井上尚弥の“黒星”を、米国人識者が初めて予想 名勝負なら再戦の可能性もある「世紀の一戦」

杉浦大介

世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(左)と前WBC・IBF世界バンタム級統一王者・中谷潤人(右)がついに拳を交える。この一戦は、「THE DAY」と銘打たれた 【写真は共同】

 5月2日、東京ドームで行われる世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)とWBA、WBC、WBO同級1位の中谷潤人(M.T)の一戦は、“世界的なビッグファイト”と呼んでも大げさではない稀有な試合だ。日本人同士、さらにはスーパーバンタム級という軽量級の戦いにもかかわらず、この至高のマッチアップに世界が注目し、熱狂している。

 対戦前に更新されたボクシング専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)・ランキング(ヘビー級からミニマム級の全階級を通して最強を決めるランキング)では、井上が2位を維持し、中谷が7位から6位に順位を1つ上げた。PFPトップ10同士の日本人対決はもちろん初のことであり、日本が誇る最高傑作のボクサーたちが相まみえるというまさに歴史的な瞬間なのだ。

 今回はこの世紀の一戦を待ち望む米国在住の3人の識者に、試合展開や結果予想をしてもらった。ボクシングの本場、米国のジャーナリストたちをも歓喜させ、世界のボクシングシーンの伝説となることが期待される「THE DAY」の結末やいかに。

「2人の偉大なチャンピオンによる頂上決戦」

中谷戦に向けて順調な仕上がりを見せる井上。完全無欠のモンスターにとって、世紀の一戦は最大の試練となるのか 【写真は共同】

「とにかくこの試合は最高だよ。誰に聞いてもそう答えるだろうし、ボクシングを知っている人間で今戦を否定する者はいないはずだ」

 リングマガジンのシニアライター、マヌーク・アコピャン記者がそう絶賛するほどの一戦がまもなく日本で行われる。スポーツファンにはもう説明不要だろう。もちろん、5月2日に東京ドームで開催される井上と中谷による日本人対決のことだ。

 アコピャン記者の言葉通り、今戦を絶賛しない米ボクシング関係者は皆無に等しい。人気ポッドキャスト「Inside Boxing Live」のホストを務めるダン・カノービオ氏が「ボクシングファンなら絶対に見逃せない最高のカードだ」と述べれば、ESPNなどでインタビュアー、ホスト、実況を務めるカーラン・バティア氏も「日本だけでなく、世界的に見ても真のトップレベル同士の一戦。世代を代表するマッチアップだ」とまで述べている。

 ともに32戦全勝と無敗を続けてきた複数階級王者同士の直接対決。最新のPFPランキングでも井上が2位、中谷は6位にランクされているのだから、試合の格としては文句のつけようがない。世界スーパーバンタム級の4団体統一王者である“モンスター”に“ビッグバン”と称されるようになった中谷が挑戦する形だが、事実上は“2人の偉大なチャンピオンによる頂上決戦”である。軽量級のみならず、間違いなく世界のボクシングの歴史に刻まれる戦いだといえよう。

 これほどまでに前評判が高まっている理由は、2大王者の激突という格式が評価されているというだけでなく、内容的にもハイレベルの戦いが約束されているからだ。アコピャン記者に「試合展開はどんなものになると思うか」と問うと、その答えは明快だった。

前哨戦となったリヤドでのエルナンデス戦で苦戦を強いられた中谷(右)。しかし、その経験が井上戦に活きると識者は予想している 【Photo by Richard Pelham/Getty Images】

「最初の2ラウンドくらいは戦術的な展開になるだろうが、どこかで必ず激しい打撃戦への転換点が来る。両者とも誇り高い戦士だからだ。日本人ボクサーが素晴らしいのは、最後まで戦い抜くところ。不利な展開でも、ただ12ラウンドを生き残ることを目標にするような戦いはしない。両者とも爆発力のあるスタイルで、しかもキャリアでもっとも強い相手と戦う。中谷は前戦のセバスチャン・エルナンデス(メキシコ)戦で“少し脆さを見せた”と言う人もいるが、私は井上のような相手に挑むために必要な経験だったと見ている。すでに25戦以上の世界戦を経験してきた井上にとっても、中谷戦は最大の試練となるのだろう」

 アコピャン記者が触れているように、中谷は2025年12月、サウジアラビア・リヤドで行われた前哨戦のエルナンデス戦で大苦戦を味わった。後半ラウンドは押しまくられ、辛くも判定勝利。おかげで今回の試合も“井上優位”の声が高まった感があり、ラスベガスの予想オッズでも大差がついている。

 ただ、中谷にとってエルナンデス戦はスーパーバンタム級での初戦だったこと、井上とエルナンデスでは大きくタイプが違うことなどを考慮すれば、あの試合の内容が井上戦を占う上で参考になるかどうかは微妙だろう。エリートボクサーは試練後に成長するもの。アコピャン記者同様、「苦戦を経験したことで中谷はさらに強くなる」と見ている関係者が少なくないのが現実でもある。
 
 このように不確定要素も存在する日本人スーパーファイトは、いったいどんな戦いになり、そしてどちらが勝ち残るのか。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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