SVリーグ初制覇、SAGA久光スプリングスの「最高の形」 25歳のミドルブロッカー・平山詩嫣の真髄

田中夕子

【写真提供:SV.LEAGUE】

1戦目45.7%→2戦目29.6%

 狙い通りの展開だった。

 相手は連覇を狙う試合巧者の大阪マーヴェラス。田中瑞稀、林琴奈の両エースをいかに抑えるか。SAGA久光スプリングスのミドルブロッカー、平山詩嫣(しおん)は心を燃やしながらも頭は冷静に。叩き込んだ映像やデータを重ねながらも、目の前の動きからヒントを逃さなかった。

「必ず選手にはクセがある。パスをしてから真っすぐ入ってきた時はライン側に打つとか、そういう小さいことも逃さず1回1回、隣の人や後ろの選手に伝える。2枚時だから、3枚時だからこうしようとおおざっぱにするのではなく、1つ1つ細かく伝えて、開けたコースはレシーブで上げてもらう。その連携が、今日は集大成としてできていました」

 1戦目では45.7%のスパイク決定率を残した田中を、2戦目は29.6%まで抑え込んだ。ファイナル前日、実は平山が最も警戒していた相手であり、対戦を楽しみにしていたのも田中だ。

「マーヴェラスはとにかく粘り強いし、レシーブの後も必ず攻撃に参加してくる勤勉で素晴らしいチーム。地道に重ねることが勝ちにつながると知っているだけじゃなく、レフトの田中さんと林さんは、ブロックに跳びながら『うまっ』と思うぐらい、本当に上手で絶対にクロスだと思ったところからラインも狙われる。とにかくすごい、に尽きるんですけど、でもそこは切り替えながら。決め球、攻め方のデータは出ているので、それも頭に入れながら、駆け引きを楽しみたいし、勝負したいです」

 まさに有言実行だが歓喜と安堵の涙にたどり着くまでの道のりは、決して簡単ではなかった。

プロ選手としての“魅せる”意識

【写真提供:SV.LEAGUE】

「当たり前を当たり前に」を信条に、小さくまとまるのではなく、高さを活かしたダイナミックなプレーも持ち味とする。東九州龍谷高時代から次世代を担う存在として注目を集め、2022年には日本代表にも選出された。決して派手なタイプではないが、着実に仕事を果たす。「相手のセッターが一番嫌がるプレーをしたい」というように、常にどんな攻撃に対してもコースを塞ぎ、タッチをとってチャンスにつなぐ。相手セッターにとっても、スパイカーにとっても、むしろ一発で決められるよりも嫌な仕事を堅実に果たす、見事な仕事人と言うべき選手だ。

 コートの中で見せる姿はもちろんだが、近い将来はプロ化を謳うSVリーグの中で、選手個人としてどう振る舞うべきか。何が求められているのか。視野も広く、発する言葉の中には、いつも芯がある。SVリーグになって以後、各クラブや選手に求められることが増える中でも、平山は自分に何ができるか。SNSの発信も積極的で、常にその時々、自身の考えに基づいて行動する。プレーも発言も実にクレバーだ。

「プロリーグへ向かって行こうという中で、女子バレーってものすごく閉鎖的な部分もあると思います。たとえば、SNSで積極的に発信しようという割に『負けた後はダメ』とか、理由のない何で? が多すぎる。ちっちゃい殻の中にみんながいる、そういう環境が窮屈で、私が物理的にやったことは髪の毛を染めることだったんです」

 今でこそ、思い思いの髪色やネイルを施す選手も増えたが、企業色が強かった頃は、髪は黒く、ネイルも禁止、というチームも少なくなかった。久光は特に禁止ではなかったが、鮮やかなインナーカラーはもしかしたら叱られるかもしれない。「怒られたらやめようと思っていた」と笑うが、髪を染めたのもただおしゃれや好みだけでなく、プロ選手として“魅せる”意識の表れでもあった。

「見に来てくれた人たちが、この髪色で私のことを見つけてくれるならそれでいい。きっかけなんて、何でもいいと思ったんです。バレーボールがうまい、かわいい、カッコいい、どんなことでもその選手を知ってくれて、また見たいと思ってくれたら大成功だし、自分たちはオープンに出て、注目してもらえるようになれば、よりパフォーマンスも上げていかないといけない。自分の行動に責任を取るじゃないですけど、髪を染めていてもチャラいわけじゃない。バレーボールはこれだけ本気だよ、という姿を見せられるように、1つのエンタメコンテンツとして成り立たせるために努力している最中なんです」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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