現地発! プレミア日本人の週刊リポート(毎週水曜更新)

“伝説のボレー”を想起させた三笘のゴール 首位攻防戦で勝敗を分けたのは「勝利への欲求」

森昌利

前半20分に投入された三笘はそのアディショナルタイムに同点弾。約3カ月ぶりとなる今季3ゴール目を挙げた 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

 4月18日(現地時間、以下同)のトットナム戦で、三笘薫が目を見張るようなゴールを決めた。クロスに完璧に合わせたダイレクトボレーは、ファビアン・ヒュルツェラー監督がフットボール史に残る伝説のゴールを引き合いに出したほど素晴らしい一撃だった。2-2の引き分けに終わったこの試合の翌日には、首位アーセナルと2位マンチェスター・シティの直接対決が行われた。結果はホームのマンチェスター・Cが2-1で勝利。これでリーグの覇権の行方は全く分からなくなった。

バロンドール受賞の決め手となった“奇跡的なボレーシュート”

EURO1988決勝のソ連戦。オランダのファン・バステンが決めた右足ボレーは“角度ゼロ”とも言われる伝説のゴールだ 【Photo by Bongarts/Getty Images】

 三笘薫がプレミアリーグの舞台で、またもや世界のフットボール・ファンの記憶に残る鮮やかなゴールを決めた。

 ブライトンのファビアン・ヒュルツェラー監督は、試合後の会見である名前を出した。

「私は若いが、あのマルコ・ファン・バステンのゴールがどれだけ素晴らしいものか分かる。フットボールをやった経験がある者なら、あのフィニッシュがどれだけ難しいものか理解できるはずだ」

 あのマルコ・ファン・バステンのゴール――。それは1988年6月25日に行われたEURO(欧州選手権)決勝の後半9分、当時23歳のオランダ代表FWが決めた優勝を手繰り寄せるゴールのことだ。

 左サイドから放たれたクロスに、右サイドの全く角度のない位置でファン・バステンがダイレクトで合わせ、鋭く右足を振った。普通なら絶対にゴールにならない状況だった。ところが、このときファン・バステンが放ったボレーはもうそこしかないという球道を生み出し、ソ連GKの頭を越えてファーサイドのサイドネットに突き刺さった。

 このゴールは世界のフットボール史に“奇跡的なボレーシュート”として刻まれている。この年ファン・バステンは初めてバロンドールを受賞したが、それも伝説となったこのゴールを決めたおかげだ。

利き足でない左足で決めたところに価値が

右サイドからのクロスを左足ボレーでジャストミート。掛け値なしに素晴らしいゴールだった 【Photo by Alex Pantling/Getty Images】

 無論、EURO決勝という舞台、そして角度もより厳しかったファン・バステンのボレーと、三笘のボレーの価値を単純に比較することには無理がある。しかし1つ、三笘のゴールがファン・バステンのボレーより優れているところがあるとしたら、そのシュートを左足で放ったことだ。利き足ではない左足で、ほんの少しでもタイミングが狂えばとこに飛んでいくか分からない、難易度が高いボレーを見事に決めたのだ。

 あとで何度もスロー映像を見返したが、シュートの瞬間、左足のインサイドをボールの芯に当てている三笘の姿勢が本当に素晴らしかった。全くぶれていなかった。左、右とステップを踏んで、「1、2の3」という感じで左足をジャストミートさせたが、余計な力は入っておらず、そのタイミングが完璧だったため、まさに矢のようなシュートが飛んだ。

 トットナムGKアントニーン・キンスキーの頭上を突き抜けた。三笘の蹴り出しが見えた23歳チェコ人GKは素晴らしい反射神経で右手を伸ばしたが、あまりにすさまじい球速だったのでボールに全く触れられなかった。

 残念だったのは、このスーパーゴールについて三笘の話が聞けなかったことだ。

 前半アディショナルタイム3分の同点弾は、ディエゴ・ゴメスが負傷退場し、三笘が予定外だったに違いない前半20分という早い時間帯に出場したことで生まれた。ただ、三笘は後半30分に右足に違和感を覚えて交代してしまい、試合後の取材エリアに彼が姿を現すことはなかった。

 もっとも、試合終了後にチームメイトに混じって、アウェー席を埋めたブライトン・サポーターに拍手を送り、かつて師事した敵将のロベルト・デ・ゼルビとガッチリと抱擁を交わした際には、三笘の歩様に異常はなかったと思う(編集部注:21日に行われたチェルシー戦に三笘は先発出場し、後半37分までプレーした)。

 ちなみにデ・ゼルビ監督は試合後の会見で、以前と同じようにドスのきいた低い声でブロークンな英語を話した。そして三笘のゴールに関しては「incrdible(信じられない)」と、ため息をつくようにその感想を語った。

1/2ページ

著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2025-26で25シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル30年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント