今年のF1はワクワクできない? 新パワーユニットは何が問題なのか
フェルスタッペン「ストレートの途中でアクセルを緩めるなんて」
車体もパワーユニットも大きく変わった今季のF1は、レース中の抜きつ抜かれつが至る所で見られる。それを素直に喜ぶファンもいれば、「あまりに人工的」と斬って捨てる意見もある。
一方、実際にマシンを運転するドライバーからは、否定的な意見が少なくない。典型的なのが、レッドブルのマックス・フェルスタッペンである。「ストレートの途中でアクセルを緩めるなんて、レーシングドライバーとして本能に反する」。最速を競うはずのカテゴリーで、「アクセル全開にできない」という違和感。それは今季マシンの本質を、端的に表すコメントと言えるだろう。
フェラーリのルイス・ハミルトンも、こう語っている。「今は速く走るというより、システムを管理している感覚だ」。ハミルトンの同僚シャルル・ルクレールは今季すでに2回表彰台に上がっているが、「バトルしたいのに、エネルギーの制約でそれができない」と不満を漏らす。彼らの指摘は、いずれも同じ問題、すなわち「ドライバーが自由に速さを引き出せない」という現実である。
一体彼らに、何が起きているのだろう。
サインツ「頭の中は、ずっとバッテリー残量だ」
ただし電気を貯めるバッテリーの容量が十分に大きくないため、大部分のサーキットではストレートの途中でさえアクセルを緩める必要がある。その結果、電気エネルギーのマネージメント(いかに効率よく貯め、放出するか)が、ラップタイムを左右する最重要要素となっている。
そのためドライバーは、単純にアクセルを踏み続けることができなくなった。すぐにバッテリーが空になって、一気にペースが落ちてしまうからだ。それを防ぐには、去年までなら全開アタックできたストレートでも、減速して回生エネルギーを貯めるしかない。ウィリアムズのカルロス・サインツは、「レース中ずっと頭の中で、バッテリー残量を計算している」と語っている。これはもはや純粋なドライビングというより、省エネ競争に近い。
もちろん今年のF1も、十分に速い。しかしその速さを意のままに引き出せないことに、ドライバーは大きな違和感と不満を抱いている。一方で技術陣は、「F1は今や、エネルギーの最適化競争になった」(メルセデスの技術責任者ジェームズ・アリソン)と、技術的挑戦に大きなやりがいを感じている。そこにはドライバーが感じる「窮屈さ」との間に、明確な温度差が存在している。