打ち込まれて4-13と大敗したため2敗目(1勝)を喫した。防御率は試合前の0.69から4.91と大幅に悪化した。

 出鼻をくじかれた。初回はオリックスの宗佑磨に初球先頭打者ホームランを浴びると、その後2つの四球でピンチを背負い太田椋には右前適時打を許していきなり2点を失った。

「両サイドにきちんとコントロールが出来ませんでした」

 2イニング目も制球に苦しんだ。そして再び太田に痛打された。2点を奪われてなおも2回表2アウト一、二塁、2ボール0ストライクからの高めの直球を左翼席へ運ばれる3ラン本塁打を運ばれた。この回は一挙に5点を追加され、なおも走者を溜めたところで降板。

「ストライクが欲しい場面では、その球を一発で仕留められました」

 マウンドからダグアウトに戻った徐若熙はベンチに腰掛けると、ペットボトルの水を口に含んでグラウンドをじっと見つめていた。普段と変わらないポーカーフェイスだったが、少なからずショックを受けているようには見えた。

 その後のロッカールームでは、ソフトバンクのチームメイトたちが徐若熙を気遣って声を掛けたという。徐若熙は口数が少なくやや人見知りだが、新しい仲間との良好な関係は順調に築きつつある。

海外を経験した上沢が率いた歓迎会

 3月、転機があった。

 台湾代表でWBCを戦い、ソフトバンクに合流してすぐのことだ。先発投手たちが徐若熙の歓迎会と称して食事会を開いたのだ。発案者は上沢直之と松本晴。2人が練習中に思いつき、すぐに上沢が日程や店選びを率先して行った。

 上沢は言う。

「ルオシー(徐若熙)は海外でプレーするのも生活するのも初めて。日本語も分からないし、苦労も不安もあると思います。僕自身も一昨年アメリカでプレーをした経験があるので彼の気持ちもわかる。そんなとき、チームメイトや周りの人が気にかけてくれてすごく心強かったから」

 数日後、福岡市内の焼鳥店でそれは催された。オープン戦の登板日程の都合で来られなかった選手もいたが、上沢、松本晴、大津亮介、上茶谷大河、スチュワートJr.、米国語の球団通訳が駆け付け、徐若熙と張為瀚通訳(今季ソフトバンクに入団)をもてなした。上沢は「焼鳥は日本でポピュラーだし、味付けもシンプルだから苦手な人は少ないはず」との理由で店を選んだという。徐若熙は何本も串を頬張り、アジフライなども喜んで胃袋に詰め込んだ。

「上沢さんから焼鳥と寿司はどっちがいい?と聞かれたので、焼鳥をリクエストしました。今度はお寿司に連れて行ってもらいたいです」

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著者プロフィール

1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月に独立後も、ホークスを中心に九州・福岡を拠点に現場取材を続ける。『Number』(文藝春秋)『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、ニュースレター『田尻耕太郎の鷹バン!』(the Letter)を運営。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、プロゴルファーらが参加する「鴻江合宿」の運営サポートもライフワークにしている。

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